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46 冬の寒月 1

 学園が再開しておよそ一月。卒業までも残り一月となって、貴族専科はにわかに忙しくなります。卒業前、最後の試験があるからです。

 他の授業はともかくも、わたくし、魔力学については困ったことになっておりました。


 あの白い炎の一件を知ったアンドン先生が、魔法の行使を許してくださらないのです! あれが魔力にしろ、ムジーク様のいう太陽神の加護にしろ、


「原因のわからない現象があった以上、詳細がわかるまでは魔力学実習はお前には課さない。不合格にはしないから、安心して座学に励め」


 だそうです。

 そうは言っても、放課後、メアリー様とアンドン先生の部屋に行くのは今も続いております。

 アンドン先生なら、あの白い炎や、その制御の方法もお教えいただけるものかと思っておりましたが、流石に荷が勝つと言われてしまいました。

 ただ。


「これが授業でないなら、また話は違うがな」


 先生の実験台としてなら、ということですね! ですよね!


「ジンカイイ、王城では今、魔力と神話についての再調査が行われている――その仕事、僕も含まれている」

「そうなのですか」

「お前が切欠だぞ、ジンカイイ。だから僕にも声が掛かったんだ」


 なるほど?

 わたくしの白い炎について、ムジーク様がお戻りになってから詳しく、という話はあったと思うのですが、その前に古文書などの調査が始まった、ということでしょうか。

 え、わたくし一人の魔力暴発でそこまで――? いえ、場所が場所でしたし、ムジーク様のお言葉もありましたし、何かあればわたくし街一つ吹き飛ばす、んでしたっけ。

 これは――野放しにしておいてはいけない案件、ということでは。


「それはその、先生の貴重なお時間に、大変ご迷惑を」

「いや、でかした」

「は」

「城の古文書など垂涎モノだぞ。魔力と神々の関係については度々関係者の間で話題にはなるのだがどうしても資料が不足するからな」

「そう言って戴けますと」

「それもあって、お前の実技について不問にしたんだ。詳しくは卒業後に暴かせろ」


 マッドでしたわ――! 忘れておりましたが。

 ただ、知っている先生が調査に協力していただけるならばそれは助かります。


「ええと、よろしく、お願いいたします」

「ああ。こちらこそ」


 先生がものすごく良い笑顔です。良い実験体を手に入れたくらいにしか思っておられません。


「確かに、アンドン先生と、ムジーク様がお話されると、いろいろなことが分かりそうですね、プリム様」


 メアリー様が天使のほほえみでそうおっしゃいます。

 よくわからない巨大な力、というのは――前世の中二病的で――心惹かれなくもないのですが、それと同じくらい、『わからない』ことは『怖いこと』です。


「――わたくし自身、何が起こったのかを聞いただけなのです。ですから、それを調べていただけるのはとても嬉しいですわ。

 魔力学の実習が出来ないのが、心残りではありますけれど」


 おそらく、卒業したらもう、専門として時間をとることは難しくなるでしょうし。


「プリム様、調査は暫く続くでしょうし、お城でも指導して戴けないのでしょうか」


 メアリー様がそう言ってくださいますが、お城に上がったら、スケジュールはそこまで自由にできないと思います。多分、おそらく。


「それはもう依頼されている」

「えっ」

「僕も来年度から『王太子妃付き』に出世だそうだよ。ありがたいやら悲しいやら」

「だ、だって、先生は、『魔力と魔法を万人に伝わる学問にする』のが目標でらっしゃるのに、わたくしなどのために、学園を離れられては――」


 あまりの申し訳無さに恐縮すると、先生は剣呑に目を細められました。


「思い上がるな、ジンカイイ」

「――え」

「僕が城に行くのは、それが僕の目的に沿うからだ。君のためじゃない。君のためじゃなく、『王太子妃』の教育に行くんだ。

 いいか。国の上層が、『魔力学を学問として学ぶ』。それがどれほど、人民に衝撃を与えると思う。言ってみれば魔力学を国が真に認めたことになる。だからこそだ。

 いいか、ジンカイイ。僕はお前だから行くんじゃない。お前じゃなくても、行くんだ」


 はっきりと、アンドン先生がおっしゃいます。まったくもって、ブレない。それを頼もしく感じます。アンドン先生にとって、わたくしの一件、王太子妃候補に関する一件、すべて、己の目的のための手段でしかありません。

 そしてだからこそ、わたくしは、安心して頼ることができるのでしょう。


 きっと、アンドン先生は、それさえお見通しなのです。


「それに、コンツェルトとクアクゴスも近々城に上がるのだろう。ますます都合がいい」


 そう、思っていたいだけかも知れませんけれども。


「授業はどうなるのですか」

「併任する。常に王太子妃についているわけではないからな。僕は僕の都合で城にいるさ」


 自由。ものすごく自由。いえ、マッドな研究者はそれくらいが丁度いいのでしょうか。


「ではその、今後とも宜しくお願いいたします」

「ああ、任せろ」



 そんな風に学園生活を続けつつ、お城や実家から色々な報せが届きます。多くは卒業後の日程や段取りについて。

 婚約しているとは言え、すぐに結婚するわけではありません。多くの儀式ですとか、段取りがございます。最短でも結婚式は一年後、くらいでしょうか。実感わきませんけれど。

 そしてある日。

 お城からの報せにイングラム様の封がされたものが含まれておりました。


 中には。

 ムジーク様がお戻りになる、と記されておりました。

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