門での話し合い
眠い
「もっと言わせてもらうと、俺はこの職について二十年以上経つ。それだけの間色んな魔物を相手に戦い、生き残って来た。相手を見る目ってやつにも自信がある。気を悪くしてしまうかもしれんが、そこの婦人はお前らの中でも格が違うって俺のこれまでの経験が呟いてくるんだよ。正直、俺がフリーなら間違いなく跡目もふらず逃げ出すレベルだ」
そう言いきって後ろに立っているヒルデの事を睨みつけた。
まあ、確かに彼女だけは格が違うよね……
ヒルデの方をチラリと見た後、ジャックさんの方に視線を戻す。
未だに穂の先をこちらに向けているが、よく見れば穂先が少し震えているのがわかった。
「成る程、では逃げないのですか?」
「当たり前だろうが。俺は治安警備隊隊長として、南門の門番としてエピドールへの危険因子を見逃すなんて出来ねえんだよ!」
彼は、まるで自分を気丈に奮い立たせるかのように声を張り上げる。
少し、この人のことが分かった気がする
その様子を見て、少し笑った。
「何がおかしい?」
「失礼しました。私も商人ですので人を見る目には自信がありまして、今までの問答から貴方のことを大体理解しました」
「……それでもまだ商人と言い張るのか。そう言えば聞いてなかったがこの都市には何をしに来たんだ?」
「ええ、先ほども言った通り遠方から来たので、こちらの街には精通していないのです。そこの奴隷さん達から一通りの情報を貰ったのでここを通った後は冒険者ギルドというものに行き、身分証明書を発行してもらおうかと思っています。暫くはこの街を拠点とするつもりですね」
「商人なのに冒険者に登録するのか」
「時には武力も商品とする場合がありますし、これでも多少の腕は立ちますので」
そこで話は途切れ、互いの視線が交じり合う
少しして先に折れたのはジャックさんの方だった。
「分かった。これ以上口で言っても勝てる気がしねえよ。今日の用事は冒険者に登録することだけか?」
「それとこの奴隷達の解放もしようと思っています」
「そう言えばそのガキどもは拾ったんだってな。奴隷解放は金がかかるが大丈夫なのか?」
「そこらへんは問題ありません」
ルドル達のことを奴隷というのも心苦しいが、もう少しの辛抱だ。
「そうか。悪いが、あんたらをこのまま素通りさせるって訳には行かない。俺の職業上、南門では入場制限を課すことが出来る。でも、俺がそこの婦人を止める事は出来そうにないからこその提案だ」
「聞きましょう」
「この都市に入るために条件を付けさせてもらう。一つ、お前達のことは領主様に報告させてもらう。二つ、お前達の今日の予定に俺が先導役をさせてもらう。三つ、この都市に滞在する間は指定された宿に宿泊してもらう。以上だ」
「成る程、僕達はそれでも構いませんよ。ただ、手持ちの都合上あまり高価な宿は厳しいのですが?」
ジッと僕はジャックさんの目を見つめる。
「……分かった、宿はうちが経費で払う。飯代なんかは出せんがそこは迷惑料だと思ってくれ」
「ありがとうございます。僕としても助かります」
「よし、交渉成立だな。すまんな、態々こんな対応したいわけじゃないんだがお前らが身分証明できないってのもまた問題なんだ。少し待っていてくれ」
一応の罪悪感はあったのだろう、そう言ってジャックさんは門の中に入っていった。
「……あやつ、強いのぅ」
「ヒルデ、気になったのか?」
今回、門番との対応は僕に任せてくれとみんなには口を出さないで貰っていた。
こう言う場面での交渉はいずれやる必要も出てくるだろうから、その時の初めては無くしておきたかったからだ。
「我が氾濫の際に殺したオーガなぞ歯牙にもかけぬほどには強いじゃろうな。勿論、我ならば勝つのも容易じゃろうが人間の中で強者である事は間違いなかろう」
「確かに見た目は凄みあったけどさ……」
残念ながら僕にはそこまで相手を推し量ることは出来ない。
まあ、普段から人の機微には敏感だったから相手の性格などは大体把握できるようにはなったが。
「あの人はエピドールの英雄である『魔槍』のジャックさんで間違いないでしょうね」
サーシャも彼を肯定するようにそう言った。
「魔槍?英雄?」
「幾度となく魔物の氾濫を退け、一度も都市の中に魔物を入れたことがない。ワイバーンやグリフォンといった魔物にも勝利しているといった話です。『魔槍』というのはあの人の二つ名ですよ。各国にも彼の存在は知られていますし、強いのは間違いないと思います」
もしそれが本当なら、確かに英雄と呼ばれるのも当たり前だろう。
そんな彼だからヒルデの強さも理解できたようだし。
「それで、兄ちゃんはなんでわざわざあんな要求呑んだんだ?別に義務はないわけだろ?」
ルドルは今のやり取りで分からないことがあったのか不思議そうに聞いてきた。
僕はそれを受けてサーシャに問いかけた。
すると、少し悩んだ後に小さく頷く。
「サーシャはなぜか分かるかな?」
「あの人は秤にかけたんだと思います。私たちを脅威と認定した上で、このまま放逐するか監視するかを。あの時点で選択したのは監視という事でしたが、何も言わずに監視をするという事は相手に負い目を作る可能性がある。ならば私たちの都市に入るという目的に会えて条件をつける事で監視の名目を得たわけ、という事だと思います」
「うん、流石はサーシャだ。僕もそう思う」
サーシャの頭に手を当てて優しく撫でると、気持ちよさそうに頭を縮こませた。
数分が経つと、門が再び開いてジャックさんともう一人、同じ鎧をした兵士が出てきた。
その兵士は僕達が来るまでジャックが立っていた位置に移動し、そこから動かなくなったのでどうやらジャックの代わりに門番をするみたいだ。
彼はその様子をみてから僕達の方に近づいて来た。
「すまん、待たせたな。じゃあ俺について来てくれ」
読んで下さりありがとうございます
次の投稿は日曜日になります
追記)ジャックのレベルを下げました




