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第02話 陰から見マモル!

 そう宣言したユイは上機嫌とばかりに鼻息を荒くして自分の席へと舞い戻っていった。

 入れ替わるようにして目の前に現れたのは、これまたユウジにとって見知りの者だった。


「おはよー、ユウジ」

「よ」


 マンガだったらキラキラと輝きエフェクトに包まれているであろうイケメン男子生徒。

 高橋マサヒロ。ユイやユウジとよくつるむ、そしてこれまた残念なイケメンである。


「昨日のD型H系見た?」

「あー、見た見た。結構面白いなアレ、ヒロインが表情豊かで」

「山口ちゃんの喜怒哀楽の表情はいいよねー、大人ぶった性格なのもグッドだね」


 イケメンなのにガチオタク、この後の自己紹介では「二次元の女の子が好きです」と教室を凍りつかせた。

 中学時代に振った女の子は数知れず、致命的に彼は”三次元のもの”に興味がないのだ。

 しかしイケメンなのでモテる、僅かな勝機に賭けて女子が玉砕する姿を。嫌と言うほど見せられたユウジである。


「マサヒロは何か部活入るのか?」

「隣人部がいいかな」

「ねえよ、そもそもあれは四空が大鷹とイチャイチャしたいが為に作った部活じゃん、あったとしてもどうすんの?」

「ユウジは四空なんだ……分かってないね、そこでは微肉がエロゲーをやってるじゃないか。同志として興味があるんだ」

「そっちかー、マサヒロ微肉派かー……まあ俺は理香派だな」


 アニメでいうところのヒロイン、誰を気に入るかは各々次第。

 アイドルグループで誰が誰を推してるかの論争にも似ている。

 今回に限ってはマサヒロとユウジは対立してしまったようだ。


「……うん。ヒロイン論争は血を見そうだからここらで止めておこう」

「だな、で真面目に部活どうするんか?」

「いやー、現代視覚聴覚文化研究会みたいのがあればいいんだけど」

「俺もそれがあったら入りたいかもしれん……ユイが部活作るそうだ、よしみでどうだ?」

「うーん、考えてみようかな。自由な部活でギャルゲーできるといいな」


 じゃあまた、と爽やかスマイルで自分の席へと戻るマサヒロ。

 残念さここに極まれり「性格がああじゃなければぁ……」とハンカチを噛み締める女子生徒多数。

 苦笑しながら彼を見送ったところでラノベに意識を戻そうとすると。


「なーなー」

「ん?」


 後ろからユウジの肩を軽く叩かれる。誰がなぜに? と振り返るとそこには坊主刈の男子生徒が座っていた。


「俺、相川ケイタ! よろしく!」

「よろしく、俺は――」

「言わなくても知ってるぜー、下之弟さんよ!」


 以前の通りにユウジには姉がいる、その姉の弟だからして下之弟。

 または――


「シスコン番長」

「シスコンじゃねーよ! ……って懐かしい響きだな、てかなんでお前が知ってんだよ?」

「そうそうこの受け答えだ! そりゃまあ、藍中の有名人四人組だからな!」

「四人組って……俺と姉貴と誰よ?」

「そりゃシスコンのすべての元凶こと妹ちゃんと毒舌秀才な幼馴染ちゃんじゃないかー」

「…………」


 ユウジはこの時理解する、コイツの俺への認識は中学二年で止まっているんだなと。

 実際そうならば間違っていない、しかし今ではそれは大間違いだ。


「あ、あれ? 地雷だった? そういや妹ちゃんと幼馴染ちゃんは?」


 聞いておきながらも地雷を踏み続ける勇気! この坊主野郎に戦慄と呆れを覚えながらも、


「いねーよ。妹は引きこもった、幼馴染は失踪した」

「…………え、マジで?」

「マジで」


 まさかと言わんばかりに顔を寄せて、冷や汗を流す坊主に真顔でユウジは答える。


「そっか……悪い……そんなことになってたとは、配慮足りな過ぎた、マジごめん!」

「いいよ、もう過ぎたことだし。あ、ついでに幼馴染には告って振られたんだっけ」

「ごめんなさいごめんなさい」


 言った通りのことで、ユウジには妹がいる。しかしある出来事を境に引きこもってしまった、現在二年目。

 幼馴染に関しては突然の家族ごとの失踪、連絡もなく突然に消えたのが事実。

 その一連の出来事にユウジがショックを受けなかったわけではない、時がそれを和らげただけである。


 ちなみにシスコン番町たる所以は、ユウジがいつかの妹の為に喧嘩したり、体調不良を遠目に確認したユウジが保健室にお姫様だっこで連れて行ったなどなど。

 親バカならぬ兄バカを散々見せつけてくれた、妹あるところに兄あり。たとえその姿が見えなくとも、陰から彼は見守っている。

 ……という、どこまでが本当で、どこまでが嘘なのか分からない伝説より。


「で、坊主……じゃなかった相川」

「坊主でいいです」

「いや……そういう反応困るから。別に気にしてないから普通に接してくれ」

「誰が坊主だ! 俺には相川と言う名字があんだぞグルァ!」

「……あまりの掌返しに謝罪要求をする為のカードを切ろうと思ったわ」


 ということでユウジの後ろ席には相川ケイタ、坊主イコールではないがスポーツ青年である。

 早速野球部に入るのだと後々ユウジに語られた。


「なあ下之、このクラスの女の子レベル高くね?」

「あー……確かに」


 見渡して気づく、なかなか素人目にも粒が揃っていることをユウジは理解した。


「マイカちゃんとかどーよ、巨乳でクール美女系の! あとはあのキツめながらもナイスオッパイの!」

「えーと……俺的にはミユキがいいな、活発系の」

「趣味が分かれましたな」

「いや、お前ただ胸が大きい子が好きなんじゃないのか?」 

「失礼なっ! 俺は好みの顔で選んだ!」

「直球正直にそれもどうかと……じゃああの愛坂ってのは?」

「あー……ちょっと貧しいな」

「……やっぱり」


 ユウジの中で相川は巨乳坊主という愛称が制定された、文字にすると酷すぎる。

 まあ相川も言うだけならタダである。だが本人に聞こえてしまったら社会的な抹殺は免れないだろう。

 そんな女子の品定めを相川となんとなくやっている間に教師がやってきた。





「あー、静かになれ。俺がこの一年二組の担任の大木だ、一年間よろしく」


 気怠げな様子で自己紹介をしながら全クラスメイトが、ああこの担任やる気ないなという感想を得ていた。 

 文字の適当さ加減から、面倒くささが滲み出ている。


「で、一応マニュアル通りに各々自己紹介すっか」


 ということで一人一回、名前と”好きなもの”を挙げる自己紹介が始まった。


「辛い物が大好きです!」やら「……最近は観察に熱中しています」やら「性的なことに興味津々です!」やら「小説書くのが好きです」など。 

 濃い面々であることが分かっていく、以外に好きなモノってのはその人を映すもんだなあ。

 

「で、俺が進行するのも面倒だから委員長決めるか」


 クラスメイトはこの瞬間”やっぱこの担任面倒くさいんだ”が総意となった。

 そりゃまあ言葉に出したら擁護もしようがない。


「委員長したいヤツ」

「はい」


 呼びかけに間隔を空けることなく手を挙げたのは先ほど”小説書きが趣味”と言った眼鏡女子だった。


「決定」

「「(驚きの速さで委員長が確定した!)」」


 担任の即決にクラスメイトの心は一つになる、これはなかなか協調性の期待できそうなクラスのようだ。


「副委員長は……俺はどうでもいいから、委員長の裁量に任せる」


 この刹那にクラスメイト全員の脳内”給料泥棒”の四文字が浮かんだが、皆堪えた。

 

「はい、ではくじ引きを作ってきました」

「「(これ委員長のシナリオ通りじゃね!?)」」


 あまりのもくじ引きの用意周到さに全員がツッコミを入れた、内心で。


「で、私が引きます……あっ、下之君」

「え、俺?」

「「(え、普通出席番号とかじゃないの? いきなり名指し!?)」」

「ということでよろしくお願いします」


 いきなりの展開に戸惑うユウジ、そりゃそうだ。


「質問、俺が副委員長の就任が免れることはないんですか?」

「ないです、私が一任された以上、私がルールです」

「「(これが恐怖政治の幕開けか)」」


 なかなかの濃いキャラっぷりを見せつける委員長(NEW)はそう横暴にも言い放つ。


「まあいっか」

「「いいの!?」」

「オイ、ユウジ! 部活はどうなる!」


 流され系主人公の本領を発揮したユウジは超放棄的に了承した、これにはクラスも声をあげてツッコミを。

 先約のはずのユウジの部活入りをあっさりと打破されたユイが声をあげているが、ユウジは気にせず。


「先生、副委員長はどんなことをするんですか?」

「委員長の補佐だな」


 そりゃそうだ。


「委員長の仕事とはなんですか?」

「……あー、後で説明書配るから」

「「(もはや説明する手間さえ惜しいのかこの怠惰担任は!)」」

「まあ、力仕事とかなければ別に」

「アタシはよくない! ユウジの浮気者!」


 



 と、いうことでユウジは副委員長に就任した。

まあ、こんなのんびりとした作風なので。

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