ビームの戦い
――1940年7月16日22時 オーステンデ、白海軍第2艦隊旗艦バーデン(元)
「電波偵察機より報告。クレーヴェより本艦直上への30MHzビームの発振を確認」
「全艦総員戦闘配置。こちらに来てくれたな」
「電波偵察機より報告。シュトルベルクより本艦南東への30MHzビームの発振を確認」
「全艦主砲対空戦闘用意。クレーヴェ方向に指向せよ」
「前進レーダーより報告。航空機200機以上。南東方向本艦よりの距離30km。高度5500m」
「仰角28度、信管調定30秒、発射間隔0.1秒」
「レーダー、南東距離23000m。高度5000m。時速420km」
「22000m」
「21000m」
「発射開始」
「全弾射耗。砲員応急任務につきます」
「前進探照灯照射。側方30MHzビーム発振。対空機銃戦闘用意」
「着弾。命中多数。墜落機確認」
「一部投弾開始しました」
「投弾予測時刻」
「機銃射撃開始」
「着弾。花火に点火」
「本艦の被弾5発。1番砲塔貫通。火災発生なし。対空砲、対空機銃損傷多数」
「艦隊主力艦10隻の被弾総計50発。火災発生3件消火見込み。戦闘不能艦なし。主砲塔被害計8基」
「He-111H型200機による爆撃でしたが、搭載する250kg爆弾1600発に対し投弾数800発。内、欺瞞ビームによる投弾300発。よって有効投弾数500発、その内10%が命中と推定します。主砲の対空射撃により、敵機100機以上を撃破したと推定します」
――1940年7月17日 Downing 10
「首相、白海軍より報告でHe111 120機程度を撃破したとのことです」
「痛快だね。Knickebein情報を提供したかいがあった。あれはいい発想だったと思うが単純すぎだね」
「はい、周波数の変更などしてくると思いますが、ビームを目標に向けなければいけない以上対応は可能だと思います。当面、電波偵察機の運用は続けますし、妨害の用意はします。我々が開発中の誘導システム、Geeでは目標が露呈することはありません」
――1940年7月17日 第2航空艦隊司令部
「長官、被害報告がでました。投入したHe-111 180機中、未帰還50機、帰投中墜落確認10機、修理不能30機、その他の機体もほぼ修理が必要という結果です」
「ほぼ1ヶ月分の生産量に匹敵する損害だね。それで戦果は」
「偵察機の写真を見たところ、敵艦隊の殆どを撃破ししたが、まだ戦闘可能な艦が数隻、発砲可能な主砲が10基程度あり、追加攻撃が必要と考えます」
「Knickebeinは」
「Knickebein自体は正しく動作しました。ビームが傍受された結果、主砲を事前に照準され50m間隔で飛ぶ編隊のほぼ中央で、50m以上の危害半径を持つ砲弾約100発が爆発したのが被害が大きくなった原因です」
「まぐれあたりではないと」
「はい、この条件では50m程度の誤差で射撃できるものと考えます」
「回避はできなかったのかね」
「対空砲火は無視せよと命令してありますので回避しません。He111の運動性能でも、あらかじめ予測していれば回避は可能ですが、タイミングを揃えないと衝突するので限界があります」
「最大射高は」
「砲弾の改善と仰角の上限を30度程度に改善することにより、6000m程度までは射撃可能と考えられます。He111でも爆弾搭載量を減らせば高度7000mからの爆撃も可能ですが、さらに仰角を取れる可能性は否定できません」
「さしあたりはどうする」
「主砲が減っているとはいえ、多少高度を上げたところで昨晩のような攻撃は危険すぎます。かといって昼間攻撃は英本土から戦闘機がでてくるおそれがあり非常に危険です。ということでJu88 40機程度による900kg爆弾の急降下攻撃を行います。ビーム誘導した先導機により照明弾を投下、急降下開始地点をビームで指定することにより夜間でも高精度の爆撃が可能と考えます。主砲の攻撃に対しては一度敵前で周回することにより射撃を誘い、再装填中に爆撃を行うことができます。機体の間隔を広げ砲を監視し、編隊での回避運動を準備しておくことにより被害が局限できます。ビームを出す、出さない、爆撃するしない、急降下する、しないによって敵の対応を外すことができます。多少じゃんけんめいたことになりますが、こちらは後出しができるので問題ありません。これでしたら3日以内に実行可能です」
「急降下では対空砲や機銃による被害がでるのではないかね」
「爆撃で対空砲や機銃の多くが損傷しているためさほどにはならないでしょう」
「陸軍を待たせることになるな」
「長官、参謀長、偵察機の写真の詳細分析が出ました。一見全損しているようにみえる艦の一部は、欺瞞工作のようで、実際には8隻程度は戦闘可能と思われます。また砲塔に命中した爆弾も、2次爆発を起こしていません。砲塔内には各砲門に装填された1発以外の砲弾はなかったものと思われます」
「なるほど、それでは所期の作戦目的は達成されたことになるね」
「砲弾がなければ、戦力にならないというのはそうですが、弾倉の装甲は砲塔天蓋よりはるかに容易に強化できますので、弾倉には弾薬が格納されている可能性があります。短時間で砲塔に搬入できるとすると、一時的にでも戦闘能力が失われたとは言えないのでは」
「じゃんけんで一時に1つ2つしか手をださないなどという兵法はないよ」
以下を参考にしています。
https://en.wikipedia.org/wiki/The_Blitz#German_night_navigation_devices
Jones, R. V. (1978). Most Secret War. London: Book Club Associates. ISBN 978-0-241-89746-1.
https://en.wikipedia.org/wiki/Battle_of_the_Beams
地図はhttps://commons.wikimedia.org/wiki/User:Dahnielsonによる以下の画像に、本作の内容に合わせ変更を加えたものです。現実のKnickebeinの運用とは異なります。
The map is modified for fictional setup from
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Map_of_Knickebein_transmitters.svg
This map image is licensed under the Creative Commons Attribution-Share Alike 3.0 Unported license.
グラフはシミュレーションによるもので史実より仰角が上げられる想定です。
弾道計算はhttps://www.reddit.com/r/learnmath/comments/14xt06v/how_do_i_calculate_projectile_trajectory_with_air/?show=original を元にしていますが、だいぶ変更しましたので、ご注意ください




