53、新しい国
ガーランド公爵とタングストン侯爵の造った国は『セントバーバラ国』と命名された。
そして初代国王はディヴィット・ガーランド つまりアシェリの父だ。
王太子としてステファンがたった。
本来であればタングストン侯爵家の息子などもその立場に立てたが、タングストン侯爵は頑なに拒否し国防大臣の任に就いた。そしてタングストン家も公爵とし王族とした。実際問題スターチス国を影で支えていたのはガーランド公爵だったので、特に揉めることもなく皆納得した。
ただガーランド公爵とタングストン侯爵の話し合いの中で、
『アシェリ嬢にはかつて殺された私の妹バーバラの面影を見ている。私はアシェリ嬢にはバーバラの分まで幸せに長生きて欲しい、あの子のしたい事ができる様にその手に邪魔できない身分を与えてやりたかった』と話し、納得したガーランド公爵が引き受けた形だ。
ガーランド公爵領は広大で、主たる街は王都以上に発展していた為、特に困ることもなかったのだが、タングストン侯爵とガーランド公爵に与した者たちの領地は続いている訳ではなかったため、扱いに困った。しかもガーランド公爵領に移住を希望する民も多く、流石に放置も出来ない。そこで丁度更地になっているムージマハル国だった土地に目をつけた。
タングストン侯爵領とランバード侯爵領から国境となっていた壁を崩し、勝手に区画整理し、上下水道を通し、シリウスとヨミの力を借りて土地を開拓し植物を一気に育て畑や川や湖、森や林や用水路を造り、そこに離れた領地の屋敷を転移で移してしまった。
元々ムージマハル国は乾燥した暑い国ではあった、森や林や湖などの自然が少ない為、精霊などが住みにくい環境だった、つまり人間より精霊が住みやすい環境を先に整えた。
そこに人間が住む屋敷や仕事のタネを仕込んだ。精霊が住みやすい環境を作ったことで、水をたたえた作物がよく実る土地へと変貌した。
あっという間にセントバーバラ国が出来上がっていく。
住環境だけではない。学校も作った、平民には以前と同じように集会場を解放し、専門的な事を学びたい者用に平民の学校も調整中だ。セレニテを併設した病院も作った。
行政に関してもガーランド公爵が支援してきた者たちがスターチス国でも活躍していた、実務経験者のその者たちが、すぐにセントバーバラ国でも仕事に取り掛かる、しかもガーランド国王陛下は以前の身分を無視して、能力に見合った身分を与え、能力で要職につけた。これもスターチス国などであれば多くの高位貴族が挙って反対し実働させるまでに多くの時間を要した事だろう。だが今、この国はガーランド公爵家に拾われ衣食住に教育を与えられ、才能を見出された者たちが多い。その恩に報いるべく陰日向で働きたいと思っている、ガーランド国王陛下に反対する筈もなかった。タングストン侯爵とガーランド公爵についてきた信奉者である貴族たちも、圧倒的な手腕に舌を巻き異を唱える事はなかった。
それぞれがそれぞれのポジションで能力を発揮し団結し皆で国を造っていく。
新しい息吹は、火種が大きくなる様に周りを巻き込んで活力に溢れていた。誰もが理想を胸に夢中になっていた。
その中でアシェリも大活躍をしていた。今は王女と言う身分を手に入れた、もうアレクシス王子と婚約し悪役令嬢となり殺される未来は無くなった。目立たない様におどおどする必要も無くなった。今は胸を張ってセルティスの横に並び立つ。
この国の為にアシェリも自分に出来ることを積極的に取り組んだ。
皆は幽霊令嬢がこんなにもカリスマ性のある美しい女性と知って驚愕していた。
しかも上下水道や区画整備に平民の識字率向上や最先端の市民用図書館など、ガーランド公爵領にその能力を遺憾なく発揮して貢献していたことを知って驚きを隠せなかった。それらを知るとアシェリ王女も大人気となった。
衰退するスターチス国を横目に目覚ましい発展を遂げるセントバーバラ国、益々移住者を希望する者が後をたたない。ムージマハル国の者たちには悪いが今のセントバーバラ国には人が住む場所に、多くの民を食べさせていくための食糧が必要なのだ。だからバンバン国土を広げていっている。そこにはタングストン公爵が大活躍した。
スターチス国では何もかもが上手くいかない。
セントバーバラ国に移住してもぬけの殻になり、国軍が大幅に減り国力の弱った地に進軍して来る国に対応しなければならなかったり、食糧も金銭もガーランド公爵が補ってくれていたものがなくなり、支払いが出来なかったり、この時期に現れる魔獣討伐などはタングストン侯爵が取り仕切ってくれていたが、国王陛下は『その通りにせよ』と言うだけで把握はしていなかった為、全てが後手に回り、人々の不満が膨れ上がり、上手く対処出来ない担当者に国王陛下の不満も爆発し当たり散らされていた。
王宮の彼方此方で言い争いが絶えない、雰囲気は最悪だった。
「タングストン侯爵がいればあの程度の兵など蹴散らし、国内に侵入させることなどないのに」
「全くですな、我が国の軍事大臣は何をしているのだ!」
「陛下に取り入るばかりで仕事は鈍くて仕方ない。大した成果もないのにいきなり軍事大臣となり、連日パーティー三昧という話ですよ」
「そう言えば、『この酒を飲んで忠誠を誓え!』などとやって飲んだくれてるって話も」
「この国はどうなるのでしょうな…」
「そう言えば、財務大臣に任命されたダストン卿の話は聞きましたかな?」
「あーあーあーアレですか。財務局に所属していたから出来るだろう、と財務大臣に任命されて1週間で金を持ち逃げして行方不明だとか」
「クーゲル公爵の外戚でダストン伯爵の次男だとかで、持ち逃げした金の補填もされていないとか…。今やクーゲル公爵の威を借る狐…いや輩が横行し何でもありとか…。はぁー、こうして見てもガーランド公爵とは素晴らしい方だったのですな。絶大な権力と財力を欲に使わず国の発展、民のために使っておられた。惜しい方がいなくなってしまったものだ」
「王族の浪費癖にも困ったものです。もう金を出してくれる人間はいないと言うのに、王妃陛下は自分よりクーゲル公爵夫人が大きな宝石をつけていると癇癪を起こして大騒ぎしたとか…。全く世の中が分かっていない」
「ガーランド公爵はこれまで王家の横暴にじっと耐えてこられたのに…」
「されどあのアシェリ嬢に対する仕打ちは酷いものでしたしな」
「ガーランド公爵のご令嬢を…、陛下は物の価値をご存知ではないらしい」
「全くです。ガーランド公爵を怒らせてはならぬものを…、陛下も普段ガーランド公爵に任せきりでご自分で考えないからこんなことに」
「やはりあのウィリアム王子の弟と言うところか」
「この国の王族はいつも重要な人物を見誤る」
「この国はお終いでしょうな」
「少し長く生きすぎましたな」
こんな会話がそこここでされているため、陛下の耳にも必然的に入っていた。
ただでさえ機嫌が悪いのに更に悪くなる。
「誰か、生意気なディヴィット・ガーランド、アシェリ・ガーランド…違うかアシェリ・スタッドを殺して参れ。
不敬にも王家との縁を拒みこの様な事態に陥らせたのは、全てはあの男と小娘のせいだ。
ほれ、そこの者王命である、ディヴィット・ガーランドとアシェリ・スタッドの首を持って参れ! 持ってきた者には『将軍』の職をやるぞ? ほら、サッサと行ってこい!!」
流石に兵士たちもこの馬鹿げた命令に尻込みする。
まともな者であればガーランド公爵の言い分が間違っているとは思えなからだ。
それに向こうを守護しているのはタングストン侯爵率いる精鋭軍だ、太刀打ちできるとはとても思えない。陛下とは目を合わせない様に視線を落とす。
「おい、聞いておるのか? 早く! 早く行くのだー!!」
ピシピシピシと鳴る、音の方向を目で追うと壁にヒビが入っている。
「ん? 何だ?」
ガタガタと室内にあるものが震えている。
「地震か?」
そんな顔で辺りを見ていると、空間が切り裂かれ出て来たのはデーモンだった。
「お前はこの国の災いだな、お前の様な頭の悪い者に人の上に立つ資格はない、死ね」
右手で国王陛下の頭を鷲掴みにするとそのまま握りつぶした。
国王陛下も周りにいた者も何も出来ず、一言も話す事が出来なかった。
何が起きたか理解出来なかったのだ。
ただ茫然と信じ難い光景を見ていた。
「全くくだらない人間が多すぎる」
そう言い残すとまた引き裂いた空間の中へ帰っていった。
「「「う、うぅぅぅぅぅわぁぁぁぁぁぁ!! た、助けてくれー!!」」」
そう言ったがそこにはもう何もいなかった。
全員が助かった事に腰を抜かしてへたり込んだ。人によっては気を失ったものもいる。
誰もが動けずにいた、そこでやっと何が起きたか思い返した。
空間を割き出て来たのは悪魔…矮小なる人間がどうにか出来る存在ではなかった。
呆然としながら目の前の頭の潰れた国王を見た。
ここにタングストン侯爵がいたとして何か出来ただろうか?
アレは何だったのか、何故陛下は殺されたのか?
「失礼致します! ご報告がございます!」
部屋に入って来た男の絶叫でこの事件が露見することになった。
アレクシス王子殿下にペトローシス王子殿下、それに王妃陛下に側妃もそこに集まった。
「何があったか説明してくれ」
国王陛下をここにいる全員で嬲り殺しにしたのか、見殺しにしたのか見極める必要があった。本来ならば1人1人聴取するところだが、あまりに怯えが酷く言葉を発せられない者もいたので、この場にいた全員一緒に現場検証となった。口裏を合わせていないか嘘がないかこちらが判断するしかなかった。
「あー! 陛下! 陛下!! 何故、何故この様なことになったのですか!? お前たちは何をしていたの!! あ゛あ゛あ゛―!!!」
「説明してくれ」
「はっ、……陛下はここ最近城内で広がる噂に苛立っておられました」
「噂? ああ、アレか。それで?」
「陛下はその原因の全てはガーランド公爵とアシェリ・スタッドにあるとお考えになり…」
「はっ! 何を馬鹿な…、彼女に何の責任があると言うのだ!?」
「そのー、アレクシス王子殿下と婚約してればガーランド公爵がこの様な暴挙には出なかった、全てはあの小娘のせいだと仰られて…ガーランド公爵とアシェリ・スタッドの首を持ってこいと命令を下されました」
「はぁぁぁ!? 狂っているのか!? 誰も実行に移していないだろうな!!」
「アレクシス、言われてみればその通りでは? あの娘がサッサと王族に名を連ねていれば!この様なことにならなかったかも知れないわ!」
「違います! そうさせてしまったのは私たちで彼女のせいではない! そしてこの事態を招いたのは陛下です。一公爵令嬢に全ての責任を負わせるなど間違っています!」
その光景を見ていた者たちは小刻みにうんうんと首を縦に振り肯定している。
「その直後空間が切り裂かれ…デーモンの姿をしたモノが出てきて陛下の頭を鷲掴みし去っていきました」
「デーモンだなんてあり得ないわ。この中にガーランド公爵家の者が紛れている、そういうことでしょう? さあ、誰なの! 言わなければ拷問を与えるわよ!」
「止めてください! ここにいる者たちは恐らく誰も嘘をついてなどいない! 少し黙ってください!!」
「何ですって!? 何を考えているの? 最近のお前はクーゲル公爵の娘と婚約を破棄したいなどと言い出すし、まさか! これもあなたが仕組んだ事ではないでしょうね!!」
「くだらない! そのデーモンは何かを言っていたか?」
「陛下がガーランド公爵とアシェリ・スタッドの殺害命令を下すと現れ『お前はこの国の災いだな、お前の様な頭の悪い者に人の上に立つ資格はない、死ね』と」
「何ですって! ではあの小娘の手先なのではないの!? やはり陛下が仰った通りあの小娘が元凶なのよ! 今すぐ陛下のご命令の通り討伐せねば! すぐに兵を送り! 痛い!!」
アレクシスが母を殴り飛ばしていた。
「いい加減現実を見てください!この国はセントバーバラ国の防御も突破できないし、仮に挙兵すれば半日もかからず攻め落とされます。向こうはこちらを熟知しているのですから。
彼方がこちらに攻め込まないのは単に条約を守っているだけに過ぎません! その気になれば我が国などすぐに滅ぼせるのです! 父上といい母上といい過去に妄執するのはおやめ下さい! いい加減現実を直視なさってください!
味方であればあれほど心強く信頼出来たものを敵に回してしまったのですから! 我々は今後セントバーバラ国の顔色を伺いながら生きていくしか術はないのです!!」
「ふざけないで!! アレクシス…お前はまだ即位していない、まだ身分は第1王子です。
わたくしはこの国 スターチス国の王妃として命令します。今すぐにアシェリ・スタッド、ディヴィット・ガーランド、ランドール・タングストンの首を持って参れ!!」
「馬鹿な! 誰も聞く必要はない!」
そして悪夢再び。
空間を切り裂き現れたデーモン。
「ああ、ここにもゴミ虫がいた。お前はデーモンの姿が気に入らなかったのだったか」
デーモンの姿が王妃の姿に変わった。
王妃は目の前に自分の姿をしたモノに恐怖ではなく怒りをぶつけた。
「お前 わたくしの真似をするなど不敬だ!捕らえよ!」
『お前 わたくしの真似をするなど不敬だ!捕らえよ!』
「おのれ…! 今すぐこの者の首を斬れ!」
『おのれ! 今すぐこの者の首を切り離すぞ!』
「貴様、アシェリ・スタッドの手の者か? ふざけた真似をしているな、今すぐあの小娘の命を奪ってこい!」
『あはははは! トコトン馬鹿なのだな! お前たち如きであの娘の結界魔法をどう破る? 口では何とでも言えようが手段があるまい、馬鹿が』
「ほら見ろ! そなたはあの小娘の手先と暴露した。あの小娘が陛下を弑逆したのだ! これは謀略だ! 条約を破ったのは向こうだ!!」
『あー煩い。この間も殺戮を繰り返すくだらない男がいる国を滅ぼしたが、この国も残すに値しないゴミ虫しかいない。面倒だな、この国ごと滅ぼすか?』
「お待ち下さい! この国には多くの者がおります。母のせいで多くの命を散らすわけにはまいりません! お望みであれば私がこの手で処分致します、ですから! この国を滅ぼすことだけはお赦し下さい!!」
床に頭を擦り付けて謝罪する。
「おのれアレクシス! 何を言うのだ!! わたくしはあの者たちに屈しはしない! 必ずやあの小娘をこの手で殺してやる!」
エリザベート王妃の肩に細い矢が突き刺さる。
『無知とは罪だな。アシェリと言う者は女神様の加護を受けておる、故に何人にも害することはできない、それだけだ。女神様のオモチャをゴミ虫如きが…!そうだ、お前から身分を奪ったら何が残るのだろうな? いや、見た目もお前の嫌いなゴミ虫にしてやろう、そうだな、寿命も定めてやろう…3日はどうだ? 醜いゴミ虫として3日の命。せいぜい踏み潰されぬ様生きるが良い』
エリザベート王妃陛下の体は目の前でグロテスクなイボイボの芋虫に変わりその体には小さくなった矢が刺さっている。刺さった箇所からは紫色の液体が流れ出している。
エリザベート王妃陛下の姿をした者は鏡を出した。
『ほら、これが今のお前の姿だ。あははは!心と同じで醜いな、人に嫌われる容貌を作って見た。どうだ? お前ですらすぐ殺したくなるだろう? お前の寿命は3日だが、その前に誰かに踏み潰されるかもな。あははは そうだ! ここに鳥を召喚してやろうか? ノロマだとすぐに鳥の腹の中だぞ? ほーれ! 鳥だ! 逃げろ! あはははは』
「きゃーーー!! や、やめて頂戴!!」
芋虫から王妃の声がする。
鳥が啄む瞬間にアレクシスが手を出し嘴が芋虫を捕らえることはなかった。
『興醒めだなぁ〜』
「お怒りはご尤もです。ですが、その前にこの国を滅ぼさないで頂けるか、お答えが欲しいのです」
『我々の仕事は女神様のお造りなった世界を壊すものを赦さないこと、女神様のご寵愛になるモノを護ることだ』
「承知致しました」
アレクシスはクロテスクな芋虫を手に取った。掌の上で泣いている様であったそれを鳥に翳した、鳥は芋虫めがけて下降し足で掴むとそのまま飛び去り人の手が届かない家具の上に留まると獲物を啄み始めた。
『ふふふ 良かったのか?』
「害虫を駆除したに過ぎません。それではこの国を立て直す必要があるので失礼致します」
その後アレクシスは正式に国王となりクーゲル公爵の手の者で溢れた腐敗した王宮の立て直しを図った。その過程でパトリシア・クーゲル公爵令嬢とは婚約を破棄した。
ペトローシス王子殿下もチェルシー・コークス公爵令嬢と婚約を破棄した。
当然反発したが、謁見の間であった事を知ると、自分たちにも悪魔が来て殺されるのでは?と疑心暗鬼になり思ったほど抵抗しなかった。両家の婚約破棄された令嬢は怒り狂ったが、ある日を境に静かになった。それは部屋に恐ろしい訪問者がいたからとかいなかったからとか、詳しい話は聞くことはできなかった。何故なら声を出すことが出来なくなってしまったからだ。
ペトローシス王弟は兄と共に国の立て直しに尽力した。
大臣など派閥で占めていた名前ばかり私腹を肥やす害虫たちも一新し、新たな体制を作ることに心血を注いだ。
横暴に権力を振りかざす者からは権力を奪った。
爵位もゴッソリ抜けたことにより一新することにし、領地も身分も仕事に見合ったものを与え、古く居座る悪き体制は隠居させた。
8年経ったある日、アレクシス国王陛下はセントバーバラ国を訪れていた。
そして正式に和平を結んだ。
そこで見たアシェリ・スタッドは公爵夫人として王女として国政に深く関与し輝いていた。
セントバーバラ国に入ると人々が楽しそうに暮らし活気に溢れていた。それらはアシェリ夫人の手腕によるものだと知り格の違いを見せつけられた。一歩も二歩も先を行くセントバーバラ国、目指す世界がそこにあり、闘志を燃やす、目指すべき国造りがそこにあるのだ、全てを吸収するつもりで手本とし仲間と共に精進した。
今ではスターチス国にもかつてあった漫画喫茶やドースン商会やセレニテにヴィーナスなどに加え、セントバーバラ国で流行っているサウナやラーメンショップも出来た。どこも連日大賑わいを見せている。
セントバーバラ国は世界でも類をみない識字率の高さ、それも真似したいが、今セントバーバラ国で流行っているのは文化講座? 外国語が習得できたり、学校とは違い専門科目を学ぶことが出来るらしい。その中で漫画講座と言うものが人気を博している。他にも絵本制作講座や植物生育師など変わったものある。
正直そういったものは貴族の余力がある者(高位貴族のご婦人方の見栄)しか今までなら興味を示すことはなかった。画家にしても貴族のパトロンでも作らなければ画材も購入出来ず生活も成り立たない、だからやりたい事のために身を売って金を引き出していた。
だが、そう言ったものをアシェリ夫人が全面的に支援している、その講座に通い教材などは全て用意されている、そして拙いものも展示する場所がある。刺繍にしても子女の嗜み…だが実際は侍女たちの方が腕がいい者がいるなどあるあるだ、そう言った者たちは侍女と言う本業の傍ら主人の命で作っているが、展示場では一つの作品として名前が出て、気に入った作品を購入することが出来る、そしてその売上は作った本人に還元される。それぞれが自分の作品に意地とプライドを持って作り上げている。今や立派なアーティストだ。
動物の世話係りや魔道具や職人と言った者たちは下級層の扱いだが、この国では違う。この国では専門職として身分を保障されている。そして年老いた者は後進の指導という形で世の中に携わっていく。
それもアシェリ夫人が莫大な財産を国民に還元している為に出来ることだ。そうして育った人材は光り輝き、国に還元している。
潤沢な資金があっても誰でもできるわけではない。先見の明があり、投資した資金を捨てる覚悟が無ければ出来ないだろう、恐らく使い物になるのは5%以下かもしれない、回収できない金の投資とは道楽と同じだ。
アレクシス国王がかつて恋した人は自分の手にはあまりある才能を持って自国の民を慈しんでいた。あの日悪魔は言っていた『女神の寵愛、加護を戴く者』と、。彼女は誰かに庇護されなければ生きられない弱い人間ではなかった、弱き者を助け導く者、庇護する側であった。8年以上会っていないが、未だにアシェリへの想いが胸を占めている。アシェリは愛する人であり、尊敬する人。彼女の歩んでいる道は常にアレクシス国王の指針であった。
アシェリ・スタッドは今までにない文化を次々生み出していった。
そして世界で初めて女神様を招待し歌劇を見せた人物でもある。
何より『男と女が子をもうけ生きるもの』と定めた理に世界で、初めて『男と男でも女と女でも愛する者同士が共にいることこそが幸せである』と表立って表明した人物でもある。
『人が人を愛するのにきっと理由は要らないの。人生は短いのですもの、折角愛する者と出逢えたなら共に幸せに生きる道を模索してもいいのではない?』
セントバーバラ国は愛に溢れた国となった。
「セルティ、幼いあの日からずっと傍に居てくれて有難う。今まで好き勝手生きてこられたのはセルティが変わらず傍にいてくれたからよ。心の底から感謝しているわ」
「アーシェ、私の愛しい人。私の方こそ手を掴んで離さないでくれて幸せだったよ。
それにね、このセントバーバラ国はみんなが幸せそうだよ、アーシェが齎した変化がみんなを幸せにしてるんだ。私はアーシェを誇りに思う。それに何よりアーシェは私を1番に幸せにしている、私の方こそ感謝しているよ、愛してるアシェリ」
「うふふ、私の旦那様セルティス 愛しています、永遠に」
晩年、セルティスは子供に仕事を引き継ぐと、どこに行く時もアシェリと行動を共にした。
その仲睦まじい姿は、国民の憧れであった。
余談だが、かつてのムージマハル国とセンダラーハン国は今はセントバーバラ国の一部となっている。ブリースト・ククス・ムージマハルとカラバスク・パーマシーはかつての祖国を見に行った際に何もない事に愕然とした。その際に助けられたのが、アシェリの拠点である屋敷の使用人であった、その縁で働かせて貰っていた。今もそこで働きながら戻ってきたムージマハル国の国民だった者たちを支援しながら生きている。今はガーランド家の使用人扱いだ。
カミラ・グラハム男爵令嬢は気づくことは出来なかったが、カミラの魅了が効くのは相手に魔力を有している者だけであった。王宮を無理やり抜け出したことで魔術師団の者ではなく、魔力のない兵士が逮捕に向かい重犯罪用の地下牢に収監された。それに対し裁判なども特に行われず誰かに知らされることもなかった。万が一操られたら…、と近づくことも忌避された。カミラの声は誰にも届くことはなかった。
そんなある日、牢の前にモフモフのアンゴラ兎がいた。
どうせ、まやかし そう思っていた。
『お前はこのまま死なせる事はできない。苦しんで死ね』
見た目は何も変わっていないが、精神世界で終わりのない死を何度も何度も体験させられていた。狂うことも死ぬこともない世界で地獄を味わっていた。
アシェリ夫人の功績は大きくとても愛された人物だった。とてもお元気でいらしたが、最愛の夫セルティス公爵が80歳でお亡くなりになるとベッドの傍でセルティス様の手を握ってお泣きになりながらそのまま眠るようにして亡くなってしまった、享年78歳だった。その顔はとても穏やかだったと言う。
人々は『アシェリ様は片時もセルティス様の傍を離れたくなかったのね』と言った。
アシェリ・スタッド、バーバラ・タングストン、永山楓は当初の目標『幸せに長生きしたい!』を叶え楽しい人生を送った。楓のオタク知識もだいぶ役に立った、バーバラの知識も大いに役に立った、アシェリの愛される性格も天性のもので非常に役に立った。
振り返ると過酷ではあったが、幸せな人生を歩めたなぁ〜と、人生で関わりのあった全てに感謝した。
おしまい
お付き合い有難うございました。
見直してみると、誤字脱字に意味がわからないところなどお恥ずかしい限りです。
以前聞かれたことがあったので後記させて頂きます。
パトロシス第2王子は王宮内の1室で監禁されていました。頼みの綱の王妃も失態を犯した息子を許さず捨て置かれました。正気に戻ったパトロシス王子は真面目に勉学をして陰ながら兄を支えられればと思っていましたが、使用人たちは、どうせパフォーマンスだとしか受け取らず、食事が部屋に置かれるだけ。待遇改善を偶に訴えたが、揉み消され放置された。次第に食事の数が減り放置され続け弱って行った。両親が殺された頃には部屋で餓死していたが誰にも気づかれることはありませんでした。
ペトローシス第3王子のお母さん ヴィヴィアン第1側妃の行方
パトロシス第2王子の失脚により、ペトローシス第3王子を推すヴィヴィアン側妃側の人間が活気付いた。その中の1部の人間がアレクシス第1王子も含めて王子たる資質がないと攻めたが、メインの支援者の失脚とアレクシス第1王子の実績で、返り討ちにあって遠く離れた離宮に追いやられてしまった。
それから時空を切り裂いて現れた悪魔はヨミです。アシェリの害となる者を陰で始末していました。アシェリが知ると心配するので無関係を装って手を下していました。
皆さま有難うございました!




