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卒業試験、準備

にゃ



「成る程、貴方がヒルデ嬢ですか」

「おい、マヒロ。何だこいつは」


ヒルデは心底嫌な顔をして僕の方を見る。

まあ、周りをグルグルと回りながら顎に手を当てて観察されたら嫌気もさすだろう。

というかそれ普通に変人だから自重して欲しいんだが。


「誠に遺憾ですが僕の師匠です」

「ほう?こやつが言っていたやつか。マヒロと会ってから強者に会うことも増えたものだ」


まあ、ここに来るまでもジャックさんに会ってたしね。

それはそうと、そろそろ師匠をヒルデから剥がさないといけないな。

ようやく落ち着いた師匠がヒルデの向かいに立つ。


「これは初対面で失礼しました。どうも好奇心には抗えないものがありまして」

「ほう?その好奇心ついでに殺してやっても良いのだが」

「それはご勘弁を」


うん、出会ってからもう馴染んだようで良かった。


「では改めまして、私は鈴原彩香と申します。真尋の師匠をさせて貰っています」

「うむ、マヒロからどんな人物かはだいたい聞いている。とはいえ先ほどの行為は些か驚いたが」

「こちらも貴方のことは聞かせてもらいましたよ。何やら地球ではない世界の、(ドラゴン)種だとか」


僕はここに来るまでに師匠には異世界のことを話していた。

ぶっちゃけ、一人で抱えるのは無理があったからだ。

師匠はなぜか知らないけど僕のことを溺愛してくれているし、実際色々と便宜も図ってくれている。

僕の知り合いで頼れる人と考えたらまず第一に出てくるのが師匠だった。


まあ、僕が次に師匠に会った時は異世界に連れて行ってあげるという餌をふんだんに吊り下げたのだが。


「成る程、序列四桁でも貴方を相手にするのは骨が折れそうですね。私なら10人でかかっても厳しそうです」

「ほう、10人で足りると?」


ヒルデが笑顔になり指輪を外そうとする。


「私はどちらかと言えば守るほうが得意ですので……とはいえ20人でも難しいかもしれませんね。これは困った」

「師匠もヒルデも辞めて下さいね。それで、卒業試験は何をするんですか?」


これ以上は不毛になりそうな気がしたので止めにかかる。

というかこんなところで戦ったらまず間違いなく被害は尋常じゃないことになるだろうし、ヒルデの存在も露呈してしまうだろう。


「ああ、すみません。真尋の卒業試験ですか……本音を言わせてもらうと、する必要がないんですよね」

「え?」


する必要がないって何故?


「だって我が校、というかどこもですけど戦闘科の卒業試験はレベル15相当の魔物、剣虎(サーベルタイガー)の討伐ですよ。そんなもの今の君が負けるわけないでしょう」

「あ、卒業試験ってそんなのだったんですね」

「三年生になって初めて情報を公開していますから」


確かにそれなら相手にならないだろう。

いや、本でしか見たことのない魔物だし、自分の魔力も技量もまだまだ下っ端だということも理解しているがそれでも魔力操作だけでレベル15相当なら倒せる自信はあった。


「だけど卒業試験は映像に納める必要があるんですよね。まあ、今はちょうどストックがあるから諦めてちゃちゃっとやって下さい」


そう言われて僕達は校庭にやってきた。

今日は休校日だから普段は部活動で活発な校庭も静かなものだ。


「では、出しますよ」


そう言って師匠は空中に手を差し出す。

空を切るはずだったその手先は空中に突如現れた亀裂に入っていった。

そして次に手を引き抜いたと同時に、ドスンと砂煙をたたせながら大きな黒光りの檻が出てくる。


これが師匠の十八番、時空魔法だ。

その魔力によって新たな空間を作り出すことや、空間そのものを消失させるなど空間に関与する全てを支配できる可能性を秘めている。

そこにプラスして、時まで操れるからの時空魔法。

ただし魔力の制約も強いらしく、時を止めるなどといった芸当は師匠のレベルと魔力を持ってしても厳しいとのことだ。

可能性を秘めているというのは時空魔法自体、適正者がほとんどおらず研究が全然進んでいないらしい。


今回檻を出したのは師匠の空間の一つだろう。

以前に一度入ったことがあるが、まず生き物が入れるということ自体魔法鞄とは違うものなのだ。


「なにをぼうっとしてるのです?ほら、檻から出ますよ」


師匠にそう声をかけられて我に帰る。

確かに今は卒業試験に集中しよう。





次の更新、日曜日にゃ

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