この世界ではありえない魔術
異世界転生をした彼は目標に向かって日々努力をしている。
何故か記憶が無い。
そんな特殊な状態でもこの世界で生き残るため、そして夢を叶えるために強くなろうとリーシェは様々なことを試した。
そして子供のころに思い描いた夢をかなえるべく、魔術学校へ行くこととなった。
その道中で新たなる魔術を考えるも、この世界では存在しない魔術を生み出してしまった。
「メリッサさん!ガードって言葉の意味は分かりますか?!」
人の名前などの固有名詞は日本名じゃないし、発音は少し変わっているがこの世界の主流言語は日本語で英語は存在しなかった。偶然英語と同じ意味があってもそれは偶然被っただった。
そんな異世界で始めて遭遇する英語。防御の魔術をガードと呼ぶ。これを偶然として済ませるのはかなり難しい。
「いえ……特に意味は無かったと思いますね。」
解散・・・・・・とはならない。もしかしたらその魔術を実現した人物は俺と同じ転生者かもしれない。ガードについて辿っていけばその辺が分かる可能性がある。
「その魔術はいつ誰が作ったとか分かりますか?!」
「一応は旧文明の頃からあるらしいですが……細かいいつ誰が使ったのかというのは不明ですね。」
旧文明。確か1000年前ぐらいの頃か。辿るのは難しそうだ。
まだ偶然の可能性は捨てきれないしろ、この世界に俺以外にも転生者や転移者がいる可能性がある。もしかしたら会える可能性もある。それはとても嬉しい。
……異世界転生者は一度に一人しかこの世界に存在しないなんて可能性もあるがまあ仮定に仮定を重ねるのは現実的ではない。
どこかで見たやつでそんな設定のがあったから超怖い。
まあそれはさておいて新しい魔術を考える。
ガードの耐久は消費魔力に影響するらしく、あくまで一時的な防御壁なためにそこまで耐久は重視しないらしい。
ということで手数の多い魔術を作ろう。
そんなこんなで1時間が経過した。
「結構余裕を持たせているので、一日ぐらいならばここで立ち止まっても問題ありませんよ。新しい魔術を考えることを優先しましょう。」
なんて言ってくれる女性弟子さんは天使に見えた。
まあ1時間悩んだだけで新しい魔術が作れねー!なんて愚痴ってたら全世界の魔術師に怒られると思う。0から作りだすのって普通に難しい。
火は速度が足りない。火の排出口を小さくして速度を上げることも考えたたが地味に難しい。しかも射程が短い。ヒートブレード(ナイフ並みの射程)としていつか使おう。
風は単体だとやはり威力が足りない。弓矢に付与して投げることで威力、速度がともに高く多少の方向操作ぐらいならば可能となる。これもありだが追尾性能が足りない。
今の俺だと30度の移動方向変更ぐらいしかできなく、あくまでギリギリで避けるような相手にならば強い程度の。できれば多角的に攻めれるような魔術を作りたい。
水は無理。近距離ならば当てれば殴った時並みのダメージを出せるぐらいにはなっているが、やはり速度も規模も足りない。
超高速で出せればダイヤモンドカッターだったかみたいな凶悪な武器になるだけにやや残念。
土は威力は十分。ガードは物理防御能力は低いらしく土魔術はガードに対してかなり有効らしい。ただし速度が足りない上に燃費が悪いためにうまい具合に追い込まないと当てるのは難しいし連発もできない。
女性弟子さん曰く、魔術規模の関係で俺は火の魔術の才能が一番あるらしい。他の魔術も十分使えるがちょっと水の適正が薄いそうだ。
この世界の魔術師は火、風、水、土、四属性の魔術適性を誰もが持っており、基本的には得意な魔術を極めるそうだ。
ということで色々考えて1時間、考え付いたのは魔力弾。ただ魔力を放出して弾とする一撃。
魔力を込めれば込めるほど威力、速度が上がるが燃費は死ねる。
ということで更にあれこれ試して1時間経過。若干燃費は悪いが拳銃並みの速度と威力で放てるようになった。
指一つから一発放つことが可能で同時には5発展開可能。この新魔術ができたことを女性弟子さんへと布告しに行く。
「メリッサさん!新しい魔術ができましたよ!」
「それは早いですね!せっかくなので試し打ちをしてみましょうか。」
そういってメリッサさんは2メートルほど離れた場所の地面に紋章魔術を発動し、地面から岩が盛り上がってきた。
「距離は大体ニレーン(約4m)です。とりあえずこの的に撃ってみてください。」
岩の的に対して手を指し指すべてを向ける。集中。集中。集中。
指先から魔力を放出するイメージを作る。そして相手を射貫く。
指から出された弾は岩の的へと向かいそのまま刺さる。硬さは不明だが威力はそこそこあるっぽい。やったぜ。
「これは・・・」
俺の魔術を持た女性弟子さんは少し困った様子で攻撃を当てた的を見ている。
「もしかして……今の魔術って微妙なやつだったりします?」
とても気になるので聞いてみることにした。3時間程度しかかけてないにしろ割と自信作だ。微妙な魔術だとしてもせめて何が悪かったかぐらい聞いておきたい。
「そうですね。すみませんがもう一度土の塊に向けて攻撃してください。」
「わ、分かりました。」
元々俺の魔術というのはこの世界ではありえない魔術らしいし、もしかしたら今の攻撃がこの世界の理に外れた魔術の可能性がある。
的に向けてまた手を向けようとすると、女性弟子さんが一つアドバイスをくれた。
「その攻撃に名前とかないのですか?名前があればその攻撃を素早く出せるようになるので無いのでしたら名前をつけることをお勧めします。」
魔術とは割とイメージすることが大切っぽい。故に攻撃に名前をつけることによって、名前を言うことによる攻撃のイメージがしやすくなると言った感じだろうか。
しかし壮大な名前を付けるのはとても恥ずかしいな。そもそもこの世界のネーミングセンスとか分からないし。銃弾をイメージして作った魔術だから”バレット”と名付けることにしよう。
「銃弾!」
名前を叫ぶと同時に指の先に溜めた魔力弾が目標へと目がけて飛び出す。確かに名前がある方が発動するのが早い気がする。
「やはり……これは……。」
「もしかして俺何かやっちゃいました?」
「まあはい……この魔術はかなり革新的というかかなり凄い魔術ですね……。」
無言のガッツポーズ。はしないが拳を握りしめる。
「へぇ!どんな感じに凄い魔術なんですか?」
ワクワクが止まらない。きっと新しいおもちゃを与えられた子供というのはこんな感じなのだろう。感情が高ぶっている。
「そうですね……今の攻撃はこれは魔術ですらありません。」
なんかディスられている気がする。でもかなり衝撃を受けているっぽいから言葉を選ぶ余裕すらないのだろう。
「魔術ですら無いってどういうことですか!」
「これはただ魔力の塊を放っているだけです。」
「ただそれだけだったんですか……」
でも確か凄いとか何か言ってた。女性弟子さんは馬鹿にするような冗談は言わないはずだし。多分何か別の所で凄い所があるのだろう。
「でも凄いって言いましたよね?他に凄いところがあるとかですか?」
「いえ違うんです……魔力の塊を放つ攻撃ができるということ自体が異例のことなんです。」
「え?」
どういうことだ。
「でも女性弟子さんも普通に魔術とか使ってますよね?」
「あれは術式を通して魔術として発動するこよによって、魔力の塊から魔術へと変化させているのであって……本来はただの魔力の塊は人や物を傷つけることはできません。」
ホワッツ。
「生活魔術で攻撃できるのも凄いですが、今回の魔力塊による攻撃が可能というのはとても凄いことです……。」
そもそも生活魔術って攻撃できないものなのか。
「魔力塊で攻撃できる利点って何がありますか?」
「まず生活魔術同様に術式展開が無いために予想外の所から攻撃をすることが可能です。」
「何よりは指令魔術との相性がとても良い点ですね。」
「指令魔術ってのは?」
「魔術の一種類で、簡単に言えば自身の魔力に対して指令するこよによってその魔術を操作することが可能となります。」
なるほど分からん。
「その顔は分かってい無いようなので、一度私が使ってみます。」
ばれてーら。
そういうと女性弟子さんは掌の上に白い正方体を生み出した。一辺30センチほどでかなり大きい。
「これは魔力塊ですね。そい!」
そういうと女性弟子さんは掌の上に浮いている魔力塊を的目がけて投げる。と思いきや的の左の方に投げた。ノーコンかよ!。
「意味を与える!」
そんな失礼なことを思ってたらいきなり魔力塊が右へと曲がり的へ進んでいく。方向転換が可能なのだろうか?。
「これが指令魔術と言われる魔術ですね。自身の純粋な魔力に対して命令をすることが可能です」
「攻撃方向を変えたり形状変化をしたりなど、汎用性が広く便利な魔術となります。一時期はこの魔術の可能性の高さから多くの魔術師がこの魔術を研究した。そんな魔術です。」
「なるほど。つまり使えない魔術だと。」
「まあそういうことになります。この魔術は”純粋な自身の魔力”にしか付与できないため、付与できる対象は魔力塊か出血した直後の自身の血液ぐらいでしかないんですよね。」
身体には物理的に魔力がついており、特に血液と髪は魔力を吸いやすい性質だそうだ。だから魔術師は髪を伸ばしている人が多いらしい(女性弟子さん談)。
ちなみに筋肉は魔力を吸いにくいため、魔術師は最低限しか体を鍛えないそうだ。
「ですが術式によって増幅された力。魔術は”純粋な自身の魔力”ではなくなるために対象とならなく、魔力塊はあのように大した威力ではありません。」
女性弟子さんはそうやって的に向けて指を指す。確かに的は殆ど傷がついていない。俺の魔力塊は指先程度の魔力でも十分な打点となったが女性弟子さんは巨大な魔力塊でも大した打点にならないようだ。
「このように魔力塊というのは何故か攻撃性能が異様に低く、血は流血した直後以外では効果を発揮しない上、強引に魔術を発動させるために生活魔術同様魔力効率が悪いです。」
「そのために一時期。六十年ほど前にとある魔術師がこの魔術の可能性を唱えたことにより多くの魔術師が研究をして諦めたという魔術ですね。」
「となると使い手はほとんどいない魔術なのでしょうか?」
「そうですね。私が知っている使い手はその可能性を唱えた魔術師一人だけです。」
「その人が使えるのだったらその使い方を他の魔術師に教えたらよかったんじゃないですか?」
「残念なことにそうはできませんでした。魔術師同士の戦いに置いて得意魔術の情報というのはかなり重要なことです」
「そしてその魔術師が生み出した指令魔術はその人物の主要魔術(戦いで重要な魔術)ともなるほどに強力な魔術だった。故に公開もできなく指令魔術の使い手は殆どいなくなってしまいました。」
「それって公開した方が良かったものなんでしょうかね?」
「難しいものですね。その魔術師はのちに戦争で大活躍して上級貴族になり二つ名を与えれるほどに強力な魔術師へとなりました。」
「ですが何かの拍子で簡単に死んでしまう。それが戦争です。故にその技術を広めて皆が使えるようにしても良かったでしょう」
「けれどそこから魔術の情報が洩れれば、その魔術は戦争で大活躍することなく殺されていた可能性が高いです」
「まあ結局は作った者が扱う権利があるわけですから、悪用しない限りは何とも言えないものですね。」
そういう女性弟子さんの雰囲気は少し悲し気だった。
ということで指令魔術を試してみることにした。女性弟子さん曰く魔力を意識して指令を出す。それだけで使えるがコツのいる魔術らしい。
「バレット!」
指先から魔力の弾が発射される。その魔力を意識して指令魔術を発動する。
「意味を与える!」
直後魔力の弾は下へと落下する。女性弟子さんの手本ではかなり急に曲がっていたが、俺の場合は緩やかにカーブを描いて曲がっている。
「少し慣れが必要ですがこの感じならば少し練習すれば慣れるでしょう。」
「威力速度共に悪くはないと思うんですが、実際この魔術って強いんですか?」
「強いです。魔術というのはエルフの使う風矢以外は全て直線的な攻撃となります。魔術師同士の戦いでは遠隔で魔術陣を形成し、相手を追い詰めるというのが基本的な戦いです。」
「ゆえに威力はそこまでですが、ある程度の速さを持った上で操作可能なこの魔術はかなり強力な手札となります。」
「あくまで主要魔術ではなく手札の一枚なんですね。」
「まあそうですね、普通に威力が足りないのでこれを軸に戦っていくのは厳しいです。」
そして色々指令魔術を試した見たところ。
拡散・弾がばらける。その分威力は下がる。
加速(速く)・早くなるがその分威力は下がる。速度が上がるために威力の低下率はそこまで。
追尾(追え)・狙った対象を追尾する。ただし威力、速度共にめちゃくちゃ下がる上に弾を放つ前に意味を与えないといけないから使い所が難しい。
この辺が思いついた中で使える指令だった。拡散と加速は威力が下がるのが辛いが普通にいい感じ。追尾は見せたときに女性弟子さんが超驚いていたが、威力と速度共に低く普通に使いにくかった。
後は大量の魔力を込めれば”爆破”なんかも行けそうだが厳しい。
また、俺が未熟なのか指令は3文字以内でないと効果が発揮しなかった。
基本的には通常弾と変化弾を主流に使っていくか。と言った感じだった。
そして翌日。完全に忘れていた上級貴族について教えてもらうことになった。
読んでくださりありがとうございます。
長くなりましたが次回魔術学校到達予定です




