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大川さんの行動

「先日は弊社にお越しいただきありがとうございました。」


「こちらからの依頼ですし、何よりお礼を言いたかったですしね。

 それで企画部の大川さんがなぜ私との面会を?」


「もちろん、前回ご依頼のあった社員寮に関する打ち合わせをしたくてここに来ました。」


「そうですか、なるほど~。

 ただ、私もそんなに細かいところまで分からないものでして、

 担当者をお呼びしましょう。」


「あ、いえ!まずは、こちらからのご相談を聞いてもらいたいのですが・・・。」


「相談・・・ですか?」


「ええ・・・。」


俺は意を決して説明を開始する。


わざわざ日本建設の会長に時間を取ってもらって面談を要請したのは、

説明をして、賛同してもらうために今日はここにきたのだから!



「有機ELを使った照明器具なのですが。」


「・・・難しいのですか?」


「いえ、間違いなくできます。開発担当者は柊になっております。

 彼なら万が一もないです。」


「そうですか・・・やっぱり優秀な方なんですね・・・。

 それなら何が問題になっているのですか?

 わざわざ私と一対一での面談を要望されたのですから・・・。」


「問題になっているのは、弊社内の問題で

 会長のお耳に入れてもらうのもはばかられる問題なんですが、

 是非ともお話させていただきたくて、今日はここに来たのです。」


「・・・なるほど・・・。」


そういって、会長は秘書に電話を掛けて、お茶をすぐに持ってくるように依頼する。



「他言するような話ではないと思いまして、

 時間を置いていつもはお茶を持ってこさせていたんですが、

 そうすると話を折ってしまいそうでしたからね。」


「ありがとうございます。」


会長が連絡をいれて数分後には秘書が部屋の中へと入ってくる。

ゆっくりと俺と会長の傍にお茶が出されていく。


時間としては1分ほどの時間であるのだろうが、

以上に長い時間に感じてしまっているのは、

間違いなく緊張のせいだろう・・・


人生で一番緊張しているな・・・


そんなことを考えてしまって思わず苦笑してしまう。

秘書が部屋から退席すると、



「さて、それではお話をお願いします。」


会長に促されて、話を始めるのであった。



「まずは弊社内には自社で有機ELを製造する設備、

 更には量産できる工程がございます。」


「ええ、前に震災復興支援の時は自社ですべてを作ったと聞いております。

 だから、さすがは南日本電機さんだな~と思ったんですよ。」


「ありがとうござます。

 今回の有機ELを用いた照明器具に関しては、当初は自社製品で検討を進めておりました。

担当者は柊君であり、彼は見事に製品を完成させて、

他社よりも数段優れた有機ELを作り上げたんです。」


「・・・それで。」


「ですが、会社としての方針は優れている自社の有機ELを使わずに他社の劣る・・・

というか、不具合が発生する可能性が高いヨーロッパメーカー製の有機ELを

採用することになりました。」


その言葉にお茶を飲もうとしていた会長の手が止まる。

そして、スッと俺の方へと目を向けてくるのであった。



「・・・お察しの通りかと思いますが、

自社でリスクをとるのではなく、ヨーロッパメーカー製の製品を使って、

不具合が発生した場合の保険を会社としてかけるという選択をとったのです。」


「・・・大人な選択ですね、経営としてはいい判断だと思います・・・。」


「ええ、1つ不具合が出れば膨大な金額になります。

慰謝料や設備の取り換え、更には重大インシデントになれば

 照明器具自体の回収をしなくてはなりません。

 ですから、会社としての判断としてある意味正しい判断だと思います。」


「そうですね・・・。」


「ですが!僕個人としては全くそうは思わないのです。」


「・・・どういう考えをお持ちで?」


「そもそも不具合を出さない商品を納めるべきだと思ってます。

 先ほどお話しように自社で作った有機ELでは不具合の発生を抑制出来てます。

 ならば、不具合が発生するであろう製品を使うのではなくて、

 発生しないであろう製品を使って、照明器具を作り上げて納めたいと思っております。」


「なるほど・・・。」


そう返事をしながら、俺の説明を聞いた会長は、ゆっくりとソファーにもたれ込んでいく。

ソファーにもたれ込んだまま、考え事をしている態勢をとり、その姿勢が崩れることはない。

俺はその姿勢を固唾をのんで見守っているのだが・・・



「・・・それだけですか?」


「え?」


会長の言葉に虚をつかれる。

想像していた言葉とは違うからだ。


賛同する言葉か、否定する言葉が返ってくるとばかり思っていたのだが、

更に言葉を促される言葉が来るとは思ってもみなかった。



「ここからは有機ELを用いた照明器具として考えですが、

 今回納入させていただく有機ELを用いた照明器具は世界で初めて市場にでます。

 その照明器具にもしも不具合が発生するとなれば、


 “有機ELってこんなものなんだ”


 そういう負のレッテルが貼られることになってしまうのです。

 そうなると次に新しい製品をだしても、有機ELということで

 二の足を踏んでしまう状況になってしまいます。

 ハッキリ言って今後のことを考えるとそれだけは絶対に避けるべきことだと思っておます。

 ですから、私は無理を承知でこちらを訪問させていただきました。」


「なるほど・・・将来的な有機ELの発展を考えてですか・・・。

 それで私が御社が自社で作っている有機ELを指定した仕様にしてほしい・・・と?」


「はい・・・。」


「なるほどなるほど・・・。」


そういって、またソファーにもたれ込んでゆっくりと考え込む会長。


俺は固唾をのんで見守りながら、緊張を緩めない。

また次の質問にどんな質問がくるかと予想していく。


次の質問は何なのか・・・


どのくらいの時間が流れたのかがわからなかったけど、

またゆっくりともたれていた姿勢から前に出て聞くる会長。


ゴクリと唾を飲み込んで会長から出される言葉を待つ・・・



「先ほどのご意見も本音とは思いますが、

 大川さんの本当の本音を話してください。」


・・・その言葉に俺は覚悟を決めるのであった。


俺の本音はすでに会長にバレているのである。

ならば、俺がとる行動は一つだ!



次話は20時に更新予定です。


気づいた点は追加・修正していきます。

拙い文章で申し訳ないです。

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