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神に仕える黄金天使  作者: こん
第2章

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第586話

 ジュスト殿らとジェローム卿を副議長室まで連れていき、まずは軍部として意見を統一すべきであると言いながら冷えた水を渡した。


「軍部として意見を統一? 私は部下の失敗を前提に今後の予定を立てている訳ではない。騎士団が賊を討伐する事を信じている」


「我らとしては失敗する気など一切ないが、元帥がそれでよろしいのか」


「あまり元帥を責めるなよ、ジル卿。軍部として意見を統一すべきだと言ったのはジル卿だ」


「すまぬ。では元帥、どうなさる? 我らとしてはその意向に従おうと思うのだが」


「騎士団長には悪いが、騎士団が失敗した場合には、軍部として経費削減策を採る必要が生じる。あるいは、何らかの形で資金を調達するかだ。騎士団の任務達成が第一だが、これらの策を第二として考えておかねばならない」


 ジェローム卿はそう言い、落ち着いた様子で対策について話し始めた。先程は武官として軍の名誉を守るために白熱してくれたようだ。とはいえ、先程の会議は税収減の対策についてと明言した上で開催されたものであるから、客観的に見ればヴァーノン卿に分がある。


 軍としてできる経費削減では限界があると言い、資金調達について議論を始めた。

 資金調達方法であるが、大まかに二点あり、貴族や豪商らから寄附を募る第一案、小規模な遠征を行ない、敵国内での略奪による第二案であった。

 第一案に関しては、軍内部における寄附者の影響力が増してしまう事が難点であるが、これは相手を選べばある程度は防げるだろうとの事である。まあ一度きりの寄附による影響力など大した問題にはならぬだろう。

 第二案に関しては、小規模とはい遠征には元手がいるので、税収減による影響が出る前に行動を開始せねばならぬ点が難点である。さらに、遠征先とは確実に揉めるので、後日の戦費に苦しめられかねぬ。これは第一案を選ばせるための、ある意味囮としての役割を期待した案である。


 議事堂に戻り、書記官に再開の準備が整ったと告げると、しばらくしてヴァーノン卿が戻ってきた。


「先程は失礼した。会議の再開を宣言する。副議長、何かあればどうぞ」


「こちらも先程は取り乱してしまい申し訳ない。軍部としては騎士団による賊の討伐を成功させるために全力を注ぐ点に変わりはないが、それはさておき、退路を断つは兵法の邪道である。あくまで退路を確保する意味で、税収減の対策案を提出する」


 ジェローム卿はそう言い、先程の二案を発表した。やはりというべきか、大臣や専任議官らは第二案に対して懐疑的であった。

 ジェローム卿の発表が終わると、ガイエ内務大臣とファーブル宮内大臣の連名で二案が提出された。


 まず一つ目。実体の伴わぬ官職や勲章を売りに出し、貴族らの名誉欲を刺激して金銭を集める、売官案。

 これは古来からある増収策であり、貴族らもそれは分かっておろうから、ある意味では貴族らに直接的な助けを求めているようなものである。


 次に二つ目。官吏の報酬を貴族らに支払わせる代わり、当該官吏に対する一定の裁量権を認める、陪臣案。

 これは裁量権の中身も考えねばならぬし、報酬の額についてもある程度の基準を定めねばならぬから、手間は多くなる。とはいえ、四億五千万オールを集める手間に考えれば微々たるものである。


 その後、ヴァーノン卿を議長とする税収減臨時対策会議の設置が決まり、内務省と宮内省、法務省、文化省の幹部を議員とし、財務省の幹部を参与として参加させる事に決まった。この参与という職については、財務省の知見を利用したいが、現状で大きな権限を与えられぬため、権限のない参与という職を置いた。

 さらに、軍に対しては早期の解決か断念かを求められ、三月中に解決できなかった場合、あるいは有力な手掛かりを得られなかった場合、捜索は打ち切る事が決まった。枢密院に軍に対する指揮権はないので、無視して続ける事もできなくはないが、政争の種になるだけなので従っておくべきであろう。


 枢密院で解散した後、俺は騎士団本部に戻って報告を受けたが、進展はないようであった。

 アーウィン将軍が準備をさせていた部隊のうち、捜索に参加していなかった部隊を捜索部隊に加え、夜間も昼間と同規模の捜索を行う事になった。このため、魔将王軍を発見した場合に備え、俺とアーウィン将軍が交代で夜番を務める事となり、今夜はアーウィン将軍の担当となった。


 俺はアーウィン将軍の厚意に甘え、アキやエヴラール、リン達を連れて屋敷に戻った。

 屋敷に戻った俺はアレクとテリハと遊びながら、リンに口頭で指示を出してモレンク血閥として寄附の用意をさせる文書を作らせた。

 俺としてはモレンク血閥と家臣団、領地運営に影響がない範囲で、全力でお支えすべきであると思うが、アズラ卿はどう思うか分からぬ。アズラ卿に伝令を出しはするが、血閥総帥は俺であるのだから、気を遣いすぎるのも良くない。


 四日後。サントル・アンピールにいたアズラ卿が戻ってきた。魔導車の機動力を移動に活かすと、乗り物としての馬は近いうちに廃れるかもしれぬな。まあ魔力消費が大きすぎるので、それが解消されねば置き換わる事はなかろうが。

 俺が騎士団での軍務を終え、屋敷に帰ると、アズラ卿は俺の執務室で待っていた。ちなみに今夜の夜番はアーウィン将軍であるので帰っても問題ない。


「ジルさん、流石に四億五千万オールは無理ですよ。リロイなら十倍くらい大丈夫ですけど、オールとなると…ね?」


「確かにそうですが、そのうちの何割かでも負担できればと思うのです」


「ジルさん。別の話みたいに聞こえるかもしれませんが、ちゃんと繋がってる話なので最後まで聞いてくださいね」


「ええ、アズラ卿の言葉を遮ったりしませぬ」


「ありがとうございます。それじゃあジルさん、これをご覧ください。開発段階なので仮称ですが、こちらが魔力貯缶、こちらが魔力貯槽です」


 アズラ卿はそう言い、魔導具らしきものの設計図を二種、俺に見せながら説明を始めた。


 まず魔力貯缶とは、魔石などから抽出した魔力を保管しておくための小さい缶である。

 これまで魔導具に魔力を供給する魔石は、形だけでなく質についても個体差があったので、規格化に問題があった。これを解決するため、魔力を抽出して一時保管する魔力貯缶が開発された。

 魔力貯缶に魔力を補充する方法であるが、専用の魔導具を用いて、魔石から魔力を抽出し、魔力貯缶に充填する。魔石ではなく生物から直接魔力を補充する事も可能である。


 次に魔力貯槽とは、魔石や生物から抽出した魔力を比較的長期間保存するための魔導具である。一応は魔導具に分類されるが、民家ほどの大きさがあり、大きさに見合うだけの重量もあるので、移動は困難である。

 長期間の保存を可能とする代わり、魔力の出し入れに専用の魔導具が必要であったり、移動が困難であるから使用中に移動すべき魔導具には使えなかったり、難点はある。

 さらに、魔力貯缶の数万倍以上の最大容量を誇り、魔力貯缶が財布だとすれば、魔力貯槽は金庫であるそうだ。


「この二つの魔導具を使って、ジルさんの魔力をひたすら抽出してもいいと言うなら、かなりの額を出せます。というのも、帝国全土の交通行政について主導できそうなのですが、交通網の整備に際して大量の魔力が必要になります。供給が不安定で且つ高価な魔石では、この量に追い付きません。そこで、ジルさんの無尽蔵の魔力を使わせてもらえれば、魔石分の予算が浮いた上、交通網も大きくなりますから…あるいは全額をモレンク血閥が負担する事も不可能ではなくなります」


「私の魔力を使うのは構いませぬが…そこまで話が進んでいるのです?」


「はい。交通と魔法、それから通信を管轄する新しい省の設立を提案するかしないか、それを協議中でした。無断で進めちゃってごめんなさい」


「いえ、それは良いのです。ですが今の帝国政府には財政的余裕がありませぬ。省の新設など受け入れられぬかと」


「ええ。四億五千万オールも失うなんて、想定外も想定外ですよ」


「それはまあ…確かにそうですな」


 サントル・アンピールを出る前に農商官僚と建設官僚にアズラ卿を紹介したが、そこから一か月足らずで省の新設にまで話が進んでいるとは、アズラ卿の政治的手腕を侮っていたかもしれぬ。


 その後、話を纏めたアズラ卿は明日には帝都を出てアンセルムに戻り、色々と手配をしてくれる事になった。機動力を確保すると、軍事のみならず政事にも役立つな。

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