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54話 初めてのお宅訪問

二人の巣に入ってまずなにに驚いたかってその内装だ。どうみても人間が使う家具があちこちに置いてあった。二人暮らしだからなのか扉のような仕切りはなく、だだっぴろい空間に忽然とベットやら、タンスやらがおいてあった。部屋を仕切って個別の空間を作る人間からすると不思議な空間ではあったが、ひとまずここで過ごせといわれても困らない程度の家具が置いてあった。炊事場とか風呂、トイレはなく上下水道が通っていないことは一見して分かったが、それ以外は完璧に揃っていた。


「な、なんでこんなに人間のものが?」


そう言って振り返った先ではとんでもない美人と、ごっつごつの兄ちゃんがジークを抱きかかえていた。


「うーん、やはりこの姿の方が抱きしめられて良いわね。よしよーしママですよー」


「えーと、それは人化とかそういうものですか?」


「? そうよ?」


「ナルホドデス」


どうやらこの世界のドラゴンは普通に人間の姿になれるようだ。どういう原理でなってるのかは分からないが、ある意味アイラの変身と同じものだろうか?一応眼で見てみたのだが、それを想起させるようなスキルは持っていなかった。ドラゴンが元々所持している能力ということだろうか。


アイラは「なっ・・・」と言ったまま固まってしまった。ドラゴンと出会ってからアイラの常識がころころひっくり返っているようで面白いな。アイラにとっては心臓に悪い事の連続かもしれないが。


逆にオリヴィアは興味津々だ。魔力で変身してるのか、とか、服はどうなってるのか、とか顔は自分で決めているのか、とか変身?の詳細を立て続けに質問していた。

それまでどこか一歩ひいており、ほとんど会話も聞くだけだったのだがすごい豹変振りだった。たぶん目にハートとか炎とかが浮かんでいることだろう。


イレーネさんは意外?と丁寧に答えてくれて、質問攻めにも関わらずむしろ喜んでいるようだった。


「いやぁ我といる時はほとんど口を出してこなかった少女だと思ったのだが、この姿を見てより、とんでもない変わりようであるな。あの子は魔人族の子であろう?」


「うん。俺も驚いているよ。普段はどっちかといえば物静かな子なのだけどね。アイラとオリヴィアの様子を見るに、ドラゴンが姿を変えられるというのは知られていない事実のようだけど、俺たちの前で見せてしまってよかったのか?」


「まあ、別に極秘事項と言うわけではないからな。ただあまり言いふらされると我らの遊びがしにくくなるというだけだな」


「ということはその姿で人間の町へ?」


「お忍びだがな。ドラゴンの姿というのは強いのはいいのだが、とにかくやることがなくてなぁ。獲物をとって食うことぐらいで後は暇なのだ。だからこうして人間の文化の良いところをこっそりまねしている、という訳だな。」


「はーなるほどねぇ。この姿を変えるのは魔法なのか?」


「いや、よくは知らんがある程度の年齢になればドラゴンは皆出来るようになる。と言っても練習は必要だがな」


「こうなってくると気になるんだけど、竜人族ってドラゴンと人間の混血か?」


「そうだぞ?我らの中で同族ではなくて人間と結ばれることを選ぶものも少しは居ってなぁ。そやつらの子孫が竜人族だ。まあ今となってはかなり前の話だがな」


この言い方だと今は人間と結ばれるドラゴンはいなさそうだな。それもこれも人間のせいなんだろうな。


「その竜人族の始祖となったドラゴン達はどうなったんだ?」


「ドラゴンというのは寿命が人間族よりはるかに長い。故に子どもができにくいのだ。我ら夫婦も子どもができるまでにかなりの年を重ねておる。だがそのペースで人間と子を作ろうとすれば当然人間族は死んでしまうだろう?」


「そうだな。人間なんてドラゴンからすればすぐに死んでしまうと言っても過言じゃないだろう」


「そこで己が寿命を削って人間と子どもを作れる魔法を生み出した馬鹿がいてな・・・。たくさんの子を成し、妻と一緒に死んだよ」


「そうか。まあ幸せに過ごせたのならいいのかな?」


「そうだな。奴らは普通に幸せであったろう。人間と同じ寿命で死ぬことも織り込み済みであったし、愛したものと一緒に死ねたわけだしな。だがその子孫が我らドラゴンを滅ぼさんとする武器に使われようとは、誰も想像せなんだわ」


「その武器の原理は分かってるのか?」


「いや、まったく分かっておらんな。とりあえずその武器には我らの防御がすべて通じなくなり、その他の能力もうまく働かなくなるというだけだ。む、そういえばお主が持っておる武器もそうなのであろう!?」


いきなり思い出して戦闘態勢をとらないでもらいたい。向こうのほうでイレーネさんまで竜殺し!?とか言って構えてるじゃないか。


「待て待て、俺の武器は竜や竜人を素材に使った武器じゃないぞ!」


「ならばどうやって我が鱗を貫いた?竜殺し以外の武器では我の鱗に傷なぞつかんぞ?」


「この武器、オリハルコンだから」


「ぬ?そんな馬鹿な。昔ならともかく現存するオリハルコンなぞとんと聞かんぞ?」


「人間がダンジョンって呼んでる魔族の施設からゲットした。それを元に自分で打った剣だよ」


襲う意思はないことを示すため鞘付きのまま剣を渡してやる。


「ほほぉそんな施設が。今時の魔族もやるものだの。我はそこまで剣に詳しくはないが、そばにあっても力が落ちる感じはないというのにそれでもなお我を殺すだけの力を持っておるのか」


そういいながら剣を抜いて刀身を確かめているゴルラド。すっとイレーネに渡してイレーネにも確かめさせている。


「竜殺しの武器だとそばにあるだけでもだめなのか?」


「そうだな、この距離にあれば我らの力は確実に落ちるだろう。長老が人間に使われないようにと集めておるが、脱力感がすさまじかったぞ」


そんな危ないもの壊してしまえばいいと思うんだが、わざわざ集めてるのか?


「確かにこれは違うようですね。驚かさないでください、あなた!」


そう言ったイレーネさんの突っ込み?でゴルラドは壁まで吹っ飛んでいった。どんがらがっしゃんと音を立てて家具をなぎ倒したが、イレーネさんは完全スルーだ。


「お返しします。お願いですから私たちには向けないでくださいね」


イレーネさんも明らかにほっとした様子で力を抜いてくれた。危ない危ない。狭い部屋の中だからこちらの方が有利だろうけど気軽に脱出できないし、いまさら殺し合いなんて勘弁だ。


それから後は気軽に雑談などして過ごした。人間の文化を堪能しているというのは本当のようでおいしい紅茶?とお菓子が出てきた。お湯は魔法で、茶葉とお菓子は買ってきているらしい。お金は?と聞くとお城からこっそり盗んで来てるらしい。今まで一度も見つかったことがないのが自慢で、代金代わりに毎回強い魔物の死体を置いてくるとか。警備担当者が気の毒でならないが、むやみに処罰されていないことを祈っておこう。

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