53 ひとまずのエピローグ
学園編完結です。
2話連続であげていて、こちらはエピローグです。
卒業式の後。
予定通りにお城に行って、お城でドレスを着付けられて――解せませんが――そのまま両陛下と謁見。
今後とも宜しく的なことを格式張った言い回しで告げられてから、イングラム様と我が家へ向かい、今度は両親とイングラム様が同じようなやり取り。
そうして、卒業式の夜。
卒業記念パーティーが開かれて。
夢のようなパーティーでした。
そう、他の乙女ゲームにあったような、断罪イベント、追放、悪役令嬢なんてものはなくて、ただただ、それぞれがそれぞれの未来を祝うための回。
ざまあなしの『輝きのソナタ』本編でも、卒業式後のヒーローによるお迎えがメインで、卒業記念パーティーは取り上げられておりませんでした。
そして。
春になって早々に。
イルワ元侯爵麾下で、クアクゴス男爵家を含む残っていた貴族は爵位を返納することとなりました。
元々、イルワ元侯爵の領内貴族であったわけで、元侯爵がすでに取り潰されていて、領内貴族だけが無事ということもなく。むしろ取り調べで逃さぬために、爵位を残していたようです。結果、やはり、謀反の手引をしていたことが立証され、一斉の沙汰となりました。
その調査には、継嗣であるローズマリー様も関わっておられ、彼女はその功績と、わたくしへの個人への忠誠により、罪に問われませんでした。いえ別にわたくしに忠誠を捧げていたから無罪だったわけではなく、家の忠誠とは異なる忠誠を持つために動機が薄い、関係性が低いと判断された、というのが本当のところです。
クアクゴス男爵たちは当主が幽閉または鉱山労働といったいわゆる終身刑に処され、その家族は母方、妻方の実家を頼るか平民となりました。
ローズマリー様は平民として、城の女官試験を受けられるそうです。城としても、ある程度監視下における事、忠誠の主がわたくしであることを加味して、対応する方針と伺っています。
そして、イルワ侯爵領は新たにイルワ大公領となり、アストラナガン殿下が継承権を維持したまま臣籍降下され、アストラナガン・ラ・イルワ大公となられました。この冬の大夜会では、セインゴナコマチェスカ姫との婚約が公表されることでしょう。
メアリー様は案の定、お兄様に流されて卒業後に即婚姻の手続きを為さり、今はメアリー・ラ・ジンカイイとして一緒に暮らしております。両親大喜び。わたくしもメアリー様が家に居てくださるのはとても嬉しいので、願ったり叶ったりなのですが、メアリー様がお兄様に流され過ぎではないかというのは心配しています。
ですけれど、毎朝お兄様、メアリー様と一緒に馬車で登城して、帰りは別々でも家に帰ると顔を合わせられるのは、やっぱり、とても幸せなのです。
今年は、秋にお兄様とメアリー様の結婚式。来年の秋にはフィリィ様、スノエル様、それから――
「今日は結婚式のドレスの採寸ですよ。楽しみですね、プリム様」
お城での予定を告げてくれるメアリー様の言葉に、我に返らざるを得なくなります。
わたくしと、イングラム様の結婚式もあるのです。国家行事、国家行事なのですこれ。
「ジンカイイ! 新たな検証を行いたいので手を貸せ!」
王城で私室として与えられている部屋のドアを押し破って入れる方はそう多くありません。
「アンドン、先生」
黒縁の瓶底眼鏡、黒いローブのアンドン先生と、その後ろで目を爛々とさせている魔力学研究者、王城付き魔法使い、頭を抱えるローズマリー様。
どうやらまだわたくしに、以前引きこもっていたときのような平穏は訪れることはなさそうです。




