ボス戦とセシル
六階層は、何の変哲もない大部屋だった……中心に鎧の騎士がいるのを除いて。鑑定……
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剣武神デュラハン(最上位種)
HP 15000
MP 0
攻撃 50000
スピード 600
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ハハッ……死んだな、これ。
「ヨウコソ、ロッカイソウヘ。ココデダイジナノハコウゲキヲウケナイコトダ、ヨウイガデキタラカカッテコイ」
うそん! しゃべんのかい! まあいい、ボスは一体なんだ、全力でやれば行けるっしょ。
グラトニーに死毒と金剛硬化、そして神出鬼没をかける。
「ムッ? ケンノケハイガウスクナッタナ」
次に限界突破で強化して思考加速を使う。よし行くか。
「おりゃぁー!!!!」 キンッ!
全力で打ち込んだ剣はあっさりと弾かれ、それどころか剣風で俺までバランスを崩す始末。
気づくと俺の眼前にデュラハンの剣が。
「アイギスの盾!」
アイギスの盾を出した途端、この盾が危険なことに感づいたのか
剣を急停止させる。
その隙にグラトニーに猛進をかけ速度をあげ、後ろから切りかかる。決まった! ……カキンッ!
「なっ?!」
デュラハンは信じられないことに、後ろを見ずに剣を振りしっかりと弾き飛ばした。
この時驚いた俺がほうけていたのは一秒にも満たないはずだ。しかしデュラハンほどの実力者との戦いだとそれは決定的な隙となる。
「ぐはっ!!」
やばい、思考加速のおかげでかろうじて直撃は避けたが……それで体力が二桁になるってどういうことだよ?!
「フム、スキヲツイタノデイマノデキメヨウトオモッテイタガ……ナカナカヤルジャナイカ。サスガココマデキタダケノコトハアル、バケモノダナ」
「いやいや、直撃してないのに俺の7000近くあるHPを一瞬で二桁にまで減らすお前がいっちゃだめだろ……」
これはまじでまずいな……何か隙を作るいい手はないか?一撃さえ止めちまえば、こんしんの一撃を発動させたグラトニーで削りきれるはずなのにっ!
「あっ!!」
あったぞ!! あいつの攻撃を一回だけ止める方法が。
こいつはアンデットとはいえ騎士のはず、なら少し待ってもらえるかもしれない。
「デュラハン! 仲間と二人で協力して戦いたいんだがだめか? たとえアンデットでも騎士としてそれくらいの器はもちろんあるよな?」
「ウーム、アオリナドノリタクナイガ、キシトシテノウツワヲトワレテワナ。ヨシワカッタ、マッテヤル。ジュンビガデキタライエ。」
「おう、ありがとよ!」
よっしゃ! ちょろいぞ、このデュラハン。
カー君来い!
「マスター久しぶり~。もうクリアしたの~?」
「いや今は(説明中)」
「なるほど~。それで僕の宝石結界の出番ってわけだね~、いいよ~任せて~!」
よし、これで準備は整った。反撃するとしますか!
「待たせたな。やろうか」
「アア。ドンナサクセンカシランガ、タノシマセテクレヨ?」
「期待に添えるようがんばりますよっと!」 キンッ!
俺はグラトニーを強化してわざと大振りに降り下ろす。
「ナンダ、ゲンカイカ? ケンガアライ、ガッカリダ」
デュラハンは簡単にグラトニーを弾き俺に切りかかってくる。
すぐにグラトニーを俺のもとに戻すが間に合わない。
「ソレナリニタノシマセテモラッタヨ、サラバダ!」
「へへっ! それはどうかな?」 カキンッ!
「ナニッ?!」
デュラハンの全力の降り下ろしは俺の目前で大きく弾かれた……宝石結界によって。
よしっ! 今だ、こんしんの一撃付与!
「いっけーーーーーーーーー!!!!」
「キャァーーーーーー!!」
うおっしゃー!! 倒したー……待て、キャァ?
ふとデュラハンを見ると、そこには兜と鎧が少し砕け扇情的な姿をした銀髪の美女がいた。
……はいっ? ごめん誰か時間止めてくれない? えっ男じゃなかったの?!
「くっ、早く殺せ! 私は負けたのだ。経験値になる覚悟などとうにできている!」
えっ、まさかのくっ殺さんかよ……兜のせいで声がくぐもってて気づかんかったぞ。しかし……
「お前負けを認めたんだよな?」
「ああ、私ももう動ける気がせんしな。あと一時間あれば完全回復するが……」
「お前の回復力恐ええよ!! じゃなかった。負けを認めるなら俺に仕える騎士になんねえか? お前みたいな強い奴が仲間だと心強いんだが……」
「……ふむ、一度なくした命。二度目の人生(アンデット生?)だ。わかった仕えよう。して名は何とおっしゃられるのだろうか?」
「? 名前はまだねえぞ。魔物なら普通じゃないか?」
「なっ?! 名前がないというのに私に勝ったのですか。ははは! やはりバケモノだなっ」
急にデュラハンが笑い出したぞ? 何でだ?
「マスターマスター。魔物が名前をつけられるとステータスが大幅アップするんだよ~! 種族によってステータスの上がり方に違いはあるけどね~」
「ああ、だからネームドモンスターのなかでも特に強い私に勝ったあなたはバケモノのようだというわけです」
まじか。じゃあカー君も?
「違うよ~。テイムの名付けは、いわばあだ名みたいなもんなんだ~。私もネームドモンスターで、ほんとの名前はジュエルだよ~」
「ちなみに私は、セシルという。よろしく」
「そっ、そうか。よろしく……とりあえず飯にして休むか。」
聖王セラムside
神託から2年後、セラムは孫娘セイラとお茶会をしていた。
「してセイラ。もう数年後には入学じゃがどうじゃ? 楽しみかのう?」
「おじいさま、私は聖女の身。おじいさまには申し訳ありませんが自分の楽しみを求めようなどとは思いません。」
「そうか……」
小さな頃はあんなに元気な子だったのにどうしてこうなってしまったんじゃろうな。
聖王セラムといえども人間。孫が心配なのは、変わらないようである。やがてどこかのお気楽魔王がセイラと同じ学年で入学を果たし、セイラを変えていくのだがそれはまだもう少し未来の話……
「わしはどうすればええんじゃろうのう」
「? おじいさま、どうかされましたか?」
「何でもないよ、では今日の所はこれで終いにするかの」
「はい、おじいさま。とても美味しかったです、ごきげんよう。」
老人の悩み(孫バカ)は続く。
「へぇー、セシルって聖王国の騎士だったのか。どんな国だったんだ? ってか何でこんな場所に?」
「過激派の教徒も一部いるが大体いい国だぞ。聖王国では四大天使を奉っていてな、私も人間だった頃は信仰していたよ。四大天使はそれぞれ〔火を司るミカエル〕〔水を司るガブリエル〕〔風を司るラファエル〕〔地を司るウリエル〕 がいる。
それで私がなぜここにいるかという話だが……簡単に言えば神について聞いてしまったからだ。一般的には、神はこの世界を創造した後天使達に仕事を任せて去っていったとされている。しかし聞いてしまった話によると本当はゼウス、ポセイドン、ハデスというこの世界を創造した神々が三柱いるらしい。そこで私は話を盗み聞きしていたとばれ、罰として暴食の覇王迷宮に放り込まれたのだ。そしてなんの因果かこうしてボスになって復活したのさ」
「……すまん、嫌なことを聞いた。」
「こうしてまた仕えるべき主も見つけたんだ。気にしなくていいさ。さっ、疲れもとれたし次の階層に行こう。」
みんな苦労してんだな……。だが四人の最高位天使に三柱の神か。
7つの大罪と数が同じだ、どうもきな臭いな。
これは早くここを出て今の情勢を知る必要があるな。そのためにはセシルに剣の修行を……
「セシル! 付き合ってくれ」
「ふぁっ?!」
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