僕らがいる森は、とてつもなく広いらしい
いつも読んでいただき、ありがとうございます。
「じゃあ午後はどうするかだけど……」
「もしさっきと同じでスライムを狩ってたらどれくらいでレベルアップするの?」
「今度は一気に増えて100匹ですから、おそらく真尋お兄さまの場合50匹かと」
「兄ちゃんが決めて良いぜ。今日はあそこのスライムが居るところでレベルアップに専念するか、それとも別の場所を探索していくか」
やっぱり探索もした方がいいと思う。
けど、もし僕が戦っても勝ち目のない魔物が出てきたら、逃げるしかないだろう。
いや、逃げることが出来るかすら分からない。
ならここはレベルアップして少しでも別の魔物と戦える可能性を作っておいた方がいいと思う。
「スライムでいいかな?」
「ま、妥当だね。兄ちゃんなら今日中にレベル3には成れるだろうから」
ルドルはそう頷いて、立ち上がった。
「ちょっと待って」
その前に一つ、試したいことがある。
僕はこれまで通りに魔力を操作して、身体に纏ってみる。
すると、いつもより纏うのが遅かった。
「ほんの僅かにだけど魔力の操作が遅くなってるんだ」
「ああ、それは魔力が増えたからだな。本来50%の増加率だから、次のレベルアップまでに徐々に慣れていけばちょうどいい感じなんだけど、急に倍になったから操作が慣れてないんだろうね。毎日訓練してるなら、すぐ解消されると思うよ」
「そう?なら良いんだけど」
「それに森にいる間は常に纏っていた方がいいから、今は魔力操作の速度より持続性を確かめた方がいいと思うな」
それに納得して、僕たちは午後の狩りに出かけ、見事夜までに僕はレベルが3に上がった。
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「さて、それでは今日は寝る前に軽くここら辺の地形を知っておきましょうか」
午後の探索から帰ってきた僕たちは食事と風呂を済ませてゆっくりと休んだ。
そして寝るまでの少しの時間を、この世界の知識を教えてもらうことに使うことにした。
「私たちが今いるこの森は、世界三大森林のひとつである魔素の森ですね。割と比較的浅いところにいるらしいのでここから数日進めば街道を拝めると思います」
サーシャはそう言って地図の大部分をグルッと囲んだ。
「これ全部森林なの?」
「はい。世界三大森林という名前の通り、超巨大な森です。この森の特性はそこらの木々が魔素を微量ですが含んでいることからきています。この森は、私たちがいる比較的街道から近いところの浅い層から、奥に行くほど魔素が高くなっていることで有名ですので、魔素の森深層付近は立ち入り制限区域に指定されてますね」
「つまり奥に行けば強い魔物がいるってこと?」
「はい。ここらにいるのはスライムやフォレストウルフ、ヘビースパイダーにゴブリンなど弱い魔物が多種類生息しています。なので、いずれ探索して行けば戦うこともあると思います」
フォレストウルフにヘビースパイダーね……
聞いたことがあるのはゴブリンだけだなぁ
「もし僕が今そいつらと戦ったら攻撃は通るかな?」
すでに知っている話なので、眠たそうに横でごろんと横になっているルドルに聞く。
「んあ?あー、フォレストウルフとヘビースパイダーなら余裕で倒せると思うな。ゴブリンは今でもどうにかいけると思うけど、念のためにあと2レベ上げたら向こうの攻撃も通りにくくなって来ると思うぜ」
あ、そっか
こっちの魔力が上がったら相手の与えるダメージはかなり軽減されるんだった。
あまりにも基本的なことですっかり忘れていたけど、それってかなり重要だよね
「そういえば兄ちゃんは魔力を纏った状態はどれくらい続けれるんだ?今日見た感じ四時間は余裕で持ってたけどさ」
「僕?うーん、試したことはないけど魔力切れになったこともなかったかな。まあ魔力を使う機会がなかっただけなんだけど……」
「なら知っておくために明日は一日中魔力を纏っていたらいいんじゃね?少しずつ魔力は纏っていたら外に漏れ出て行くから、急に枯渇したら大変だし」
「そうだね。じゃあ明日はそれで探索しようかな」
「あのー、そろそろ次の話に移っても良いでしょうか?」
僕とルドルで話していていつの間にかサーシャを放りっぱなしにしちゃってた。
「あ、ごめんね」
「いえ、大丈夫です。それでは魔素の森の外を説明させてもらいますね。ここから一番近く、多数の人が住んでいる場所が都市エピドールです」
そう言ってペンで魔素の森の外に書かれた、いくつかの小さな丸の一つを指す。
「他にも、エピドールを中心に半径100キロ以内に4つ、都市がございますね。東には都市ユングが、西に都市ランブラーと都市バビロン、北には都市ダニエラがあります。今言った五つの都市はもともと自治都市だったのですが、およそ二百年前にあった大氾濫という魔物の進行により、【無力連合】という当時の都市同士で連合を組んだものが今でも続いております」
「つまり今はそれらで1つの国ってこと?」
「いえ。それぞれに領土があります。ただ、無力連合から各都市の結束はかなり高まったらしく領主の血族通しの婚姻なども盛んに行われており1つのまとまりと見られることも多いです」
「質問だけど、人口ってどれくらいなの?」
「エピドールがおよそ2万人、他が大体1万人程だったはずです」
「結構少ないんだね。あ、そういえば気になってたんだけどさ、この世界ってヒト以外の種族とかはいるのかな?」
「?普通にいますよ。獣人や森人、精霊に土人ぐらいですかね」
あ、割と馴染みのある名前ばかりだ。
となると種族の特性とかも同じかな?
「悪魔とか天使はいないの?あと魔族とかも」
「ああ、魔族ならこの世界と別の世界である魔界にいますよ。悪魔と天使は……すいません、伝承上に名前が存在するだけで現在いるのか不明ですね。もしかして地球には?」
「うん、普通にってわけじゃないけど結構いるよ」
何せ地球に彼らが住む世界をくっつけてきた種族だからね、と内心で付け加える。
彼らがいなければ、魔法の存在を知る前に人類が消失していただろうからもちろん感謝している。
「それはまた、随分と混沌とした世界なのですね」
「そうだね。……あ、そうだ。折角だし明日地球に行ってみない?」
二人を家に迎え入れてからずっと考えてたんだよね。
「いつまでもサーシャに僕の服を着せてるのも申し訳ないし」
「そんな、これほど立派な服を着せてもらえるだけで感謝してます!」
「いやいや。サーシャも女の子なんだから、いくつか服は持っておこうよ。ルドルも地球見てみたいでしょ?……って、もう寝ちゃってるよ」
「ふふっ、それではまた明日この話をしましょうか?」
「そうしよっかな」
僕とサーシャはお互いに顔を見て小さく笑い、ルドルに毛布をかける。
そしてそれぞれが寝室に入り、スッと目を閉じた。
都市の名前は、無理に覚えてもらわなくていいです。
というか作者が覚えてない……
異世界生活、10日目ですね。なかなかハードな時間をお過ごしで……
次回の更新は明日の十時(デジャブ感
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追記です!)真尋、ルドルの身長を5センチずつ小さくしました。もし訂正し忘れてる箇所があったら教えてください〜




