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第16話 希望の方舟

〇アーク・中央司令室


 けたたましい警報が鳴り響いていた。


 司令室のモニターには、次々と赤い警告表示が浮かんでいる。


 『メインエンジン、出力制御不能!』


 『第七ブロック、損傷!』


 『外壁温度、急上昇!』


 『機体姿勢、安定しません!』


 隊員たちが必死にコンソールを操作する。


 「ダメです!」


 「制御が効きません!」


 副指令が叫ぶ。


 「補助エンジンを使って!」


 「それも反応しません!」


 その瞬間――


 アークが大きく傾いた。


 「うわぁっ!」


 司令室にいた隊員たちが一斉に倒れる。


 総監も手すりを掴んで、何とか身体を支えた。


 副指令が窓の外を見る。


 巨大なアークの機体から、炎と黒煙が噴き出している。


 「……アークが」


 その声は震えていた。


 総監が静かに答える。


 「墜ちるな……」


 「はい……」


 副指令が通信機を手に取る。


 「全隊員に告げます!」


 「アークを放棄します!」


 その言葉に、司令室が静まり返った。


 「繰り返します!」


 「全隊員は直ちに脱出してください!」


〇アーク・格納庫


 隊員たちが次々と脱出艇へ駆け込んでいく。


 護と未来も、負傷した隊員を支えながら走っていた。


 「こっちだ!」


 「急いで!」


 突然、天井から大きな金属片が落下する。


 「危ない!」


 護が未来を突き飛ばす。


 金属片が二人の間に落ちる。


 「護!」


 「俺は大丈夫!」


 護は立ち上がる。


 だが、その顔には明らかな疲労が見えていた。


 未来が心配そうに見つめる。


 「本当に?」


 「ああ」


 その時。


 通信機から副指令の声が響いた。


 『護、未来!』


 「はい!」


 『まだアーク内に隊員が残っています!』


 護と未来は顔を見合わせる。


 そして、


 「行きます!」


 『待って! 危険です!』


 護が答える。


 「俺たちはガーディアンですから!」


 未来も頷く。


 「最後まで、みんなを助けます!」


 二人は再び炎に包まれた通路へ走り出した。


〇アーク・下部区画


 倒れている隊員を見つける。


 「大丈夫ですか!」


 護が駆け寄る。


 「……足が」


 「肩につかまって!」


 未来が反対側から支える。


 「一緒に行きましょう!」


 三人で歩き始める。


 だが――


 その直後。


 轟音。


 アークが再び大きく揺れた。


 「きゃっ!」


 未来が壁に身体をぶつける。


 護が支える。


 「未来!」


 「大丈夫……」


 未来は立ち上がる。


 そして、窓の外を見る。


 地上が近づいていた。


 「……アーク、本当に落ちてる」


 護も黙って外を見る。


 これまで自分たちを守ってきた巨大空中基地。


 そのアークが、


 ゆっくりと、


 だが確実に、


 地上へ向かって落下している。


〇アーク・司令室


 『高度、一万メートルを切りました!』


 『このままでは市街地へ墜落します!』


 副指令が息を呑む。


 「……何とか方向を変えられないの?」


 博士が首を振る。


 「無理です!」


 「アークはもう、飛行するための機体ではありません!」


 総監が窓を見る。


 そして、


 「……最後まで、人々を守る」


 そう呟いた。


 副指令が総監を見る。


 「総監?」


 「アークを海上へ向けろ」


 「しかし!」


 「地上に落とせば、多くの人間が巻き込まれる」


 総監は静かに命じる。


 「最後の仕事だ」


 副指令は唇を噛み締める。


 そして、


 「……了解」


〇地上・都市部


 人々が空を見上げている。


 巨大なアークが、炎を上げながら落下してくる。


 「何だ、あれ……」


 「アークが!」


 避難警報が鳴り響く。


 ガーディアンの地上部隊が、人々を誘導している。


 その時。


 空に黒い影が現れる。


 ゾルガだった。


 「終わりだ」


 ゾルガが手をかざす。


 黒いエネルギーが街へ向かって放たれる。


 その瞬間――


 光が走った。


 ゾルガの攻撃を弾き飛ばす。


 ゾルガが振り返る。


 「……光」


 地上に二人の人間が立っている。


 護。


 未来。


 二人は互いを見る。


 言葉はない。


 ただ、頷く。


 胸元から光が溢れ出す。


 二人は同時に変身する。


 まばゆい光の中から、


 ウルトラマンスピア


 が姿を現した。


〇市街地・上空


 スピアがゾルガへ向かって飛び出す。


 ゾルガが迎え撃つ。


 巨大な拳と拳がぶつかる。


 轟音。


 スピアが地面を滑る。


 それでも立ち上がる。


 ゾルガが笑う。


 「まだ戦うか」


 スピアは答えない。


 再び突進する。


 その背後では、ガーディアンのGウイングが飛び交っている。


 『スピアを援護します!』


 レーザーがゾルガへ集中する。


 ゾルガが腕を振るう。


 巨大な衝撃波。


 Gウイングが次々と吹き飛ばされる。


 『被弾!』


 『脱出します!』


 副指令が司令車から戦況を見る。


 「……スピアだけではない」


 「私たちも戦う!」


 ガーディアンの隊員たちが一斉に動き出す。


〇海上


 アークがさらに高度を下げる。


 巨大な機体が海面へ迫る。


 「もう限界です!」


 『総監!』


 総監は最後まで司令室に残っていた。


 副指令が叫ぶ。


 「総監も脱出してください!」


 「……分かった」


 総監は最後にアークを見つめる。


 「ありがとう」


 そして脱出艇へ向かう。


 その直後。


 アークは――


 海へ墜落した。


 巨大な水柱が上がる。


 海面が大きく波打つ。


 炎と黒煙が空を覆う。


 地上からその光景を見た隊員たちは、誰も言葉を発しなかった。


 長い間、ガーディアンの本拠地だったアーク。


 それが、


 海の中へ消えていった。


〇市街地


 スピアとゾルガの戦いは続いている。


 ゾルガの攻撃を受け、スピアが吹き飛ばされる。


 「ぐっ……!」


 スピアが立ち上がる。


 しかし、ゾルガは容赦なく迫る。


 その時。


 護の心に声が響く。


 ――まだだ。


 未来も同じものを感じていた。


 ――まだ、終わってない。


 二人の意識が重なる。


 スピアの身体から強い光が放たれる。


 ゾルガが目を細める。


 「……その光」


 スピアが立ち上がる。


 そして、


 「俺たちは……」


 「この星を……」


 二人の声が重なる。


 「守る!」


 スピアがゾルガへ突進する。


 ガーディアンも総攻撃を開始。


 Gウイングの攻撃。


 地上部隊の援護。


 そしてスピアの一撃。


 すべての力がゾルガへ集中する。


 「ぐおおおおおっ!」


 ゾルガの身体が宙へ吹き飛ばされる。


 そのまま、


 大気圏を突破する。


〇宇宙空間


 ゾルガが宇宙空間で体勢を立て直す。


 「……この私を」


 怒りに満ちた顔。


 「この私を、地球から追い出すというのか!」


 その瞬間。


 遠くから、


 一筋の光が近づいてくる。


 ゾルガが振り返る。


 「……何だ?」


 光は徐々に大きくなる。


 そして――


 一人の、


 光の戦士


 が姿を現した。


 ゾルガは驚いたように目を見開く。


 「……光の戦士」


 光の戦士は何も語らない。


 ただ、ゾルガを見つめる。


 ゾルガが構える。


 「私の邪魔をするか!」


 光の戦士も構える。


 二つの光が宇宙空間で激突する。


〇地球


 スピアが空を見上げている。


 護と未来には、


 何か遠くで光がぶつかっているように見えた。


 「……何だ?」


 未来が呟く。


 だが、


 二人にはそれ以上分からない。


〇宇宙空間


 激しい戦い。


 やがて光の戦士がゾルガを押し込む。


 ゾルガの背後に、


 黒い亀裂が生まれる。


 異界への入り口。


 「ま、待て!」


 ゾルガが抵抗する。


 しかし、


 光の戦士はさらに力を込める。


 ゾルガの身体が亀裂の中へ吸い込まれていく。


 「私は……!」


 ゾルガの声が遠ざかる。


 「必ず戻るぞ……!」


 そして、


 ゾルガは異界へ消えた。


 亀裂が閉じる。


 静寂。


 光の戦士は、しばらくその場に立っていた。


 そして、


 ゆっくりと地球を見る。


 青い星。


 そこには、まだ人々がいる。


 まだ光がある。


 光の戦士は何も語らない。


 ただ静かに地球を見つめる。


 そして――


 何事もなかったかのように、


 宇宙の彼方へ飛び去っていった。


〇地球・海上


 アークが沈んだ海。


 その上空を、脱出したガーディアンの航空機が飛んでいる。


 副指令が窓の外を見る。


 「……アーク」


 総監も黙って海を見る。


 そこにはもう、


 何もない。


〇ガーディアン・臨時司令室


 生き残った隊員たちが集まっている。


 負傷者も多い。


 博士が資料を広げる。


 「……これだけです」


 副指令が見る。


 「これだけ?」


 「はい」


 博士は静かに答える。


 「アークを失い、航空機も大半を失いました」


 「そして……」


 博士が一枚の設計図を見る。


 その表情が変わる。


 「まだ、一つだけ残っています」


 副指令が顔を上げる。


 「一つ?」


 その時。


 格納庫の奥から、


 低い機械音が響いた。


 ゴゴゴゴゴゴ――。


 巨大な隔壁が、


 ゆっくりと開いていく。


 副指令が目を見開く。


 「……これは?」


 博士が静かに答える。


 「アークが完成するより前から、密かに建造されていた艦です」


 隔壁の向こう。


 巨大な艦影が姿を現す。


 それは、


 これまで誰も見たことのない巨大戦艦だった。


 巨大な船体。


 無数の推進装置。


 そして艦首には、


 大きな文字が刻まれている。


 HORIZON


 ホライズン。


 副指令が呟く。


 「……ホライズン」


 博士が頷く。


 「我々に残された、最後の方舟です」


〇ホライズン・格納庫


 護と未来も、その巨大さに言葉を失っていた。


 護が呟く。


 「……こんなものを作っていたのか」


 未来が艦を見上げる。


 「これで……どこへ行くの?」


 その問いに、


 副指令が答える。


 「月です」


 全員が振り返る。


 副指令は静かに前を向く。


 「地球には、もうガーディアンの拠点はありません」


 「だからこそ――」


 窓の向こう。


 夜空に浮かぶ月。


 「私たちは、月へ行きます」


〇ホライズン・発進


 巨大戦艦のエンジンが一斉に点火する。


 轟音。


 大地が震える。


 ホライズンがゆっくりと浮上する。


 そして――


 一気に大空へ飛び立つ。


 雲を突き抜ける。


 大気圏を突破する。


 地球が遠ざかっていく。


 護と未来が窓から青い地球を見る。


 護が小さく呟く。


 「……戻ってこよう」


 未来が頷く。


 「うん」


 そして二人は、


 前方を見る。


 そこには、


 大きく輝く月があった。


 ホライズンは、


 その月へ向かって進んでいく

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