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30、イベント−1

成績は上位10位までしか張り出されない。それ以外は渡された成績表で自分の順位を知ることになる。

1年、2年、3年、4年と横並びに張られ、縦に1位から10位まで順番に名前が書かれている。

成績発表のリストの前は人でごった返している。

その人の波を縫い前までいくと驚くべき事が起きていた。


4年 1位ステファン・ガーランド

3年 1位セルティス・スタッド 2位アレクシス・スターチス 3位カミラ・グラハム 4位マリア・ダラス

2年 1位ステラ・ハンソン

1年 1位アシェリ・スタッド 2位ペトローシス・スターチス


ガーランド公爵家が事実上 上位を独占したのだ。

王子たちは2人とも2位止まり、2年もパトロシス王子がいないものの側近は誰も10位以内には入っていなかった。因みにステラ・ハンソンもセルティス同様ガーランド公爵家の援助を受け教育を施した者だ、まああまり知られていないが…、つまりガーランド公爵家の息のかかった者が1位を独占したことになる。


何故今回セルティスは手を抜かなかったのだ!?


「はぁー、凄いですね。アシェリ嬢も優秀なのですね」

「…ああ、そのようだな」

「はぁ、入ってない…、成績表で確認するしかないかぁぁ」

「さて、食事にしよう」


それにしてもあのマリアが4位とは…どうなっている!?


「流石聖女マリア様だ! 素晴らしいな!」

そんな声があちこちから聞こえる。

なんだこれは? 何故マリアがこんなにも支持されているのだ!?


聖女マリアは慈愛の笑みを浮かべ、周りの者たちはその微笑みに胸の前で手を合わせている。数ヶ月前と何かが違う、イヤ明確にマリアは人格が変わったのが分かるが、そうだ周りの目! 周りのマリアを見る目が 崇拝していることが分かる。

いつだ!? いつ変わったのだ! 今はマリアを馬鹿にする者はここにいない。まるで敬虔な信徒のようにマリアを敬っている。

アレクシス王子は背中に冷たいものが走っていた。



今日は魔術教室ではなく、奥まった場所にある空き教室に2人きりで来ている。

「アーシェ、どうしたの?」

「あのね…お弁当を作ってきたの。だから一緒に食べましょう?」

「えっ!? まさかアーシェが自分で作ったの!?」

「うん、もし追放されたら料理もできた方がいいでしょう? だから昔からこっそりマーシャルに教えてもらっていたの、だから失敗はないと思うんだけど…。

口に合うかしら?セルティス様の好みだといいのだけれど?」

ガバッと抱きしめた。

「アーシェ 凄く嬉しい! いつも有難ういつもアーシェに私は幸せを貰ってる。

それからアーシェ 一つ頼みがある!」

「うふふ 私もセルティス様と一緒にいることだができて幸せよ! 頼みって?」

「セルティスかセルって呼んでくれないか? もっと近くに…特別になりたい」

「セルティス? セル? セルティ? 何がいい?」

「どれもいい!! ああーーー迷うな、セルティス…セル…セルティ… セルティ!!

セルティがいい! うんセルティ… 特別っぽくていい!アーシェとセルティ いいね」

「うふふセルティ! セルティ大好き ちゅ!」

「ああ、凄く幸せだぁぁぁぁぁ、アーシェ大好き!」

ぶちゅーーーーっと唇を合わせ、上唇をパクッと甘噛みしちゅうっと吸って、下唇もハムハム それから舌をこすこすしてからアシェリの舌を吸った。

「ふぁぁぁん」

「しっ! ごめん…… やばい…止まれなくなりそうだった」

うっかり理性を彼方に追いやっていた。

「ふぁぁぁぁ、力入らないよぉぉセルティ どうしよう ふぁ」

「本当にごめん、調子に乗った。おいで少しこうして落ち着こう」

セルティスは膝の上にアシェリ乗せて抱きしめ頭を撫でた。

本当に力が抜けてだらんとした手を握りその手ごと抱きしめる。

「こうして腕の中にアーシェがいる それだけで幸せだよ。その名前を呼んでくれただけで…抱きしめてキスしてもっと凄いこともしたくなった」

アシェリの顔は真っ赤になってセルティスの胸に顔を埋める。


「幻滅した?」 

「ううん、…想像した…そしたら恥ずかしくてドキドキして顔…が熱いの」

「イヤじゃない? 嫌いになったりしない?」

「…なんで嫌いになるの?」

純真無垢な顔で見上げる。

「ぐっ…、だって優しいお兄ちゃんでいられないから……」

アシェリはぽすっとセルティスの胸に顔を埋め、ぐりぐりと押しつける。

「わたくしにお兄様はもういますのよ? セルティは兄ではなくて愛しい夫ですもの。 妹ではなく妻として見つめてくださるのは嬉しいです」

口調がおしゃまで、それも可愛い!

「うぅぅぅ、私は今忍耐力を確かめられているのか? アーシェが可愛くて愛しくて今すぐ抱きたい ぐぅぅぅ」

「抱きたい?」

「あっ、ごめん露骨すぎたよね? でも正直本音。婚約者ってストッパーも無くなったから…、 日々アーシェが愛しすぎて色々妄想しちゃう…ああ、早く抱きたいな、俺のものって証を残したい」

うぎゃーーーーー!!

セルティス君ったらなんて色気で見るのよー!!

バーバラちゃんも腰砕け、私なんてはな鼻血が止まんないっつーの!

2次元と3次元の間には壮絶に高い壁があったんだね。おばちゃん初めて知ったよ。

この清廉潔白・優等生代表のお兄ちゃん属性のセルティス君が欲望に塗れた濡れた瞳でアシェリ(つまり私)を見つめている。それはどこか獰猛な肉食獣にロックオンされたみたいに背中がゾワゾワする感じ。ああ、セルティス君も成長して大人の階段登ってるんだねぇ〜。

アシェリちゃん、2人で手を取り合い頑張って登って行ってね!


アシェリは膝の上から首を伸ばしセルティスの唇にちゅっとキスをした。

「私を食べる前に作ったお昼ご飯を食べてくれる?」

「……ごめん、そうだったね。じゃあ早速頂こう」

「………セルティ? 膝から降りたいのだけれど?」

「ああ、うん そうじゃないかと思うんだけど…名残惜しくて…。このまま食べない?」

「うふふふふふ セルティったら可愛い! でもダーメ、だって今は作ったものをちゃんと見て欲しいもの!」

「はぁぁぁぁぁ、了解、さあどうぞ。………膝が寒い」

「ふふふふ、えっとね、これ」

空間収納から次々出した。

「セルティの好みに合うかしら?」

「凄いな…これ。アーシェが全部作ったの?」

「ええ、そうよ。だって2人で生きていくなら料理ができた方がいいでしょう? セルティの好きな料理も覚えるから教えてね!」

「アーシェ、今でもメロメロなのにこれ以上私を虜にしてどうしろって言うの? はぁぁぁ、好き。

アーシェの未来に私を隣に置いてくれて有難う。

料理は殆どガーランド公爵家で育ったから、味の好みはアーシェと似たもんだと思うよ。

アーシェ、私はアーシェに何がしてあげられるかな? 私もアーシェみたいに便利な魔道具が作れればなぁ? それともアーシェが作ってくれる料理にために作物を育てられるようになっておこうかな?」

「あはは 前向きな旦那様素敵!」

2人はイチャラブしながら昼食をとった。


「さて、今日はどうしてここで2人きりで食事をしているの? イベントかな?なんかあったっけ?」

「正解! そうよ、今日は恐らくだけど食堂で悪役令嬢アシェリがヒロインのマリアに水を頭にかけるの。マリアが高位貴族専用席で1人で食事をしているのを見かけて嫌味を言って水かけているところに殿下たちが来るの。それでアシェリは更に嫌われる、殿下に庇われているマリアが寛容にアシェリを許すの。それでますますマリアは聖女の名を盤石なものにしアシェリは闇堕ちしていく感じ」

「ああ、あれか… 胸糞悪い話だよな。

漫画に中のアシェリは3歳で殿下と顔合わせをし正式に4歳で婚約し18歳で断罪される。14年間も王妃教育させられて自由のない生活を強いられていた。アシェリは公爵令嬢として教養も素養もあった。それでも朝から晩まで王家に拘束させられていたのだ。

マリアは14歳まで平民で15歳から貴族、以前のマリアを見ても貴族としての素養はなかった、それでも王太子妃として迎えるならわざわざあんな小さい時から過酷な王妃教育する必要なかったよね? 

大体 アシェリの事を悪女、悪女って言うけど 家と家の約束事を蔑ろにして、浮気した男の方が責められるべきだったんだ!マリアに惹かれたとしても男はまずは婚約者を大切にするべきだよね? アシェリのマリアに対する指摘は貴族令嬢であれば尤もなことで、常識の範囲だった、それを一方的にマリアの言い分ばかり信じ肩入れして! アシェリが裏切られたと感じたとしても仕方のない事だ、やりすぎた部分もあったがそこまで追い込んだのは彼らだ!

水を頭にかける?熱湯スープじゃないだけ良心的だよ! マリアもアシェリに悪いと思うなら少しは態度を改めろよって話だよな。うるうるってしがみついて、アシェリが受ける心の傷には鈍感で苛立つ。

アシェリをあんな風にしたのはあの男のせいだ! アシェリはあんな風に断罪されるべき女性ではなかった! 断罪されるべきはあの男だった! それなのに聖女と結婚し幸せになった『おしまい』など許せるものではない!!」

アシェリの目からは滝のように涙が溢れ咽び泣いた。

この感情はバーバラちゃんのものだ。


セルティスにバーバラちゃんは『君は悪くない』そう言われた気がして感情が抑えられなくなった。バーバラちゃんは本当に意地悪なんてしていなかったしね、王妃教育という名の監獄 あんなには必要なかっただろう? と言われたあたりから涙腺は決壊していた。



「ごめんなさい、……絶対!絶対! 巻き込んだりしないから!」

「馬鹿だな、寧ろ巻き込んで欲しい。巻き込んで絡みついて離れないようにして欲しい」

「えへへ にーにが傍にいてくれて嬉しい」

「ふふ 懐かしいな『にーに』呼び。ダメだな…どんなアーシェにも心臓鷲掴みされちゃう。2人で何があっても一緒に生きていこうね」

「うん、ありがとう…」

食事の後も2人で今後について様々な事を話していく。時間が許す限り共にありたくて仕方ない。楓、バーバラ、アシェリ3人とも生まれて初めての恋に夢中だった。



『お嬢様、こちらに誰か来ます』

「誰かしら? 折角の時間が…」

「本当にこんなところまで無粋だね」


そっと結界を外し、貴族の仮面をかぶる。

どうやらこちらの様子を伺っていて入っては来ないようだ。

だから小声で聞いた。

「何故 今回のテストでは1位になりたかったの?」

「だってお兄様はご卒業になるでしょう?お兄様がいるのはこの1年しかないもの、 だから皆の名が載るいい機会だなって思って。うふふ この後 私は沈むつもりだし…1度くらいはいいかなって」

「あははは、そうなんだ。確かにそうだね皆の名が載るのか…、さて どの位置に名前が載るのかな? もう結果は見たの?」

「いいえ、何か起きそうで怖いから」


コンコンコン

「お邪魔してもいいでしょうか? スタッド伯爵にスタッド伯爵夫人」

そこにいたのは、ダリウス・トラガルトとカラバスク・パーマシーだった。


「トラガルト殿にパーマシー殿… 何用でこちらまで?」

「いえなに 先日お話しした通りスタッド伯爵夫人にお会いしてみたかったのです」

「強引な方だ。妻に確認するとお話ししたはずです。 はぁぁぁぁ。

ご紹介致します、アシェリ こちらはダリウス・トラガルト殿、こちらがカラバスク・パーマシー殿だ。現在第2学年でムージマハル国より留学されている、ご挨拶を」

「アシェリ・スタッドでございます」


「私がダリウス・トラガルトです。是非お近づきになりたいと思っておりました」

「私はカラバスク・パーマシーです。我が国の文化と違いご不快に思われても どうか寛大なお心でお許しください」

2人ともここでアシェリを取って食いそうなほどニタリと笑っている。

「…………………。」


「…アシェリ夫人はご主人以外には無口なようだ。 そうだ、先ほどの答えを差し上げましょうか?」

「答えとはなんですか?」

「さっき言ってたでしょう? テストの結果が知りたいって言っていた、違いますか? だからご存じないなら教えて差し上げようかと思いましてね」

「ああ、それなら後で分かる事なので結構ですよ、他にお話がないのならお帰りを」

「いやいやいや、そんなつれないなぁ〜コホン、 折角 ここまで来たのですし、もう少し何か話しをしましょうよ。それでは…テスト絡みではありませんが、1つ騒ぎがあったのでお知らせしましょうか?」

「いえ、あまり騒ぎには首を突っ込みたくはないのですよ」

「ふはははは、スタッドご夫妻は臆病者…失礼 慎重な方たちなのですね」

「臆病と取られても慎重と取られてもなんでも構いません。妻を陥れようとする者が多いので、繊細な妻をこれ以上傷つけたくないのです。怯える妻をこうして災いから避けることくらいしか出来ませんが…」


「ふむ、…本当に夫人は臆病な大人しい女性なのですか?」

「どういう意味ですか?」

「いえ、先程言った騒ぎの事です。それはスタッド夫人も関係のある事ですよ?」


ああ、なんだかイヤな予感しかしない。

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