50、崩壊の始まり−4
「陛下、俺のねー、妹は! ムージマハル国に嫁いでいったんだ!! それを…虫ケラを殺すみたいに殺しやがって!! お前が死ねばよかったんだ!!」
「そうだ! 何で殺さなきゃいけないんだよ! 皆殺しって!あんたの得意な魔法を試したかっただけなんだろう? あんた子供と一緒だな! 手にしたオモチャを試したくて仕方ない子供と一緒だよ!」
「返せよ! 俺の妹返してくれよ!!」
「家族を返せよ!!」
「うわぁぁぁぁ!!」
襲いかかってくる兵士たち、護衛たちも間に入ったが狭い廊下に集団で襲ってきた味方に上手く対応できなかった。
ああ、ムージマハル国に奴隷に魔法弾を巻きつけて送り込んだ時こう言う気分だったのだな、我々はなんて酷いことをしてきたのだろう。味方に思いきり剣を振れずにいた。
「護衛の者たちは下がれ!」
すぐさま退くと、自分の民である兵士にラウゼス三世陛下は魔法をぶっ放した。もう建前も何もない、容赦なく邪魔者を排除した。それを見たラウゼス三世陛下に反感を持っていた者たちは更に膨れ上がり敵意を剥き出しにして襲い掛かるようになった。
部屋に入っても、今まで自分の護衛についていた者まで突如襲い掛かるようになり、ラウゼス三世陛下は落ち着ける場所もなく眠る事も出来なくなった。
バトラス軍事参謀も同じ敵意を向けられ最初は側近の者に追い出すよう言っていたが、
『アイツらは悪の手先だった、アイツらを殺して神に許しを乞わねば!!』自分の側近だった者まで狙うようになったきた。24時間常に襲われるようになり平穏は無くなった。
考えなければならない事は山積みなのに周りが信用できずに疲労は溜まり疲弊していく。
護衛にもいつ襲われるかと思うと、側に置くことも憚れる。気付けば孤立していた。
一発逆転の一手が必要だと感じた。
魔法を調べるうちに封印していた極大魔法『アーマゲドン』この魔法を完成させるには莫大なエネルギーが必要となる、それは取るに足らない人間の僅かな魔力程度では賄えない。魔力の密度を上げる必要があった。それも当然同時進行で研究させていた。
魔石→魔鉱石→魔ヘマタイトと辿り着いたのだ。
ラウゼス三世陛下が盲信する師匠タシオンはラウゼス三世陛下が知り得ない情報を沢山齎してくれる。まさに神の叡智の如く知りたい事を何でも教えてくれる。
本来 いち魔術師として好きな研究に打ち込み生きていきたかったが、生まれた血筋によりそれは叶わぬ夢となった。だがその魔術師としての才を見出せたのも、王子として生まれたがゆえ、最高の教師に最高の環境で学ぶ事ができたためであった。為政者として学びも魔術師としての学びも睡眠時間を削って懸命に努力し続けた。
そんなある日 魔術の教師たちの能力を超えた。つまり自身が国内最高の魔術師となった。
もっと高みへ! 欲求が沸々と溜まっていった。
そんな時出会ったタシオン、厳重に管理されている研究室にいつの間にかいた。
すぐに警戒し持てる魔法で攻撃したが何も打撃を与える事はできなかった。国内最高の魔術師と言われ得意になっていたが、目の前の存在の足元にも及ばない事に愕然とした。タシオンには本気の攻撃も痛痒をも与えられない。
だが同時に、目の前の男は自分が望む答えを知っていると感じた。そんな自分をタシオンは面白がった。
それ以来タシオンを師匠と仰ぎ研鑽を積んできた。
タシオンは進んで魔法の叡智を教える事はなかった、だが質問された事には何でも答えてくれた、つまり聞き方を変えれば知りたい事を知れた。飄々としていていつも薄ら笑いを浮かべ、何処からともなく現れいつの間にか消えている。不敬な発言も不遜な物言いもタシオンには腹が立たなかった。
この国で唯一 身分を気にせず対等な関係でいられる存在、ただの子供に戻れる時間、凄く充実していて楽しかった。
理論上は、魔力粘度・密度を上げて込める事ができる魔ヘマタイト、この魔ヘマタイトのタネを見つけ出し、魔力を込められるように創り出すのに現在で8年目、タシオンの話では、極大魔法を行使する為には20年位の年月が必要だと言っていたが、順調に成長させている事ができていると思う。それを今こそ使う時が来たと思った。
本当ならタシオンに確認して相談したいこともあったのだが、ここ最近見かけない。
『ちっ、いつもは会いたいと願えばいつの間にか側に来ていたのに、1人でいる時に名を呼んでも来ない、くそっ!』
欲望には際限がなく、一つの目標が達成されると次の目標と更に高く難しい目標を設定した。魔術に関し議論したり仮定で妄想を膨らませ、突飛と思われる発想を実現させるための手段を構築したり、寝ても覚めても誰も実現いや想像だにしない魔法を具現化させるために日々研究に没頭した。国王となり権力と金を手にし、師匠を得る事ができた今、研究は格段に捗るようになった。これまで研究・実験を無数に繰り返し寝る間を惜しんで努力してきた、全ては魔法の叡智をこの手にするため。王宮に残っている魔術師を総動員して満タンではないが密度の濃い魔ヘマタイトを準備し魔法陣を描き極大魔法に臨む。
目標地は大国スターチス!!
集中力を高める、今まで培ってきた能力を最大限に使って目的を達成させる!!
今までにない感触がある。極大魔法アーマゲドンを発動させるには20時間ほどかかる。魔術師たちは円陣を組み、その中心にある魔ヘマタイトに自分たちの魔力を更に送り込み呪文を唱える。魔力が少ない(魔術師としては)者から魔力を消費して倒れていく。それを側仕えたちがポーションを飲ませ介抱する、回復すればまた戻る。ここに集まる魔術師たちも未知なる領域、世界の誰にもなし得なかった事を成し遂げる誇りとここに選ばれたプライドと昂揚感でギラついていた。
外からは危険な魔法に挑む事を非難する声もするが、ここに集まる者たちには聞こえていない。窓や壁などに共鳴してミシミシとヒビが入っていく。
城に勤めている者たちが膨れ上がりバリケードを突破した! 向かった先は今まさに儀式の最中のラウゼス三世陛下のもとへ。
やっとの思いで辿り着いた者たちはそこに見たラウゼス三世陛下たちの狂気にたじろいだ。
持っている武器を投げたり斬りかかったりしたが、魔術師たちは誰もその場から動かない。
もう、ここにいる者たちは人間ではないのかも知れない、人以外のものに魅入られ、人ではなくなってしまった…。 常軌を逸した者たちを目にし、言い知れぬ恐怖でこれ以上何もできなかった、ここから出ていく事を選んだ。
もう少しだ! もう少しだ!! 私が人類が見たこともない魔法を扱うのだ!!
光が膨れ上がりスパークした!!
やった! とうとう成し遂げたのだ! あの仮説は間違っていなかった!!
これが世界最高峰の魔術だ! 魔法だ!!
ドゴーーーーーーーーーン!!!!!
魔術師たちは自分たちの成果に歓喜し、狂気に沸いて達成感で燃え尽きる。
人類が体験した事がない魔法に生きている人間は恐れ慄いた。
遡ること王宮でタングストン侯爵が独立を宣言する前。
アシェリやセルティスが『ラウゼス三世やバトラス軍事参謀の顔がみたい!』と彼らの周りをこっそり嗅ぎ回っていた時、ヨミが反応を見せた。
人化し、手を翳した。
「イテテテテテテテテ!!!」
『お前は何だ?』
「ああ? 何でもいいだろう! いきなり痛てーな!」
イラッとしたヨミは捕まえたモノに容赦なく電撃を加える。
「イテテテテテテテテ!! 痛てーって! 止めろよ! 止めてください!!」
抵抗を見せたが意味がない事が分かると途端に従順になり、格の違いを見せつけられると恭順の意を示した。
『勘の悪いモノは生き残れぬぞ?』
いやーーーん! ヨミったら普段すんごく可愛いのに、何この威厳! めちゃくちゃ魔王っぽい! うふふ ギャップ萌えぇ!
ニマニマしているアシェリを胡乱な目で見るセルティス、アシェリが自分に対し目をキラキラさせているのを得意げになって事を進めるヨミ、ヨミが活躍しているのを苦々しい気持ちで見るシリウス。
『お前はここで何をしている?』
「ワレはここに棲みついている中級魔族のタシオン、この国の王 ラウゼス三世で暇潰しをしておりました」
「あらぁ〜? ならこのタシオンって言う魔族のせいって事?」
「お前が ラウゼス三世陛下に余計な事を言って魔鉱石や魔ヘマタイトに魔力を貯めて使う極大魔法を教えたのか?」
「ああん!? 人間のくせに生意気だな、殺すぞ!!」
セルティスを威嚇するとヨミが指を弾きタシオンの頭が半分吹っ飛んだ。警告もなし。
『頭の悪いモノは生き残れぬぞ?』
「ヒィィィィィィィ!! すんません! すんません!!」
魔族は頭が半分無くなったくらいじゃ死なないらしい、通常30分もしないうちに再生される。だが今回は会話をしながらも自己再生を試みるが再生できない。
『この人間は我らが守護する者たちだ、手を出せば容赦しないよ?』
シリウスも人化して付き従う。シリウスが睨むとタシオンの体から力が抜けて形を保てなくなっていく。
「ヒィィィィィィィ!! お許しください! 二度と手を出したりいたしませんから! その物騒な力を使わないでくださいよ!!」
シリウスは相反する力を持っているのでタシオン程度では相殺できずに、存在を消さられてしまうのだ。
タシオンからどんな研究をしているかなどを詳しく聞いた。
ただの人間にしてはラウゼス三世は、探究心旺盛で物事を突き詰めようとする研究者タイプ、破壊魔法に特化している事は頂けないが、王としての名声よりも自分で考えた理論の実証に夢中だった。タシオンとの時間を持つうちに、思考が魔族よりになったのかもしれない。
その時に魔法陣の目的地を変更する事を思いついた。タシオンにヨミが生み出した見張りをつけて、ラウゼス三世陛下が何かするのを監視し、殺戮を目的とする魔法を行使する時、目的地を書き換えセンダラーハン国内に変更させる。ラウゼス三世陛下が魔法を使えば使うほど国内に魔法弾が降り注ぐのだ。ムージマハル国の人々が感じた恐怖と絶望を体験させることにした。それ故、王宮は最後の目的地とさせた。
ラウゼス三世陛下の魔法陣では破壊した目的地に出向く必要があった、もっと強大な魔力を保有していれば遠隔地からでも実行可能だが魔鉱石に集めた魔力程度では成功しなかったからだ。だがこれもヨミの力でこっそり目的地を変更した、折角苦労してスターチス国に入り込んで魔法を使ったにも拘らず、魔法弾が落とされたのはセンダラーハン国内であった。この攻撃の報告を聞いて1番驚いたのは作った本人ラウゼス三世陛下だっただろう。
何度も自分の目でも部下たちにも確認させても目的地が変わってしまうのだから。
それともう一つ、センダラーハン国内に漫画を持ち込んだ。
1つはラウゼス三世陛下と侍従のBL、 主従逆転の薔薇のラブロマンス!!
そしてもう1つはバトラス軍事参謀の小児性愛!恋愛実録!!厳つい顔の下のはオムツで母の愛に溺れたい系。
ショタはまあ…まあぁいいけどバトラスっちのはやっべー感じだった。
嫌がる子供にオムツ履かせて『一緒におしっこしましょうバブ』とかって、引いたよ!目の前で心のシャッターチャンス パシャパシャはしたけどもさー、四つん這いになって『僕は犬です、舐めさせてください』とかって鳥肌がぶあーーーーーー!ってなった。アレは趣味って言うより病み、病気だよね。しかも夜1人ベッドの上でオムツをして枕相手に『ママ、ママ 今日もお仕事いっぱい頑張りました、褒めてください。ご褒美におっぱいしゃぶらせてください』とか妄想に浸かってた。うっぷ…
ラウゼス三世陛下の恋愛は…熟年夫婦(BL関係だけど)のようで、最後の方は魔術に取り憑かれた旦那を呆れて見ている妻(侍従)の図だった。だけど『疲れて戻ってくるのはお前の胸だけ』『俺が本心を見せられるのはお前だけ』『好きにやればいい、俺だけはお前の味方だ』『お前が俺を癒してくれ』
かーーーー! 一作品なら熱い気持ちで見つめられたが、うちに害なすろくでなしの私生活とかって思うと…絞め殺してやりたくなる。
だってさー! ムージマハル国の私の拠点! どうしてくれんのよ!!
屋敷と店と倉庫は結界張って守ったさ! だ・け・ど! 私のもの以外何もなくなっちゃった!! 拠点になんないじゃん!! 全く余計な事してくれて!!
まあ、そんなんでセンダラーハン国には初めての漫画をバンバン配ってやったわ!
勿論 私の完コピ機能使ってね! 時間もないけど、痕跡を残せないから、チート炸裂! ビラって手もあったけど、ハッキリ言ってセンダラーハン国の識字率なんて知らないし、絵で見るインパクトって違うんだよね〜。文字は文字が読めなければ理解できないけど、絵だと読めなくても理解できちゃう、あら不思議!
それにそっくりの顔! 内容も嘘書いてないし、容易に誰のこと言ってるか理解出来ちゃう、こればら撒いてからの英雄か神かと崇めていたラウゼス三世陛下とバトラス軍事参謀の人気はガタガタ崩れていったね!
いやー、あの反応見るにやっぱり国内で百合と薔薇はまだ早いと確信した。
いい経験になりました あざーす。
セルティスですら、読んだ後『何とも言えない気分だ』と言っていた。内容が衝撃的だったのか、絵でも男同士がパンパンしているのを見て引くのか…、あっ! オムツも汚物も誰でも気持ち悪かったかな? アレ系は普及まではまだまだ遠い道のりだね。
あっ! センダラーハン国滅亡させるならあんなに労力かける必要なかったんじゃね? あ゛あ゛――――、頑張ったのにぃぃ。まあ、完全オリジナルの新しい分野描くキッカケになったからいいか! ?ストーリーはオリジナルって言うより実録 除き魔は見た!か?
そうそう、最後に放ったアーマゲドン! どデカい魔法はセンダラーハン国だけではなくこちらも被害を被ってもおかしくない状況だった。だからセンダラーハン国に結界張ってアーマゲドンを閉じ込めてみました。シリウスたちも手伝ってくれたからセンダラーハン国以外に被害なし! ああ、良かった! 良かった!!
さーーーて、仕上げに行ってみよう!




