(1)
遥か地下から崩落の音がする。
何もかも終わりを見届けたかのように坑道が生き物のように揺れ始める。パラパラと崩れ始める側室。
地上へ繋がる穴で大規模な崩落が起こる。
間一髪トルクがエライザを抱きかかえて逃げた次の瞬間、穴は崩れ埋まり、光りが途絶えて側室は真っ暗闇になってしまった。
側室の隙間からチラチラと光るものがある。側室にしみ込んだ水が逆流を始めた。湧き出した水でみるみる水深を増していく。
それにつれて側室も明るさを取り戻した。
「トルクはサルナさんとトロッコに乗って」
「どうするつもりだ」
「三人は乗れません。私は大丈夫。さっきも流されたのでコツは掴んでます。トロッコにつかまって行きます」
バックパックを背負ったアルバドアンザールは水に浮かび始めたトロッコを押し始める。
背後で二度目の崩落が起こると水の勢いはダムの決壊さながら吹き出す。そしてトロッコを三人もろとも坑道へ吐き出した。
「なにこれ、変な水、唯の水じゃないわよね。足が持ち上がるわ。立っていれない。ゲル?ジェル?スライム?。ちょっと・・なんか変・・・」
幸か不幸かサルナにとって流されるのは2回目だという認識は全くない。
「この水も外気に触れれば唯の水にいずれ戻ります。さあ早く」
光る水に運ばれながら坑道を進んでいく。
無数の側室は封印のコンクリートが崩れ、乱された水流が渦を巻く。
坑道にぶつかりながらまさに激流の木の葉になって進むトロッコ。いずれ粉々に砕け散る運命だ。
強烈な水流にトロッコから手を離したアルバドアンザール。トロッコと並走しながら波の先頭に浮かんで進む。
「だめです~。掴んで・ください~」サルナが手を伸ばす。
だがアルバドアンザールが手を伸ばすことはなかった。
「トルク、サルナさん、いずれ又会いましょう」
「おいおい、どうするつもりだ」
「すいません。お別れです」水流の先頭で流されるアルバドアンザールが微笑む。
「スタンドプレーは似合ってないぜ」
「たまには許してください」
「しょうがねえなあ。今度は俺も龍に乗せてくれよ」
トルクには水の先頭に流されるアルバドアンザールの足元に龍の影が見えたような気がした。
「分かりました。少し先になりますけど。それから龍じゃあありません。ドラゴンです」
「どっちだっていいだろ。そういうところが・・・まったく・・・」
「アルさん、ありがとうございました」
サルナが動かないエライザを抱えながら身を乗り出す。
「エライザのことはお願いします。トルク」
「・・・」突然のことにトルクは事態が呑み込めない。
「エライザとの賭けで負けたじゃないですか」
「そういうことか。なんだよ解ってたのかよ」
「エライザ元気でね」
アルバドアンザールのバックパックからスザンナが顔を出す。
スザンナの問いかけにもエライザが目覚めることはなかった。




