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46、報復

カミラ・グラハム男爵令嬢を王宮に召喚した。

カミラは何故自分がここに呼ばれたか全く理解しておらずキョトンとしていた。

そもそもカミラは魔力がなく淑女科に入学している、だから魔術師団とは日頃縁がない、だからここに呼ばれた理由が分からない。


「カミラ・グラハム男爵令嬢、貴女の魔力検査をしたいのだがいいだろうか?」

「はっ? それはどう言う事でしょうか?」

「ここ最近 貴族学園で起きている事を貴女はどう思っている?」

「何のことですか?」

学園のこと? 何で私が呼ばれた? 何を知られているの?


「…マリア・ダラス男爵令嬢を知っているね?」

「…はい」

「彼女の周りでは不可解なことが起きている。そこで我々はマリア嬢に聴取を行った。その結果、貴女の関与を疑っている。例えばマジックアイテムや魔法などだね。

以前の検査では魔力なしの判定が出ているが、後発的に持つ場合もある、ですから貴女の検査をさせて頂きたい」


何で!? マリアは何を話したの? 何で私が疑われている訳!?


「あの…でも 私には魔力なんてありませんし、何かをしたつもりもないですが…、魔力があるとなったらどうなるのですか?」

「そうですね、マリア嬢と同じで急に魔力や魔法が発現すると自分でコントロール出来ない場合が多くあります。ですから一時王宮の魔術師団でお預かりし魔力操作を学んで頂きます」

「それだけですか?」

「それだけとは、どう言う意味ですか?」

「私に何か見つかったら…先程…学園で起きている不可解なことの責任を取らされるのですか?」

「………さぁ? 状況にもよりますからここで明言は出来ません。我々はあくまでも魔力の発現があったかどうか調査するために派遣されているだけですので。学園の方で問題があったのならば、学園側が解決を図るのではないでしょうか」

その困ったのような笑顔は何も知らない顔ではなかった。

「大人って狡いんですね」

「何ですって? すみません、聞こえなかったのでもう一度お願いします」

嘘つけ! 聞こえてるくせに!!


「受けないとどうなるのですか?」

「ふふふ 受けない選択肢はありません。これは国の決定ですし、貴女自身も自分の身に何が起きているのかお知りになりたいでしょう?」

どこまでも笑顔だが目は笑っていない。


「………はい」


検査の結果は当然と言うか、告発の通りカミラには魔力が発現していた、そして魅了とテレパシーのスキルがあった。だが、少し魔力の色が通常とは違っていた。

通常は魅了はピンク色をしている、だがカミラの色はピンクと言うより赤と黒がマーブル状に入り混じっていた。テレパシーの色も単色ではなく黄色と深緑のマーブル状、今までにはない色に困惑し、検査に当たった者たちは正直禍々しくてドン引きしている。


カミラは自分に魔法が使えるとは思っていない。

だから今回の検査をしても何も変わらないと思っていた。学園の皆がマリアを好きになったのはカミラがせっせとアイテムゲットに勤しんだ結果だと思っているからだ。

カップケーキは渡した人物と渡された相手、関係性は2人の間でしか通用しないアイテムだ。

確実だが直接渡すことが出来なければ成り立たない。

アレクシスとマリアの関係がもっと親密であれば、『作ってみたの食べて、口に合うと良いんだけど』と警戒もなく受け取ってもらえるが、今は護衛に渡すことも出来ない。だからその前に突破口が必要だった。

そこで20人に親切にして開いた『よろず屋』、その中でこの現状にピッタリなアイテムを探した。そこで見つけたのが『魅惑の香水』だ。カップケーキは確実に相手の言う事を聞くようになるけど、香水は匂いの人物に好意的になるだけだった。これは親切ポイント15人、カップケーキより少なくて済む、しかも大人数に効果があるので その時は香水を購入し、次にカップケーキを購入。地道にマリアとアレクシスを恋に落ちる為に活動していた。


つまりカミラは魔法ではなくアイテムの効果だと思っている、だから自分を調べることは無意味だと思っていた。

香水の効果ではマリアの熱狂的な信者にはなり得なかったのだが、カミラは気づいていなかった。


「カミラ嬢、やはり貴女には魔力が発現している。だが、スキルについては今までにないモノなので何かが断定できない。よってこれより暫くの間王宮で過ごして、魔力操作を学んで頂きたいと思う。学園にはこちらから連絡するが、不都合はあるかな?」


はっ!? 私に魔力 魔法が使えるって言うの? 嘘っ!

待ってよ? 今までにないスキルって言ってた! 私は何が使えるんだろう?


この少女に『魅了』について告示するのは危険だと判断した。

よって『今までにないスキル』と表現した。だがそれも間違っていたとこの時気づくことはなかった。




ムージマハル国は未曾有の危機を迎えていた。

人間爆弾もさることながら、いつの間にか空には強大魔法の魔法陣が描かれ流星の如く次々落とされる巨大な火の玉、それはマグマのように燃え盛り地上に落ちてくる。落ちた火の玉は業火となりあたり一面を焼け野原と化していく。人々は逃げ惑うが、逃げる場所もなく無惨に死んでいく。人間爆弾はムージマハル国内に魔法陣を描くための突破口でしかなかったのだ。

いつもと同じ小競り合いと高を括っていたが、開戦してみればセンダラーハン国の一方的な蹂躙であった。長年 戦闘狂と呼ばれ、あちこちに戦争を仕掛けて来たのは伊達ではなかった。効率的に敵を殺し屈辱を味合わせるかだけを追求して来ただけはある。今回開発した兵器で世界の均衡を一気に覆すつもりなのだ。


センダラーハン国の ラウゼス三世国王陛下は類稀なる魔術師でもあった。

多くの魔術師を重用し未知なる魔法を幾つも生み出した魔術の天才、そしてその本質は残虐非道、彼に魔術の才を与えたるは人類の滅亡を意味していた。


そしてこの世は魔法がだいぶ廃れ、一部の者しか行使できない状況下、この時ラウゼス三世の率いるセンダラーハン国を止めることは事実上、誰も出来なかったのだ。


ムージマハル国は滅亡までのカウントダウンが始まっていた。

センダラーハン国からの降伏の条件などは何も提示されていない。つまりこの戦争は世界に力を見せつける為、ムージマハル国は丁度いい実験台だったのだ。そして最終目的はスターチス国を手に入れる為だ。ラウゼス三世は舌舐めずりをしながらその時を狙っていた。




アシェリとセルティス、シリウスとヨミは薬を運んでいる馬車の上に転移していた。

うぉぉぉぉぉい!! 落ちるっつーの!!


と思ったが、シリウスたちもちゃんとフォローしていてくれたし、セルティスはすぐにアシェリを腕の中に囲った。


「ねえ、薬ってこの馬車の中だけー?」

「いや、4台走ってるみたいだよ」

「ふーん、じゃあチャチャっとやっちゃうか!」

やっておしまいなさい! ああ、大声で叫びたい、悪役っぽくて…いい!


「頭に中身が漏れてるよ。オッケー 薬は転送しとく」

薬を乗せ急いで帰国したいが、馬車を停める必要が出てきた。まあ既に馬車の中の木箱は空だが、男たちがそれを知る由もない。何故かと言えば、突然黒い靄に包まれて何も見えなくなったからだ。

「おい! なんだよこれ!? 何かが燃えてんのか!? 山火事か?」

「い、いや そんな臭いはしねーけど、こう視界が悪いと急いで進むのは危険だ。ちょっと見えるようになるまで少し待つしかないだろう!」

「おう! くそっ! ついてねーな!」


馬車には運転している者と見張りの者が外の運転席に2人、それから荷台の幌の中に3人いる。薬は木箱の中に詰められている。運転席の見張りの者が荷台にやって来た。

「おい、視界が悪くて進めねーから、少しこのまま待機だ。なんだったら今のうちにションベンして飯食ってても良いぞ」

「ああ、そうか だが急いでんだろう? おい、なんだコレ!? 何も見えねーじゃねーか!!」

「ああ、参った。だがこのまま走るのもヤベーから落ち着くまでここにいる事になった」


「うヒャヒャヒャ!」

「おい、どうした? いきなり笑ったりして気でも狂ったか?」

「腹減ったなー! 腹減った、腹減った、腹減った腹減った、腹減った? 腹?」

「おい、うるせーよ 何言ってやがんだ!」

「母ちゃん!どこだよ? 母ちゃん母ちゃん母ちゃん うわっぁぁぁぁぁぁ!」

「お、おいお前ら何言ってんだよ!? お、おい……行くなよ! 他に男が出来たのか! 子供が出来ただと! ふざけるな!!」

気でも狂ったのか全員が訳のわからないことを口にし始め、泣いたり怒ったり喚いたりしている。


黒い靄はヨミが作り出したもの。

己の中に仕舞い込んだ欲望や、触れて欲しくない傷を思い出させて苦痛を与えるのだ。忘れたフリをして生きてきた者にとって、あの日の傷がありありと現れまた傷を深く抉る、心がバッキバキに折れる。こんな仕事をしているのだ、他人に罪悪感など抱かない者もいる、その者たちは自分たちが行ってきた残虐非道な行いを自分に対し追体験する。どんなに抗おうとしても意識の中では何も出来ない子供のようになって蹂躙されるだけ。必死に逃れたいと願ってもどうにもならない…地獄を彷徨うのだ。故に大抵の者は生きる事を放棄する。


数日後廃人同然になった者たちがゾンビのようにセンダラーハン国の街を歩いている。何をする訳でもなく異様な姿で歩いている。

兵士がやって来て拘束しようとするも近づけない。それに見たこともない得体の知れない男たちが恐ろしくてゾンビのような男たちを遠巻きに見て、後をついていく。

ゾンビたちはクラバル伯爵家へ向かって行く。門番たちはギョッとして剣を持って対抗するが、無駄に俊敏だった。こちらの攻撃は効かないのに向こうはこちらの急所をついてくる。逃げ出すしか出来なかった。

だが放置もできずゾンビたちの後をついて行く。クラバル伯爵邸には野次馬も含めて多くの者が見ていた。

『旦那様〜、旦那様〜! 助けてください〜! 助けてください〜!』

「ヒィィィィィィィ な、なんだお前たちは!? で、で、出て行け!!」

『旦那様のご命令通りスターチス国へ行って参りました』

「な、何を言ってる!? 訳のわからない事を言ってないで出て行け!!

『お前たちが表に出て来てどうするんだ! サッサと帰れ! 目立ってしょうがない!』

お前たちみたいな者たちを私は知らん!!」

クラバル伯爵は必死で取り繕っているが、バベルたちは既に自我がない。ヨミのプログラム通りに動く人形、沢山の証人を作るための道具でしかないのだ。故にクラバル伯爵にいくらバベルが恩を感じていようと今更クラバル伯爵の駒になる事はない。


『失敗してしまいましたぁ〜。クラバル伯爵がバトラス軍事参謀に取り入る為に失敗できない計画だったのに……すみません、すみません!!』

「ば!馬鹿が! 何を言っておるのだ! わ、私には何のことか分からない! 早く! 誰か! この者たちを追い出せ!!」


バベルたちはのそのあと屋敷の中に入って行く。私兵たちも腰が引けて威嚇にもならない威嚇をするが近寄れない。剣も通じない、正に歩く死人。バベルたちは長いロープを持って上へ上へと上がって行く。使用人たちは悲鳴をあげて逃げ出す、クラバル伯爵は「出て行け!」と繰り返すが、やはり近づけない。

そのロープを何に使うつもりだ!?

距離をとってついて行くと最上階に着いたバベルたちは柱や家具に長いロープの端を結びつけた。そしてもう片方の端を自分の首に巻きつけた。窓辺に立つと大声で叫ぶ。

自分たちがクラバル伯爵やバトラス軍事参謀たち高位貴族の手足となり裏でどんな惨たらしい事をしてきたかを。

「一度の失敗で我々は使い捨ての駒のように殺されるのだ!」

そういう時次々窓から飛び降りた。

バベルたち27人が首を吊った状態でもがいている。

「「「「ヒャーーーーーーーーーー!!」」」」

「「「「ギャーーーーーーー!!」」」」

壁にぶら下がった27名はロープから逃れようともがいていたが、段々と抵抗できなくなりダランとぶら下がった。クラバル伯爵は屋敷に中にいたので何が起きているか分かっていなかった。観衆の悲鳴が聞こえ、今度は何が起きたのか、力の入らない足を叱咤し何とか動かし外へ出て、観衆の目の向く方へ視線をやるとバベルたちがぶら下がっている光景が目に入った。

「なっ! 何でこんな!!」


バベルたちはどの道 こんな騒ぎを起こしたことから処分するつもりだった。

だが、こんな形で死ぬのは想定外だ、クラバル伯爵の貴族としての名誉は地に落ちた。しかも有ろう事か1番取り入りたいバトラス侯爵 軍事参謀の関与まで口にした!

おしまいだ! おしまいだ!! こ、殺されるーー!!


クラバル伯爵はその場にへたり込んだ。

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