バズっ太郎、反撃を開始する ~逆転劇は仲間と共に~
バズっ太郎、ラストの物語です。どうか、最後まで見届けていただけると幸いです。
深呼吸して、おちついて、改めてバズっ太郎はパソコンと向き合います。先程との違いは、今度はお供達も隣にいるということです。
赤鬼『あ、またきた。泣いてね?目が真っ赤ですよw』
青鬼『他の3人もいないけど、1人で大丈夫でちゅか?』
黄鬼『やめなよー、子供相手にー。ごめんね?でも、君もこれからは気を付けやきゃダメだよ?』
この神経を逆撫でする手腕は本当に見事だと思いながら、バズっ太郎は自分の伝えるべきコメントを打ち込みます。
お供が隣にいてくれてよかった。1人だと、また冷静でいられたかは自信がなかった。
バズっ太郎『はい、私はバズっ太郎です。ここにいる鬼の皆さんを開示請求したところ、皆さんの名前や住所がわかったのでここにいます。皆さんは、こちらが送付した意見照会書についても無視をされた為、あとはどのような裁判で決着していくかを選ぶ段階であるということをご留意ください。』
赤鬼『あー、あれね、なんか来てた気がするけどトイレットペーパーがきれてたから、ちょうど使ったわwまた送っといてw』
青鬼『赤鬼はきたねーな。大丈夫、俺はちゃんと焼きいもの燃料に使ったぞ。』
黄鬼『やめなさいったら!本当に、でもごめんね?うちも子供が落書きに使っちゃってもうどうしようもないのよ。』
黒鬼『そういうことらしいわ。当然、俺もそんなものに付き合う気はないから。』
バズっ太郎『そうですか、わかりました。』
バズっ太郎はログアウトしました。おそらく、パソコンの向こうで鬼達は勝ち誇ったように笑っているでしょう。
バズっ太郎は部屋を出ました。
このネットカフェを利用している客達が中にいるであろう長屋エリアが目の前には広がっています。
長屋エリアだけでも非常に広大なエリアです。しかし、それらは1つの事実を示します。
鬼ヶ島サーバーは鬼ヶ島限定。
鬼ヶ島とは1つのネットカフェ鬼ヶ島のことである。
ネットカフェ鬼ヶ島の部屋は、暮らせるほどに十分なスペースのある長屋形式である。
つまり、
このエリアのどこかにあの鬼達がいる
バズっ太郎は大きく深呼吸しました。
バズっ太郎は常人より強い肉体を持ちます。それは、何も腕力だけではありません。
肺活量や、腹筋だって強いのです。
バズっ太郎「悪質な誹謗中傷や、加害予告などのコメントで開示請求が認められたということは!今後は刑事裁判による実刑か!民事裁判による示談ということです!私は!訴えを撤回しない!示談するというのなら!正式な書面のもと、謝罪文とその公開の同意!こちらの指定するプラットホームへの謝罪コメント!示談金を用意すること!詳細は弁護士から書面で届きます!なお、これを無視した場合、刑事罰を受けることも十二分にあり得ること、どうか強くご留意を!」
そうよく通る、はっきりとした声でバズっ太郎は叫びました。
長屋のあちこちからざわざわどよどよと動揺の気配が出てきます。
それはそうでしょう、開示請求が通ってる例の鬼達以外にもおじいさんとおばあさんを荒らしたコメントはあったし、現在進行形で開示請求を進めてるものもある。
この中に、そいつらがいる可能性は十分あり得ました。
バズっ太郎「さぁ、帰ろう。」
言いたいこともちゃんと言ってすっきりしたので、バズっ太郎はお供に声をかけました。
帰路につこうと、長屋エリアを歩いてる途中で
女「ま、待って!」
子供の手を引く女がバズっ太郎に声をかけてきました。
女「ごめんなさい!私は…あの、他のメンバーの空気に合わせてて、ノリで、言っちゃっただけで…子供がいるんです!お金とか…刑事罰とか…無理です!」
バズっ太郎は歩き進みます。この島でやるべきことは、もう終わってるからです。
女「あの!この手紙!出します!出しますから!だから、主人には言わないで!」
意見照会書でしょうが、ずいぶんしわくちゃです。
バズっ太郎「それの締めきりはとっくに過ぎてるので無意味ですよ。」
更に、中学生くらいの男子が出てきました。背丈はバズっ太郎と変わらないくらいです。
男子「な、なんなんだよ顔真っ赤にしてさぁ!あんなの!ネットの落書きじゃん!真に受けて馬鹿じゃないの!」
今回の開示請求をした名前に、子供っぽい名前はなかったように思います。
つまり、あの開示請求をした内のだれかの子供です。
バズっ太郎「意見照会書は、君のご両親のどちらか宛てだったはずだけど、君がやったなら、ご両親はこっちからの手紙見なかったの?」
男子「あ、あんなの俺が先にポストから見つけて隠したんだよ!俺が気付かなかったら!どうするつもりだったんだ!」
バズっ太郎「それは…むしろ、手紙に気付くのが親の方がよかったと僕は思うな。まぁ、今後のことは、さっきも言った通り弁護士から通知がいくから、隠しちゃダメだよ。それに、君がそういうことするなら、確実にご両親に通知が行く対策とかすべきか、僕も弁護士と相談するからそのつもりで。」
更に、もう1人、今度はだらしない服装をした中年男性でした。
中年「残念でしたー!俺は!生活保護なの!俺からとれるものなんて、何もないの!無駄な労力と時間とお金使っちゃったねぇ!」
バズっ太郎「そんな人がいることもわかってます。お金がないからって、責任が消えるわけじゃないですよ。では。」
バズっ太郎はそのまま去っていきます。
1人が出てきたら、2人目が出てきて、2人が出てきたら3人目、ネットでは強い言葉を言っても、不安に勝てなくなったのでしょう。
彼らは今、ネットでの言動が自分達の現実に迫ってきてる恐怖を肌で感じているのです。
泣いて許しを乞い、虚勢をはり、弱者アピールで相手を煽る、そんな彼らは最早、鬼には見えませんでした。
どこにでもいる、まるで理不尽な不幸に嘆き、苦しんでいる一般人でした。
そして、三者三様の様子で、その理不尽な不幸を持ってきたバズっ太郎の背中を見つめています。
バズっ太郎は振り返りません。ここで振り返ると、罪悪感がわきそうだから、彼らを許したくなりそうだから。
しかし、ここで彼らを許すのは、間違ってるとわかるから、振り返りません。
その3人とバズっ太郎達の様子を見ていたのか、バズっ太郎の進行方向に青年が立っています。身なりがきちんとしていて、しっかりしてそうな青年です。
バズっ太郎は、その青年を一瞥して、すれ違います。
青年「けっ!人の生活かき回して楽しいかよ!外道の鬼が!」
そう吐き捨てて青年は長屋に引っ込みました。
拳を握り、黙ってバズっ太郎は帰路につきます。
犬が足元に寄り添います。
雉が肩にとまります。
猿が背中にのってきます。
重たいし、歩きづらいけど、お供がいて、本当によかったとバズっ太郎は思いました。
門の前につきました。内側からは自動で開くみたいでした。
しかし、出ていく途中で阿吽像から呼び止められました。
阿吽像「お前は今、鬼ヶ島から出てきたな。お前は鬼なのか。」
もう、被り物はつけてないけど、バズっ太郎はまっすぐ阿吽像を見て
バズっ太郎「そう、きっと、鬼なんだ」
そう答えました。
阿吽像「そうか」
像はそれだけ答えました。
帰りには、来た時と同じ船頭が船を構えて待っていました。船頭は素顔のバズっ太郎一行を見て
船頭「ひひ、おやおや素顔で鬼ヶ島から出てくるとはね。」
バズっ太郎「げ。ぼ、僕たちはもう帰るだけだ。まさか帰り道でも被り物をしろといわないだろうな。」
船頭「あの被り物は、自分のことを鬼だと思ってない奴のためのもんだぁ。お前らには必要ねぇだろ。」
ヒヒヒと、相変わらず嫌な、値踏みをするような目線で船頭はバズっ太郎を船にのせました。
こうして、バズっ太郎達はまた、おじいさんとおばあさんの家を目指して旅を続けます。
呆け者絵札のお礼を少年に伝え、薬師の畑を手伝いました。
タカの卵は無事孵化して、子供達も留守番できているようです。
子犬は登録者を順調に伸ばしていますが、最近は性格の悪さがちょくちょくばれはじめて炎上もしてるようです。
これまでの旅でであった人にお礼を言いながら、寄り道していく旅は、バズっ太郎がなんの気兼ねもなく心から楽しい旅になりました。
そして、その帰り道の旅の途中、弁護士から連絡がありました。
鬼達4人全員が示談に応じたそうです。示談金も支払いが確認できたので振り込みをご確認くださいとのことでした。
こうして、バズっ太郎はおじいさんとおばあさんの元へ、非課税の示談金を持ち帰り、自慢の3匹の友を紹介して、幸せの一瞬を噛みしめ、苦難の数年を耐え抜き、苦難すらも日常となる平穏な、どこにでもある、誰にでもある、しかし、彼らだけの人生を誠実に全うしましたとさ。
おしまい。
ここまでご覧いただき、ありがとうございました。心から感謝申し上げます。
書きためていたとはいえ、初めての小説投稿を最後まで完結できたことはとても嬉しいです。もしよければ、感想、ご意見ください。
これからも、また作品投稿してまいりますので、今後ともよろしくお願いいたします。




