剣虎との戦闘
にゃはは
種名:剣虎
討伐推奨レベル:15〜
生息地域:草原、高原
形態:体長3メートル〜4メートルと一般的な虎に比べ2倍近くの大きさを誇る。側面の皮膚には刃のように鋭利な毛が生えているが、この種の最も特筆すべきは口にある湾曲した牙だろう。左右に生えたその牙は鋭利な刃そのものでありそのままで剣の素材としても使用が可能
(以上、魔物大全より抜粋)
檻のシャッターが機械音を立てながら開いていく。
半分ほど開いたところでガシャン!と大きな音を立てながら何かが檻の中から飛び出して来た。
いや、何かというか剣虎以外いないけど。
剣虎は檻を勢いよく出た後そのまま僕達とは反対の方向に走って行く、が5秒も走ったところでドン!と大きな音を立てて何もない空間でぶつかったように崩れ落ちた。
「逃がすわけないでしょう」
やっぱり今のは師匠が空間を閉ざしたらしい。
ヒルデも興味深そうにその指先を見ている。
どちらにしろ剣虎ごときの魔力では師匠の空間は破れないだろう。
「真尋、今の貴方なら間違いなく勝てる敵です。だからこそ言わせてもらいます。圧倒的に、これ以上ないくらいに粉砕してください。私に、世界に今の貴方の力を見せつけて下さい。貴方は、これからは名実ともに私の弟子なのですから」
ありゃりゃ、弟子を公開できるとかなり張り切っちゃってるよ師匠。
長年、というわけではないが少なくない時間は一緒に居たから師匠の微かな表情の変化も分かるようになった。
「了解」
その巨体を見た、最初は驚いた。
ヒルデが倒したオーガと同じほどに大きくはあるし、見た目から少し威圧も感じた。
でも、一目散に逃げていくあいつを見てそんな恐怖心は一瞬で消えた。
何より、師匠が期待してくれているんだ。
ここで応えなきゃ、男じゃないね。
剣虎は壁にぶつかった衝撃で気を失っていたようだが、目を開くと直ぐに立ち上がった。
自分が逃げられないのを悟ったんだろう、こちらの方を睨んで来る。
師匠は空中にいくつもの小さな球体を浮かべる。
これは立体的に、複数の面から観測するために開発された魔導カメラの一種だ。
おそらくこれで撮ったものを何処かに提出するんだろう。
剣虎が睨んだまま固まっているので、僕から前に出る。
身体にはすでに魔力を纏っている。
こいつもここにいる三人のなかで僕が一番与し易いと思ったのだろうか。
僕の後ろにいる二人の方を一瞥し、手を出さないのを見て改めて僕と向き合った。
剣虎、確かにその巨体は脅威だろう。
だが一般的にレベル15以上が討伐推奨レベルとして登録されている以上そこまで強い魔物ではない。
理由としては魔法を使わない、魔力がそこまで高くないなどといったものがある。
そして、纏う魔力の差が広ければ広いほど相手に与えられる攻撃の威力が変わってくることは僕が一番良く知っている。
でも今回は、僕が攻撃をする側だ。
戦いで、ゲームのように攻撃パターンが決まっているなどということはあり得ない。
相手の動き次第で攻撃方法は変えるし、対応しきれなかったらその時点で負けが決まるからだ。
「折角こんな機会を用意してもらったんだ。要望通り、今の力を見せつけさせてもらうよ、剣虎」
今回、僕は剣を持ってきていない。
いや、正確に言えば魔法鞄に入ってはいるのだが使うつもりは毛頭なかった。
これからのスタイルを考えれば尚更に。
前々からルドルに言われていた通り僕には剣の才能がない。
才能という言葉は、度々否定されることがあった。
才能に差はない、生まれた時は皆同じ、努力の差が才能に見えるだけ云々。
しかし、今の時代には魔力の適正、魔力量、そして特殊能力。
目に見える形で才能は姿を現した時、才能を否定する主張は息を潜めた。
今の僕にある才能が四つ。
一つに、魔力量。
二つに、『倍増』の特殊能力。
三つに、魔力操作。
そして四つ目に、ルドルも認めた体幹。
僕のもう一つの特殊能力、『鑑定』は汎用性は高いものの今回の戦闘に使うことは出来ないので省いた。
今回の戦闘に関してのみではないなら、僕にはルドルやサーシャ、フウにヒルデ、そして師匠という味方もいる。
そして今回使うのは『倍増』の特殊能力を除いた三つ。
自分の持っている力を再確認した僕は、剣虎に向かって歩きながら纏った魔力を更に拳と脚に集中させる。
身体に魔力が侵食している以上それらの動作は全く抵抗なく行えた。
彼我の距離は30メートル程度。
その距離まで近付いたところで僕は全力で駆け抜ける。
地を駆け、空を飛ぶようなスピードで距離を詰めた僕を、しかしその剣虎の目はしっかりと追っていた。
だが、それだけだ。
剣虎の咆哮など気にも掛けない。
刃のように鋭く、魔力も纏った毛並みも関係ない。
眼前に迫った剣虎の顔を、魔力で強化した腕でかち割るように、放つ。
一瞬剣虎の魔力が拮抗するように僕の拳を止めたように思えたがその程度。
ドン、と響くような低い衝撃音が広場を駆け抜け、剣虎は地面から脚を手放した。
キャン、と虎らしからぬ声を上げながら数メートル上空までその身を放り出される。
当然、そんな隙を見逃す訳もなく。
空中まで飛び上がり、再び剣虎と目が合う。
その目の奥にあったのは先程までの侮りから裏返しの、驚愕、そして怯え。
「じゃあね」
そんなもの関係ないとばかりに僕は脚を振り下ろした。
蹴り落とすと同時に地面に身体を打ちつけた剣虎から大きな衝撃が走る。
剣虎の命の灯火は、ここで完全に消え去った。
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