23、社交界デビュー−1
今回の王家主催の舞踏会は社交界デビューのためのもの、アシェリも今年デビュタントだ。
さて準備をしてきた訳だが、前髪簾ヘアーで出席するか顔を晒すかが問題である。
ドレスや小物はカンナとお母様が鼻息荒く揃えている。私はあまり目立ちたくなかったんだけど…、折角娘のデビュー! ガーランド公爵家の威光を示す!とばかりに張り切っているのだ。この間 顔を晒したのが不味かった…。でも、隣に立つセルティスお兄様に恥をかかせられないし…1番はアシェリちゃんの記念すべき日、これはキチンとした形で迎えさせてあげたいなって。アレクシス王子殿下はパトリシアちゃんと婚約して仲睦まじいらしいし、アシェリちゃんもセルティス君と婚約…う〜ん、やっぱり不安だな。セルティスお兄様は伯爵だからな…、いくらお父様が付いていると言っても他国の王族とか まだ狙っているらしいしな。何か考えないとかも…。
ふぃぃぃぃぃ、と言うことで周りはアシェリちゃん(私のため)にせっせと準備を頑張ってくれているので…お任せして、私はオタク活動を勤しむ。現実逃避じゃない! だって私にとってはそれこそが本命だからー!
部屋にメタクソあったバスタオルのグッズを作ろうと思ったら…愕然とした。だって、だってパイル織りふかふかタオルがこの世にはなーーーーーい! だからイメージで言うと手拭い? ガーゼを2枚合わせくらいしかないのだ!
シクシクシクシク そりゃないぜー!! I LOVE パイル いかにもっとふわふわの生地の上で絵を描くかで悩んでいたけどそれどころではなかった。まあ、コンピューターも無ければ糸替え技術もない、どの道ふわふわパイルに絵は描けないのだが…。くそっ! おっと、アシェリちゃんの印象が悪くなるといけないから脳内だけね。
保留
ああ そうそう、化粧品が爆発的ヒットしていた。
だろうね、ふふん。
これは医学的な技術もあったし知識もあった。だから植物図鑑の挿絵巡りをした中で似た植物や図鑑にあった植物を採集し作った物だからね。これらは高級品としてボトルもパッケージもこだわった。最初は『ドースン商会』と言う新参者から大切なスキンケア化粧品を購入する気はサラサラなかった。だが、ドレスや布の画期的な手法で衝撃的なデビューを飾った『ドースン商会』そこが新たに出したとなれば何かあるに違いないと様子を伺っていた。そこへお母様と言う社交界のトップである広告塔が活躍してくれた。無名なブランド『トレモア』を使うのは勇気がいった。新規参入のドースン商会の化粧品は興味はあるが、絶対に美を損なうような失敗はしたくない。ドースン商会としても、一歩間違えれば大失敗し、一気に悪評となる可能性も大いにある。今まで快進撃を続けてきた信用は地に落ちるかもしれない。
だが、『あのケンスレット・ガーランド公爵夫人が取り入れたもの』として噂はたちまち広がり、安心と信頼を元に確かな品質を保証し、新たな化粧部門の最高級品としての地位を確立した。そして今までにない商品はこれまでの常識外、疑心暗鬼となり不安でもあったが、お母様のぷるつやの肌の存在が証明していた。そこで不安ながらも新たなものに手を出し実感しリピーターとなり、あちこちでペラペラ宣伝してくれた。まさに広告塔が増産されていった。
ドースン商会の『トレモア』が化粧品業界に革命を起こし、常識となって行った。
今では『あのドースン商会の次の商品は何だ!?』とユーザーだけではなくライバル店も注視している。
がっはっは、オタク活動のために頑張るんるん、ぬふふ。
そうそう、人気投票の限定グッズの売上…売れ方が凄かった!
高位貴族の人が並んでグッズ買うとかシュールって思ってたけど…本人が並ぶ訳なかった。侍女や侍従がずらりと並んだ。事前の問い合わせで買い占めようとする人がいたので1人1グッズとした為、買い占めるにも人間が多く必要になった。という事で店にはかつてないほどの人間が長蛇の列を作った。高位貴族はプライドモンスター、それが100番目だとしても購入するために並ぶのだ。それはそれは目を引きまた宣伝となった。そしてドースン商会は今や押しも押されぬNo.1商会に名実ともになっていた。ヤッホーい!
ちょっと取り扱う商品に幅がありすぎるけどね。
そして私はついにここまできた…。フィギィア!!
いや、欲望は尽きることがない、まだまだやっちゃうけどね!
取り敢えず念願のフィギィア 初号機を作った。
いやーさー、パードック侯爵領の鉱山、閉鎖しちゃったら街の人すっごく困るから閉鎖しないで欲しいってさー、自分たちの体のことも不安だけど、具合悪くなったらまた薬飲むから続けさせてくれって、パードック侯爵のところ押し寄せたんだよねぇー。
そんなん絶対後で後悔するじゃん! 知ってて薬だけ売って、大勢死んで、あーやっぱりこんな結果になったね、なんて言えないじゃん!だから別のお仕事出来ればいいなって、別の収入が得られれば諦めがつくんでしょって。何か協力してあげられればなって。んで、まず有害物だけを隔離することを提案して、あの時偶然見つけた別の鉱物、この世界ではまだ利用価値を見出せていなかった硫酸カルシウムを購入することにした。
それを木の型を流し込んで石膏の人形を作ったのだ。イメージするフィギィアとは違うけど、次はパーツごとに作っていきたい。その為にはワイヤー、針金作りたいなー。銅像みたいなのだと細かいパーツに石膏が行き渡らないと不良品がいっぱい出そうなんだよねー。
でも石膏像もそうは要らないだろうから、別の用途も考えなくちゃ。
あっ! 女神様 マリアちゃんが女神様に会って光魔法を授けて頂いたんだから実在してるんだよねー。イメージじゃなくてもっとお顔を似せたいよなぁ〜、それに許可も欲しい。どこに行ったら会えるかなぁ〜? で! 許可貰えたら巨大なの作って教会に寄付&販売の許可欲しいな。一商会で売るのはダメって言うのなら教会に卸す形で
そうすればパードック侯爵領から定期的に硫酸カルシウム購入できるし、教会とも仲良く出来てwin win ニヤ。教会は幾つあるかなか〜? お父様に聞いてみようっと。
そうだ、このスターチス国は魔法が微々だけどある国、そして切っても切れないのが魔獣。
でも魔獣が街で暴れるとかはゲームの中ではなかったんだよね、だけど 魔障(魔獣の魔力に触れて体に影響が出てしまうこと)によって腕や足が使えない人が出てきてた。
万能薬を取りにダンジョンに行った時も魔獣狩って魔石取ったりしてたんだからいるのは間違いない。うーーーーん、魔獣から魔力抜いたら何が残るんだろう? その魔力はやっぱり魔障が出るのだろうか? 魔法陣ももっと勉強したいなぁ〜。学園入ったら勉強できるのかなぁ〜?
漫画やアニメの世界では色んなことが出来たけどこの世界では魔法陣や魔法で何が出来るんだろう?
ふぅ〜、今 密かに欲しいと思っているのが『マッサージ器』! 漫画描いたり根を詰めると肩がこる。目も疲れる、手の付け根もヒクヒクする首もこる。ああ、マッサージチェアに身を委ねて休憩したい。私の場合は 回復魔法で疲労回復するけど世の中の人はどうしてるんだろう? ああ、昔は魔法がなかったからエナジードリンクめっちゃお世話になったなぁ〜。うん、エナジードリンク作ろ。 ポーションっぽいかな? MP回復ポーション、とか色々あるみたいだけど魔力を含まない回復剤はない。でもそれらって魔力を有している人には効果があるけど、ない人にはそこまではないみたい。マリアちゃんみたいな強力?な回復魔法があれば効果を感じるらしいが、高価なポーション購入して飲んでも効果を感じられないので、購入するのは高位貴族だけらしい。薬の一環であったらいいよね?
まあ、まず材料費とかどのくらいで出来るか確認しないと一般向けに出来るか分かんないし、私的には高麗人参エキス!これ必須。それと同じ様なものがここにあるかは分かんないしね。それを探したい、あったら紅参も作りたい。まあ、作る畑は余裕であるし。
そうだ、紙! 漫画を描く為に作った紙、これまたヒット。1番に大量注文したのはマイダディ。てっきり親バカで購入して手助けしてくれたのかな? なんて思ってたけど品質でのお買い上げだった。やっぱりみんな滑りが悪くて滲んでイラッとしてたんだね。
お父様が使われる紙は全て私が作ったものに置き換えられた。そうすると周りも試してみたくなる…、はい 国からもご注文! まあつまり王宮で使用される紙の注文が入った。
ウッホほーい! 有難うダディ。
ああ、それからうちの鉱山も使って作ったのがティアラ、ネックレス、ブレスレッド、指輪をこれまた衝撃的にデビューさせた。
と言うのも宝石の輝きを最大限美しく輝かせる台座を作ることに成功した!
今まではそんなに繊細な模様は作れないし石を削ってリングにするとかもない、あってもぶっとい金属のリングに嵌め込む形が主流だった。大きな石はネックレスのメインに使うことが多かった。クレオパトラのネックレスみたいに金属や石を繋げて大きなプレートに嵌め込む、まあゴージャスだしカッコいいんだけど、重い!! 肩凝りの原因はこれだ!ってほど。
ドースン商会が作った宝飾品は、繊細な細い鉤爪で掴み尚且つ多くの光を取り込み石に様々な角度で光の屈折を与えることにより発光しているかの様な輝きを放った。特にこの時代蛍光灯があるわけではないからね、存在感を出すために大きな宝石を大きな台座で支えるから高価だし重くなる。それが軽くて美しく輝く宝飾品を作ったのだ、世の貴婦人たちは挙って押し寄せた。そしてそのデザイン性の虜となった。
だけどこれも副産物!
本当に作りたかったのはスプリング!
何の為に? はい、そうです椅子を作りたいから!
ゲームチェア! まあゲームは出来ないけど長時間作業すると疲れるんだよねー!
肘が付いてて座ると若干上下し体にラインにフィットした包み込む様なクッションの効いた椅子が欲しい。背もたれはハイバックでぐいーーーっと縮こまった背筋ピーーン!
偶にリクライニングでうたた寝…まあここまでは望まないが、リクライニングなしは出来ると思う。組み立て式のゲームチェアでパーツは覚えてる。ああ、そうなるとネジと溝必須か…と、パーツを書き出してみた。ネジは精巧ではないけど出来たよ!昔のお金造りみたいに木で形を作って貰って土で固めて石膏流し込んだりゴム使ってみたり試行錯誤して最終的に鉄で作れた。それぞれのパーツも作った。ウレタン素材が欲しかったが流石にない。
そこで植物の繊維なども使ってみることにした。イメージヘチマのスポンジみたいなやつね。それから綿も入れて自分好みの硬さにして出来た時は感動したね!
これはお父様とお兄様とセルお兄様にも作って差し上げたら、凄く喜んでくれて皆その場でスプリングを何度も確かめててちょっと面白かった。木の温もりもいいんだけどね、何せ長時間は疲れるのだ 尾骶骨あたりに鈍痛がでる。お父様からは各ガーランド公爵家の執務室の椅子を替えたいと言われた。それだけでもかなりの数。
長時間座る仕事はお尻にも影響があったらしく、個人的な要望で作ったけど需要はあった。
だからもっとこだわりの無いノーマルな物を割と高めのお値段設定で売ってみた。高級品として高額で売るくせに自分たちよりチープなデザインと機能ってウケる。
ドースンさんが『もっと幅が広ければ買ったのに』と言うので確かに大柄な男の人には少し窮屈か、と思い幅広くタイプも作ってみた、勿論こちらもバカ売れ。これは座面だけの変更で済むので大した手間もない。でもドースンさんには折角だから売り物より座面を私たちと同様の最高級仕様の物をプレゼントしてあげた。いつもお仕事有難う、結構危険な目に遭っていると小耳に挟みます。矢面に立たせてごめんなさい、そしてこれからもよろしくお願いします。テヘペロ 私 ただのオタクだから。
あーーー、そうだ、マッサージ器は電動は無理だから地味にツボ押し竹踏みと肩たたき、勿論私特製のゴムボール付きを作った。真っ直ぐバージョンと叩く部首ふしづくりみたいな形も、冗談で孫の手も作ってみました。厳つい顔した人たちが孫の手で背中をかく…うける。あったらいいなで、女性は見られたくないだろうけど…欲しいでしょう? ハイヒールって脱いだ時解放感あるもんね!ふふ。
最初は意味わからんって感じで全然売れなかった。だけど店頭販売で実演すると馬鹿にしながらもちょこちょこ売れる様になった。まあスタイリッシュではないよねー。何でこんな物がドースン商会で売ってる訳? 店の品位を落とすからやめて頂戴とかクレームもきた。だが私の店だ、何を売ろうと好きにさせてちょ。フンス
今ではじわじわと認知されまあまあ売れている。
意外にも肩叩きは書類整理の多い男性からの注文よりネックレス凝りや髪形のせいで肩こりの女性からの方が多いと言う。
そうだ、お父様が財務大臣になり王宮の執務室にアシェリちゃんグッズを置いている。机の上に肩叩きが鎮座しているらしい。肩叩きもいずれ文官たちに広まることだろう。
因みにお母様もドレッサーの椅子の前にこっそりなんちゃって竹フミが置いてある。女性はヒール履くから足疲れるんだよねー。きっとお茶会の後には大量注文を頂くことだろう。
と、自分の支度を人任せに自分の趣味に没頭していると舞踏会の衣装や宝飾品が次々運び込まれてくる。ねえ、私 王女じゃ無いよ? ヒョエーーーーー! 何じゃこりゃ!
目がチカチカする。 ティアラ、ネックレス、ブレスレッド、指輪、靴にまで宝石が光ってる!! これ絶対! 100% 誰よりも目立つってヤツだよね?
くはー、ガーランド公爵家の威信をかけてみたいなノリになってる。
グレースティアラって言うの? こんなに頭光っちゃっていいのかな?
あっ、そういえばこれって顔出しかな? ああ、はい決定権はママンにあるのね? まあ、今まで心配かけちゃったし、腹を括ろう、アシェリちゃんかバーバラちゃんが付いてるからオッケー。
と思ったら、次から次へと同じようなセットが運び込まれる!?
ドレスも何着あるの!? えっ!? 一晩だけの事だよね???
「アシェリ、まずはこれを着てごらんなさい」
「えっ? はい」
ママンの顔も目も怖い。なんか変なスイッチ入ってる!
今までの反動なのかー?ドレスを着て宝飾品をセットされて終わりかと思えば、その都度宮廷画家みたいな人にデッサンされていく。ナニコレ? おぉぉう、写真があれば便利なのになぁー。あっ! ピンホールのカメラなら簡単に出来そうだな。今度 家族写真撮ろうかな? 今を写しとる…いいかも。セルお兄様も家族の肖像画だけは持ち出したって言うし、思い出って大事だよね! それに植物図鑑や地方の風景写真とかも撮れちゃうなぁ〜ニヤ。
「動かないでください!」
「は、はい」
ねえ、宝飾品ってこんなに必要だったかなぁ〜?
1セットで良くね? って気分。 でもそれを言ったらママンが火を噴くから言わないけど。
だってさっきからそれらも併せてトータルコーディネートだって力説してた。マネキンしんどいっす。
うぉー! もう、これでいいっしょ!とか思ったのに手直しが入ってる。セルお兄様はどうしたんだろう?お母様 私のことに全力投球で忘れてるってことないわよね? そう思っていたら、どうやら私のドレスを決めてからお兄様も手直しするらしく、それらも指示が出されていた。驚いたことに私のドレスと同じ数セルお兄様の服もあった。男女ペアでセット、ひゃー! 目玉飛び出るほど高価なんだろうな…まあ、うちはお金持ちだし、私も儲かるからいっか。そう、これらはアシェリの工房で作らせているからだ。
たかだか私のデビューではあるが、恐らく生まれ変わった私のお披露目なのだろう。
そして今後は公爵令嬢としての役割をこなさねばならないぃぃぃぃ?
本当はネクラにオタク活動に勤しみたいが、この体はアシェリちゃんとバーバラちゃんと楓で構成されている、私ばっかり尊重させちゃ駄目だよね? 気合い入れていくぞー! うん、私は主に深夜担当って事で。
元気に長生きする為にエイエイオー!