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何かを拾った



「おりゃ!」


所々に光が差す森の中で、銀色の剣筋がフォレストウルフのうなじにしっかりと入る。


ギャンッ


首の後ろから切れ目が入ったフォレストウルフは最後の抵抗とばかりに足元に噛みつこうと口を大きく開き迫ってくる。

それと同時に後ろから、逃げ道を塞ぐように更に2匹のフォレストウルフが飛びかかってきた。


今纏っている僕の魔力じゃまだ、こいつらの攻撃を防ぎ切ることはできない。

かと言ってこのままじゃ噛みちぎられるのも明らか。


僕はすぐ、手負いの一匹を蹴り飛ばす。

普通なら相手の重さで飛んで行くことはないけど、魔力を纏った足でなら話は別だ。

蹴ったやつは3メートルほど吹っ飛び、木にあたって動かなくなった。


すぐに飛びかかってくる2匹のうち右手の1匹にちょうど右手に持っていた剣を投げつける。

投擲の技能なんて持ってないが、グルングルンと横に回転する剣はちょうど右の胴を削った。


あと1匹。

左手から飛びかかってきた奴はもう目の前に迫っている。

僕はすぐに腕を前に出し、最大限の魔力を集中させる。


普段、一定量で纏っている魔力の3倍をフォレストウルフが噛みつこうとしている左腕に集めた。

ガリン、と本来こうは鳴らないだろう音が森に響く。

フォレストウルフもやはり驚いているようで、ギリギリと歯ぎしりがする音が聞こえた。


歯を離さない間に、右手に魔力を同じだけ集中させる。

そして拳を一気に間近にある胴体に向かって振り抜いた。


バン!と大きな音がしてフォレストウルフが吹き飛んで行く。

それはさっきの木にぶつかったフォレストウルフにちょうど当たった。


「よしっ」


動かない3匹をみて、小さくガッツポーズをした。


「おー、かなり慣れてきたなぁ。今の三方向からの攻めにも魔力防御無しで対処できるのは、そのレベル帯じゃ殆どいないと思うぜ」

「そうかな?ありがとう」


木の上からスタッと飛び降りてきたルドルが今回の先頭について評価してくれる。

最近は対複数の戦闘も増えてきて、考えるより先に体が動くほどに慣れてきたと思う。


僕が初めてこの世界に来てから、そろそろ2週間が経過しようとしていた。


「ただアレだね、やっぱり兄ちゃんに剣の才能はあまり無いと思うな」


これも最近言われたこと。

僕的に剣はカッコいいと思っているけど、ルドルに言われる前から少し剣が苦手に思っていたんだよね。

何故、というわけでは無いしそれほどまだ剣を手に取ってから時間も経ってないってのがあったけど、それでも剣を好むことがなかった。


「でも兄ちゃんの体術はかなり良いものができてると思うよ。身体の芯がしっかり出来てるからどんな状態でもバランスを取るのが上手いし、一つ一つの動作に無駄が少ないんだよね」

「そうかな?」

「うん。見ていて思ったんだけど、兄ちゃんは拳闘士型だと思うな。拳闘士っていうのはリーチが短いっていうリスクはあるけどその分一つ一つの動作が速くて、相手に攻撃の隙さえ与えないってのが特徴なんだ。それに魔法もそろそろ使えるんじゃない?魔法があったら一気に戦闘の幅も広がるから、やっぱり使うとしても剣は補助装備程度に思っておいたほうがいいと思うよ。ナイフもそう言う意味ではありかもね」


ルドルの言う通りかもしれない。

今の僕の戦い方は、あくまで剣は手段の一つでどちらかと言ったら殴ったり蹴ったりしてることの方が割と攻撃が通りやすい気がする。


もちろん剣があったら相手に簡単に怪我を負わせられるけど、逆に剣がなくなった瞬間に弱くなるって言うのは一番いけないことだと思う。

だから、武器の過信は身を滅ぼすなんて言うんだろう。


「それにしても今日はフォレストウルフが沢山いたね」

「そうだね、今日だけで40匹は倒したかな。そろそろレベルアップするんじゃない?」


現在のレベルは4。

サーシャが言っていた仮説通り、僕のレベルは普通に必要な討伐量の半分で上がってきている。

ただそれでもレベルは上がりにくく、探索にかける時間が多く必要になって来ていた。


と言っても、地球なんかだったらレベルアップの機会はさらに減っているし、レベルアップできる環境が整っているこの世界に居られることが十分な幸運だと思う。

まだまだ魔力的には物足りないが、そろそろルドルが言っていたように魔法も使ってみたいし。


「ん?なにこれ」


すっかり遅くなり、森も少しずつ暗さを増して来ている頃。

急ぎ足で帰っている中、僕は木の幹に寄りかかるように落ちている30センチメートルほどの白い楕円形の物体を発見した。


「おーい、兄ちゃん何やってるんだ?さっさと帰ろうぜー」

「ルドルー、なんかあったよ」

「もう暗くてよく見えないから、それも持って帰ればいいじゃん。さっさと帰らないと暗くなって道がわからなくなるから早くいこう」

「わかった」


確かにこうして話している間にも、森の草木は、普段の緑色からは伺えない暗闇に変貌して行く。

僕は取り敢えずよくわからないソレを、魔法鞄(マジックバッグ)に詰め込んで、ルドルの後を急いで追っていった。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



魔素の森深層、月影の祠最深部


「ふむ……私の子は一体どこにいったのやら。あの子もまだ卵状態とはいえ私の子であることに変わりはない。ならば魔力もそれ相応のものである筈だから狙われるようなことはないだろうが……仕方あるまい。明日はまた少し遠出をしてみるとしよう」


ヴォォン、と大きな音が響き胴体に寄せるようにして翼をたたむ。

風が大気を揺らし、薄暗い水面に映る満月の月を歪ませた。



僕が一番怖いのは、ルートが一つに限定してしまうことです。

何か一つ、ルートを考えてしまったらそのルートに行くように自然と思考が寄ってしまうこと、無いですか?


次回の更新も明日の10時予定です。


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