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南門に着いて

早まりました



「エピドールってどんな都市なの?」


そう言えば地理関係の勉強はしたが、内政面での知識をほとんど聞いていなかった僕は歩きながらサーシャに聞いてみる。


「どんな都市……ですか?以前言いましたが人口は10万ほどの、無力連合内では最大の自治都市ですね。首都エピドールにはその約6割程度が住んでおり、他には村が4つ存在した筈です。農耕はどこでも盛んに行われて居ますが、エピドールは無力連合の中で一番に魔物の氾濫と接敵する位置に存在しますので、他国から物資の支援などを得る代わりに防衛力を高めている城塞都市となっていますね。実際、魔の森に近い立地にある事で遠征などもしやすい為冒険者などの戦闘能力を持つ人物が多く、同様の理由から無力連合内一の軍事力を保持しています」

「成る程。ってあれ?ルドルは?」


近くを見渡して探していると、遠くの方で「おりゃあっ!」という掛け声とともに舞った土草の中からルドルが飛び出てきたのが見えた。


「……アレは?」

「多分歩いているのが暇になったんだと思います。街道近くの魔物の駆除は依頼を受けずとも皆やるものですし、小銭稼ぎにはなりますから」

「確かに、そろそろ歩き始めて一時間になるのか。気温も上がってきたし、歩くだけって言うのも手持ち無沙汰ではあるよね」


この世界にも四季はあるらしく、今は夏のためジリジリと肌を焼かんとする日光が僕達の神経を摩耗させていく。

魔力が身体を覆っているとは言え、なかなか防げるものでもないらしい。


「では我に乗ってまた移動するか?」

「それも悪くないけど、もし誰かに見られたら面倒だし今は我慢して歩くしかないかな」


そうしてなるべく早く着くように歩いていると、僕は急に魔法を使える事を思い出して軽く凹んだ。


「僕の馬鹿、あーくそっ、魔法使えるじゃん。なんでこんなしんどい目にあって移動してたんだ……」

「マヒロお兄さまどうかしましたか?」


急に立ち止まって頭を抱えた僕に心配そうに駆け寄ってくる。


「いや、僕の頭の悪さにちょっと凹んでさ……。ルドルを呼んでくれる?」


首を傾げながらルドルの方に声をかけて貰う。

ルドルは体の所々に泥をつけながら近づいて来た。


「兄ちゃんどうしたんだよ?」

「この暑さをどうにかしたいと思ってね。と、その前にルドルはその汚れをどうにかした方がいいね。じっとしてて」


まずルドルを対象に魔法陣を展開する。

これは学校で習ったもので特に手も加えていない。


清浄(クリーン)


魔力を込めると、魔法陣が動き出しルドルの上から下までスッと通っていった。

その際に薄く緑色の光が発生し、ルドルについていた汚れは全て消え失せる。

皆がそれに驚いているうちに、もう一つ僕達全体を包み込むように魔法陣を展開し、


冷却(クール)


と魔力を注ぎ込めば今度は魔法陣が青白く光って、僕達の身体に薄いベールを巻きつけるように収束していく。

それと同時に僕達を散々苦しめてきていた蒸し暑い空気が消え、冷えた空気が僕達を包み込んだ。


「え、え?」

「良かった。今回も無事魔法を使えたよ。よく考えたら今日まで魔力操作の訓練ばかりして肝心の魔法は全然使ってこなかったんだよね……すっかり忘れてたよ」

「今のはマヒロお兄さまの魔法なのですか?」


サーシャが驚いた様子で聞いてくる。


「そうだよ。ルドルに使ったのが清浄の魔法で、汚れを落とす効果がある。その次に使った魔法は外からの熱気を遮断して涼しくする効果がある冷却だよ」

「確かに、とても涼しくなったのう。これは良い」

「どっちも僕の世界では一般的に習える魔法なんだけど、その驚きようからしてこの世界にはこういった魔法はないの?」

「魔法を習う事ができる人は少ないですし、教えてもらえる魔法は攻撃魔法ばかりですのでこんな魔法は存在しないと思います。今度教えてくださいね?」

「それくらいなら全然いいよ。僕もこっちの世界の術式記号を知りたいからその時は協力して欲しいかな」


いっぺんに涼しくなった僕達は歩くペースを上げ、一時間程度で都市エピドールの南門に辿り着いた。


城塞都市と呼ばれるほど巨大な壁が存在し、それが街全体を覆うようにして横に広がっている。

合わせて深さ5メートル、幅10メートルはありそうな溝が掘られており、南門の前に行くためには巨大な吊り橋を渡る必要があった。


橋を渡り門に歩いて行くにつれて緊迫感が高まる中、左端に佇んでいた門番と思われる人が歩を進め、槍を僕達の方に突きつける。


「止まれ!俺はエピドール治安警備隊隊長のジャックだ。お前たちは何者だ?」


へえ、意外に大物が出て来たみたいだ


ジャックと名乗ったその男性は足のつま先から指の一本一本まで、全てを鈍い銀色の金属鎧で覆っており、唯一首から上は外気に触れるようにしてある。

シワが顔全体に寄りながらも力強さを感じさせる眼光を持つ、歴戦という言葉が似合いそうな男性に一歩足を引きながら丁寧に応える。


「初めまして。この暑さの中での業務ご苦労様です。私はマヒロ・ハヅキと申します。遠方から来ました。しがない商人をしております」

「後ろのやつらは?」

「大柄な女性はヒルデ。私の付き人をしてもらっています。そして小柄な2人ですが近くで拾った奴隷に御座います。元の主人が死に、新たに契約させて頂きました」


僕はここに来るまでに考えていた設定を淀みなく答える。


「ほう、商人か。そんな身軽な格好でか?」

「私が持っておりますのは魔法鞄です。このような身軽な者は盗賊などに狙われる危険も少ないので、愛用しております」

「そうか。高かっただろう?」

「それ以上の買い物をしたと思っておりますので」


魔法鞄はこの世界にもあるらしいが、地球ほどに普及しているものでは無いらしい。

その後の質問にもほぼノータイムで答えたが、寧ろ更に疑いの目を向けてきた。

そして頭を掻きむしる。


「……ああ、怠いな。やっぱり俺はこの手の腹の探り合いってのが苦手だからはっきり言わせてもらおう。俺はお前たちを怪しいと思っている」

「怪しい、と言いますと?」

「ここから更に南には魔素の森しかねえんだよ。お前らも見ただろ?この巨大な壁や堀は魔素の森で発生する氾濫に対抗するためのものだ。いわばこの門は対魔素の森専門で普段通る奴らも魔素の森に行く冒険者ばかりだ。そんな中でお前らみたいな自称商人が怪しくねえ分けないだろう」


そう言ってジャックが放つ重圧は更に増した。


区切り悪いな……


久しぶりの執筆で張り切ってしまったので明後日にも投稿します。


エピドール、ほか4都市を国→自治都市に変更しました。

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