二十話
オークの頭が半回転し、ぐにゃりとだらしない肥満体から垂れ下がる。ゆっくりと絶命したオークが崩れ落ちる。たっぷりと時間をかけて、まず垂直に尻もちをつき、次に上半身が横倒れになる。そしてもう動かない。
ブラウスが勝利の雄叫びを上げた時、やっと周囲の止まった時間が動き出した。仲間を殺されたオーク二体がブラウスに猛る、出遅れた情けない男二人が躍り出る。
まもる は挟み撃ちされつつあったブラウスの救援にかけつけた。
「でやぁ!へやああああっ!」
興奮と緊張で正気を半ば手放していた。今の掛け声も意識せずに出たもので裏返っている。
それでも辛うじて訓練所で受けた講習は頭に残っていたようだ。真上に振り上げたロングソードを縦一文字に振り下ろす。これならば隣り合う味方にを切りつける心配がない。
しかしタイミングが速すぎた。オークにかすりもせず空振り、刀身に込めた勢いを止めることが出来ず床に切っ先を打ちこんでしまった
それでもオークの意識をこちらに向ける事ができたようだ。としあき もかけつけブラウスへの挟み撃ちは解かれる。オーク達は得物の石斧を振り回すが、木の盾三枚が並べられた防衛線を打ち破るには弱すぎる。
形勢は3対2となりがぜんこちらが有利となり、ブラウスが再度攻勢を掛けようと口端を引き上げ下半身をバネのように引き絞る。三人で協調して戦おうなどの考えはさらさらないようだ。
しかしそこに闖入者が現れた。地べたを這いずる何者かだ。暗くてその姿形がよくわからない三つの影は三人の足元ズルズルと這いよりブラウスの好機を潰した。
地べたの何者かはこちらを攻撃するでもなく足元に迫りよるだけだが、ひどく邪魔で戦線は膠着したかに思えた。するどい語調で戦場に指示が飛ぶ。まもる は切羽詰まっておりそんな余裕はない。ジェラートだ。
「ムーニャ! オークに【ブラーヌ】を唱えてください。キンコは待機。いつでも詠唱に入れるようにしておきなさい!」
ムーニャが魔法使い呪文の詠唱に入る。言葉の端々にニャが入るので隣のキンコは甚だ不安だったが特に問題もなく発動した。ムーニャの指先が紫色に怪しく輝く。
呪文の効果は盾の壁を飛び越え、オーク二体の顔面に異変を起こす。紫の霧が視界を塞ぐ。一体には耐えられたが、としあき と正対している一体には効いたようだ。
としあき はすかさず盾と盾の隙間から鋭い突きを放つ。視界をなくしたオークは避けることも石斧で防ぐことも叶わない。胸部を刺突され生命を絶たれた。
均衡は完全に崩れた。不利を悟った残り一体のオークは動揺し逃げ出す素振りを見せたが、血気はやるブラウスを見逃す筈もない。思い切り良くきき足を踏み込むとオークに盾ごとぶつかり態勢を崩した所を狙いかまわずめった打ちにして殺した。
後はもはや掃討といった様相だ。地べたに這い回るものはスライムであった。ブヨブヨとした生きた粘液のモンスターでこれはプチスライムという種類である。迷宮最弱のモンスターであり踏み潰すか蹴っ飛ばすかすれば倒せる。
前衛三人がそれぞれ一体ずつつま先で小突き殺してHDクラッシャーズの初陣は勝利で終わった。
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初戦闘開始だ。
戦闘画面は大体他の作品と変わらないが一つ新システムが実装されている。
モンスターイラストの下にモンスターの数だけ光る玉が表示されている。「設定メモ」によるとこれはエネミーボールというらしい。命名は無論親友だ。
このエネミーボールで敵の数を一目で直感的にプレイヤーに教える、というコンセプトらしい。また敵のHPが半分になると半円になりプレイヤーに教えてくれるそうだ。こちらはタッチパネルでマッピング出来る某派生作品では敵の残りHPがゲージで表示されるというシステムがあったので二番煎じっぽいが。
設定メモには親友の愚痴が書かれていた。それによると同じモンスターが複数出現し、寸分たがわぬモンスターイラストが横並びに何体も表示される光景はまったくもって間抜けでナンセンス、没入感と世界観をぶち壊してくれる。と書かれている。
俺はプレイしたことがないがそういう派生作品があるらしい。俺の感想としては初代シリーズ作品のように先頭のモンスター絵だけを一枚表示するのはいくらなんでも地味すぎるだろう、とは思う。
プレイに戻ろう。
初戦闘はいきなり2グループ出現だった。厳しいが片方も雑魚のスライムなので大丈夫だろう。念のためオーク三体に【ブラーヌ】をかけておく
この呪文の効果は敵1グループを盲目状態にするというもので、盲目状態になった敵は命中力と回避力が大幅に下がり倒しやすくなるのだ。
初代シリーズだと睡眠呪文を覚えたのだがドラクーエドリィではレベル2呪文に移動しているらしい。まあ大して問題なかろう。
ブラウスの獅子奮迅な活躍もあり初戦闘は無傷の勝利となった。




