63話
数日間、十八階層での周回は完全に安定していた。
暴れ軍鶏の突進にも、もはや脅威はない。
「来るよ」
その一言で全てが動く。
兎見丸が受け止め、
辰見が撃ち抜き、
巳未が削り切る。
流れは淀みなく、無駄もない。
「……また強くなったね」
戦闘後、巳未の変化に気づく。
習得したのは【貫通突き】。
これまでの突きとは違う。
“通す”ための一撃。
次の戦闘で、その効果はすぐに現れた。
ガンッ――ではなく、
ズッ、と沈み込む感触。
「……効いてる」
装甲の硬い暴れ軍鶏にも、確実にダメージが通る。
巳未は完全に、前線の決定打になり始めていた。
そして、ある戦闘の後――
「……これ」
新たに表示されたスキルに、美々は目を細める。
【陣地化】
試しに発動する。
足元を中心に、空気が変わるような感覚。
見えない境界が広がる。
「……強化、されてる?」
すぐに違いは現れた。
土嚢の壁。
逆茂木。
それらの耐久が、明らかに上がっている。
突進を受けても崩れにくい。
削れ方も緩やかだ。
「これだけでも十分だけど……」
詳細を確認して、美々は言葉を止める。
「……プリセット?」
半信半疑で、防御陣地の配置を登録する。
いつもの形。
侵入経路。
壁の厚み。
逆茂木の角度。
すべてを記録して――
「……発動」
次の瞬間。
インベントリ内の素材が消費され、
一瞬で防御陣地が完成した。
「……は?」
思わず、声が漏れる。
今まで時間をかけて作っていたものが、
一瞬で“再現”された。
「……これ、ズルいでしょ」
小さく笑う。
準備時間が消えた。
それはつまり――
「戦闘時間が、増える」
これまで、防御陣地の構築に割いていた時間。
それがそのまま、狩りに回せる。
さらに――
「壊れにくい」
【陣地化】による強化で、消耗も激減している。
結果として、
継戦能力が大きく跳ね上がった。
「……いけるね、これ」
次の周回。
お香を焚く。
集まる暴れ軍鶏。
突進。
衝突。
だが――
崩れない。
止まる。
削る。
倒す。
その一連が、以前よりも速く、長く、安定して回る。
必要ならその場で陣地を再構築。
崩れる前に作り直す。
戦場そのものを支配している感覚。
「……もっと呼べるね」
美々は静かに呟く。
もう“耐える狩り”ではない。
これは――
「蹂躙だ」
お香の煙が揺れる中、
次々と突っ込んでくる暴れ軍鶏を、
変わらぬ布陣で、ただ処理していく。
兎見丸が止め、
辰見が射抜き、
巳未が貫く。
そして美々は――
戦場を“作り”、支配する。
より長く。
より多く。
より効率的に。
十八階層は、もはや“狩場”へと変わっていた。




