4話 水魔法
一部グロい表現があります。お食事中の方はご注意を
吐いた事で少し楽になった。次のことを考えねばならない。
水も食料もないのだ。スライムはさすがに食えないだろうし・・・。
丸一日ほど水分を取っていないので、とりあえずは水だろう。
近いうちに脱水症状を起こしてもおかしくはない。
ここを離れて水を探しに行くのはいいが、戻ってこれるかどうかがわからない。
周りの木より大きな木ではあるが遠めで見つける自信はない・・・。
しばらく悩んでみたが解決策が思いつかなかい。
この森の中で迷子になり、水も見つけられなかったら詰んでしまう。
「よし、魔法で何とかしよう!」
水がないなら『水魔法』で出せばいいのだ。
幸い適正はCだし、神様も練習すれば何とかなると言っていた。成せば成るのだ。
「しかしあれだな、詠唱がわからんな。」
神様の所で見たスキルに無詠唱があったから、無詠唱でもなんとかなるはずだけど・・・。
魔法の初心者は詠唱に頼るものだと相場が決まっている。
「うーん・・・清らかな水よ出でよ!」
シーン
なにこれ恥ずかしい。顔が真っ赤になるのがわかる。ええい自棄だ!
「恵みの水よあれ! 水鉄砲! ウォーターボール! 水球!」
思いつく魔法っぽいものを上げてみるがだめだった。
なにを唱えても魔法が発動する感じがしない。そしてとんでもなく恥ずかしい!
そもそも魔力が抜ける感じもしなかった。
「そうだ、魔力だ!MPだ!」
自分を鑑定してみる。MPは減っていなかった。orz
魔力を感じる?ところから始めないといけないらしい。
「そもそも魔力って何だし・・・。血液か・・・?電気信号か・・・?」
とりあえず血液とともに流れているイメージをしてみる。
5分ほど瞑想のような感じでイメージをしていると感じるものがあった。来た!
自分を鑑定してみると『魔力感知』というスキルが増えていた。
次はこれを水に変換だ!
両手を皿にし、魔力を手に集める。それを水にするイメージ!
ぶわっと手から水が溢れ出した。
「やった、でた!って溢れる!」
多少こぼしてしまったが、水を飲むことができた。
寝床が濡れたことは大問題だがとりあえずいいだろう。
初めて魔法を使った嬉しさでいっぱいだった。
そしてこれで水魔法が使えるようになったはずだと鑑定してみて驚いた。
『水魔法 Lv1』『無詠唱』『魔力操作 Lv1』
増えすぎである。そういえば詠唱はしなかったし、手に魔力を集めた。
それにチートをもらうときにこういう展開を期待して
『スキル習得率大UP』を貰ったのだが、それにしても早すぎだ。
「ありがとう神様!」
我ながら現金だと思うがまあいいだろう。礼を言われて怒る事もないはずだ。
そして水を飲んだことで忘れていた空腹感が襲ってくる。
獲物を狩るか、木の実などを見つけるしかない。
いきなり獲物を解体するのは難易度が高いので、できれば木の実を見つけたいものだ。
食えるもの、食えるものと念じながら木の中から見える範囲をじーっと見つめてみる。
木の実どころかスライムも映らなかった。
諦めて木からでることにしよう。
ひとまず落ちている木の枝を拾い、目印代わりに線を引いて歩くことにした。
これで迷子にはならないはずだ。
しばらくずりずり木の枝をひきずりながら歩き、スライムに出会う→倒すを繰り返していく。レベルが上がった俺には余裕があるのだ。スライムなぞもう敵ではない。
スライムの見た目も良かった。アメーバタイプなので殺しているという感覚は薄く、再び吐きそうになることもなかった。雫方だったらやばかったかもね!
しかしこの森はスライムの森なのだろうか。スライムしか出てこない。
一応スライムの体の中に溶けかけたねずみの死体があったので生物はいるはずである。
もちろん見なかったことにして放置したが。
昨日の虎ちゃんは勘弁だが、鳥ぐらい出てもいいのよ?
スライムを10匹ほど倒しレベルが5を超えたあたりで、がさがさっと少し先のやぶから音がする。多少びびりながらも、すばやくやぶのあたりを鑑定すると
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ツノウサギ Fランク
レベル:3
スキル
突進
弱点
特になし
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と出てきた。
食料を見つけた嬉しさ半分、ウサギを殺さなくてはならないという罪悪感半分。
俺のエゴとはいえ、ハードルが高いものである。
だがこのハードルは越えねばならない、と決意を新たにする。杞憂だったが・・・。
だって牙長いし、角長いし俺見るなり殺す気で突っ込んできたもの・・・。
罪悪感が・・・とか言ってる場合じゃなかったよ。魔物怖い。
戦闘自体は一瞬だった。圧倒的なステータス差でジャンプし、上から剣を振り下ろして終わった。
ちょっとだけ俺カッコいいと思ったのは内緒だ。体が若返ったせいだろうか、中二病が再発している。
まあ誰も見ていないし今はいいだろうが、人前に出る時は気をつけよう。
ステータスの恩恵はすさまじいものだ。
元々運動音痴というほどではなかったが、あくまでもそこそこレベルだった。
ジャンプしただけで3mも飛べるわけはないし、ウサギの首を一刀両断できるのもおかしい。
そもそも刃の立て方?とかわからないし、いつのまにか鞘から剣を抜く動作も簡単にできるようになっている。
鑑定の結果当然のように『剣術』と『身体操作』がLv2にあがっていた。ステータス&スキル万歳。
転移する前の自分をほめてやりたい。あ、でも調子に乗って死ぬのはいやだから研鑽はしよう・・・。
というか体が思い通りに動くことがこんなに楽しいとは思わなかった。
これなら練習も苦ではない。怠けて痛い目を見るのは勘弁だからな。
うさぎの血抜きをしようと逆さにしたところで、『水魔法』で血抜きをすればいいのでは?と思い立つ。流れている血に魔力で干渉し、押し流す!
・・・
・・・
・・・
ぐろいことになった。
おえー
とりあえず無事に拠点の元に帰ってこれた。そして驚愕の事実。
拠点にしている木の上のほうには赤い小さな実がなっているではないか。
しかも鑑定の結果一応食べることができるらしい。ちくしょう・・・。