第1話 光の継承者
朝日が街を照らしていた。
通勤する会社員。
犬の散歩をする老人。
学校へ向かう子供たち。
いつもと変わらない朝。
平和な一日の始まりだった。
その街角にあるコンビニエンスストア。
自動ドアが開き、電子音が鳴る。
「いらっしゃいませー……」
だが、その声にはやる気の欠片もなかった。
レジに立っている青年――神代護は眠そうな顔で欠伸を噛み殺した。
「護ぉ!」
奥から店長の怒鳴り声が飛んでくる。
「お前なぁ! もう少し元気よく接客できんのか!」
「やってますよ……」
「全然やっとらん!」
護は面倒臭そうに棚の商品を整えながら小さくため息をついた。
高校を卒業して数年。
特にやりたいこともない。
将来の夢もない。
毎日を何となく生きている。
そんな自分に慣れてしまっていた。
「若いんだからもっと夢を持て、夢を!」
店長は勝手なことを言う。
護は苦笑した。
「夢なんて、そう簡単に見つかりませんよ」
「それを探すのがお前ら若者の仕事だろうが」
「はぁ……」
護は曖昧に返事をした。
店長の説教はいつものことだった。
その時だった。
店内のテレビからニュースが流れる。
『本日、EAAは新たな宇宙開発計画を発表しました――』
画面には巨大な空中基地アークの映像。
最新鋭の航空機。
そして世界中から集められた専門家たち。
人類の未来を担う組織――EAA。
護は一瞬だけ画面を見る。
だが興味は続かなかった。
「宇宙ねぇ……」
自分には関係のない世界だった。
そう思っていた。
――この時までは。
◇
同じ頃。
街の反対側にある保育園。
「みんなー! 走っちゃだめー!」
元気な声が園庭に響く。
保育士の月城未来は園児たちを追いかけながら笑っていた。
「未来せんせー!」
「はいはい、どうしたの?」
「みてー!」
男の子が一生懸命描いた絵を見せる。
未来はしゃがみ込み、目線を合わせた。
「わぁ! 上手!」
「ほんと!?」
「本当だよ!」
その言葉に子供は満面の笑みを浮かべた。
未来もつられて笑う。
誰かの笑顔を見ることが好きだった。
誰かを元気にすることが好きだった。
だから保育士になった。
園児たちに囲まれながら未来は空を見上げる。
どこまでも青い空。
雲ひとつない快晴。
「今日も良い天気だね」
そう呟いた瞬間だった。
不意に胸騒ぎがした。
理由は分からない。
だが、どこか遠くで何かが始まろうとしている。
そんな予感だった。
◇
宇宙。
静寂に包まれた漆黒の空間を一つの光が進んでいた。
流星にも見える。
だが、それは隕石ではなかった。
その内部には生命反応が存在していた。
そして光は地球へ向かって落下していく。
誰にも知られることなく。
ゆっくりと。
確実に。
まるで何かに導かれるように――。




