表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神に仕える黄金天使  作者: こん
第1章 玉座強奪・諸邦巡遊篇

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

92/560

第91話

 俺が報告すると皆が驚いた。


「父上と兄上が?」


「は。出陣の許可を頂けますか?」


「それは良いが、父上と兄上は生け捕りにしてくれ」


「御意」


「ジル卿、俺らも後で追いつく。それまで負けるな」


「ああ。待っているぞ」


 ジュスト殿の応援の言葉を受けた俺は殿下に一礼をして、エヴラールとアキを伴い、幕舎を出た。アシルは連絡要員として殿下に付いていてもらう。


 ジルだ。ラポーニヤ城が襲われている。騎士隊と魔法兵隊は出陣の準備をし、俺のもとに集合せよ。


 俺は部下達に念話で呼びかけた。もちろん、どこにいるかも教えてやった。


「魔法騎兵隊、準備完了致しました」


「魔法歩兵隊、準備完了だす」


 やはりキイチロウはサヌスト語をほぼ完璧に習得しているが、リョウはまだ発音がおかしい単語がある。まあ準備が早いのは良い事だ。


「騎士隊、準備完了です」


 ドニスの報告を受け、俺は駆け出した。何も言わずともやる事は分かっているはずだ。


 ケリング、聞こえるか?


 ───はは───


 国王軍はどちらに布陣している?


 ───西側と南側に布陣しております。南側にはギュスターヴが、西側にはアルフレッドがいると思われます───


 分かった。今から行く。


 ───お待ちしております───


 俺はケリングから必要な情報を聞き、作戦を考える。さすがに三十倍以上の敵には、作戦が必要だろう。


「キイチロウ、リョウ。おぬしらはラポーニヤ城の東側から回り込み、北門から入城し、中から攻撃せよ」


「はは」


 キイチロウがそう言って右手を上げると魔法兵隊が離脱して行った。


「アキ。おぬしに一番大事な任務を任せるが良いか?」


「任せておけ。で、何だ?」


「国王軍は城の西と南にいる。ムサシとその配下を率いて、その中間辺りを飛べ」


「な、なんでだ?」


「ああ、その時はムサシの頭にでも乗って行け」


「待て待て待て。なぜワタシがそんな事をせねばならん?」


「作戦だ。国王軍が恐慌状態に陥るだろう。この作戦の要だ。おぬしにしか任せられぬ」


「そうかそうか…ワタシだけか。引き受けた」


「頼んだぞ」


 俺はそう言ってムサシとその配下を喚んだ。


「では行ってくる!」


「アキ、敵の結界があれば破壊しておけ!」


「分かっている!」


 アキは俺の言いつけ通り、ムサシの頭に乗って行った。冗談であったが、まあそれはそれで面白いだろう。


「ドニス、国王の顔を知っているか?」


「存じ上げません」


「そうか。ならば、他とは違う鎧を纏っていたらソイツは生け捕りだ」


「はは」


「速度を上げるぞ。ついて来いよ」


 俺がそう言うとヌーヴェルが速度を上げた。


 ───主殿、移動中に見つかった───


 どうなった?


 ───あの…ほら…なんと言うのだ?ウゴウノシュウ───


 烏合の衆だな。


 ───そう!それだ。ああ、それと結界師を捕まえたぞ。国王だとか何とか言っているがどうしよう?───


 ギュスターヴであろう?本物だ。強力な弓使いも捕らえてくれ。


 ───分かった───


 なんとアキが王を捕らえていた。お手柄だな。


「皆、王は捕らえられた。よって西側から攻めることにする!」


 俺はそう言って進路を変更した。


 しばらく駆け抜けると、パニック状態に陥った国王軍が、我先にと逃げ惑っているのが見えた。


「我が隊にヴォクラー神のご加護があらんことを!」


「「「ヴォクラー神のご加護があらんことを!」」」


「突撃!俺に続けぇ!」


 俺の号令で突撃が開始された。

 敵に近づいてみて分かったが、一般兵は武器を捨て、鎧を脱ぎ去り、少しでも軽くなって逃げようとしている。それもそうか。城からは爆発する矢や爆発する光が飛んでくる上、上空には見たことも無い化け物が三十匹もいるのだ。彼らが肉壁と化すのも分からなくはない。まあ武器を持たぬ者は攻撃せぬ。


「貴様か!王家に逆らう偽使徒は!」


 夜の戦場でも目立つ鎧を纏った弓使いがいた。その周りの騎士は逃げずに主人を守っている。


「我が名はジル・デシャン・クロード!アルフレッド()()とお見受けいたす」


「いかにも!私がサヌスト王国()()()アルフレッドだ。貴様のせいで我が国は大混乱だ。責任を取って死んでもらう。やれぇ!」


 アルフレッドが指示を出すと周りの騎士達が攻撃を仕掛けてきた。その数二十騎。


「ドニス」


「はは」


 こちらも二十騎が出た。ドニスとその側近なのでそれなりに強者である。

 だが、王太子の護衛を任されているだけあって、敵もそれなりに強い。ほとんど互角だ。


「死ね」


 アルフレッドがそう呟きながら、俺に向けて矢を放った。俺はそれを切り払おうとしたが、直前で魔法が付与されている事に気づき、結界で包んだ。そのおかげで被害は無しだ。


「ぐっ…」


 アルフレッドがドニスの側近のシャフィクを射抜いた。シャフィクが落馬するとアルフレッドがシャフィクの愛馬を奪い、逃げた。

 普通の一角獣(ユニコーン)は、より強い者に仕える為、主を殺した者の言う事は聞くらしい。なので普通の馬より足が速い一角獣(ユニコーン)を奪って逃走するのは、ある意味正しい。


「ヌーヴェル、シャフィクを任せたぞ」


 俺はシャフィクに回復魔法をかけ、ヌーヴェルから降りて、アルフレッドが逃げた方へ走り出す。

 狼の姿になり、一度遠吠えをした。そうする事で、国王軍の兵士が怯え、道を開けてくれる。

 俺は人の姿になった上でその道を通りながら、アルフレッドに呼びかける。


「アルフレッド、待たぬか!」


「知らん!私に命令するな!」


「ならば斬るぞ!」


「その前に私が射殺す!」


 アルフレッドが弓に矢をつがえ、振り向いた。放たれた矢は俺の眉間に一直線である。が、矢など切り払える。

 俺は立ち止まって弓を取り出し、二本の矢をつがえた。


「最後の警告だ。馬から降りて、投降せよ。さもなくば、殺す」


「私に命令するな!」


 アルフレッドはそう言って、振り向いた。その瞬間、矢が再び俺の眉間に向けて飛んできたので、俺も矢を放った。

 一本はアルフレッドが放った矢に、もう一本はアルフレッドを庇った騎士の左腕に、命中した。


「そやつを殺せ、オクタヴァイアン」


「御意」


 オクタヴァイアン?このオクタヴァイアンが、国王親衛隊部隊長ならば、俺が討ったはずだ。同名という可能性も捨てきれぬが、同名の騎士を身近に二人も置くか?置かぬだろう。という事は、どういう事だ?

 あのオクタヴァイアンだとしたら俺の方が圧倒的に強い。それにあのオクタヴァイアンではない別の騎士だとしても左腕を負傷している。まあ負けぬだろう。


「おぬし、何者だ?」


「国王親衛隊部隊長オクタヴァイアン。国王陛下及び王太子殿下のご命令により、貴様を殺す」


 やはりあのオクタヴァイアンなようだ。だが、雰囲気が別人のそれである。まあそんな事はどうでも良いが、早くせねばアルフレッドに逃げられてしまう。


「奴を殺せぇ!殺した者には金貨一万枚だ!そうでなくとも、奴に一撃を入れた者にはそれなりの額を与える!」


 変わっていなかった。だが、以前は金貨十万枚であったはずだ。


「近づく者は斬るぞ」


 俺は剣を構えてそう言った。


「逆にオクタヴァイアンを馬から引きずり下ろした者は、俺が登用してやろう」


 周りにいる者は迷っている。それもそうか。俺とオクタヴァイアン、戦えばどちらが勝つか分からぬゆえ、迷うのだろう。もし俺に味方してオクタヴァイアンが勝てば殺されるだろう。逆もそうだと思われているかもしれぬ。


「覚悟!」


 俺は剣を投げつけてやった。まさか初手から投げられるとは思わなかったのか、オクタヴァイアンの頬を掠った。


「貴様ぁ!」


 オクタヴァイアンは槍を突き出してきた。俺も槍を取り出し、奴に突き出す。互いに防御はせず、左脇腹を抉りあった。

 オクタヴァイアンの口から呻き声が漏れる。俺はそんな事は構わず、槍を奴から引き抜いた。奴は落馬し、俺の脇腹から槍が引き抜かれる。


「オクタヴァイアン。死ぬ前におぬしの秘密を教えてもらおう」


「秘密などないわっ!」


 奴はそう言って舌を噛んだ。だが、怖くて力を入れられぬようだ。

 しばらく気まずい時間が流れたので、俺は奴の顎を蹴ってやった。

 舌を噛み切ったようだが、死なぬようだ。俺は槍で奴の喉を貫いてやった。せめてもの情けである。


 俺は槍を仕舞って魔法で剣を回収した。その時、自分も脇腹を抉られたことを思い出し、回復魔法をかけた。無事完治した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ