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遠山村

新キャラ登場です。


「で、どうするよ?なんかいい候補は見つかったのか?」


朝食を食べ終わり、猿吉が話を切り出す。玄武組はほかの村に移るという予定だったが、どの村に移るかは決めていない。この1週間、長貴と青海が調べることになっていたが。


「それなんだけどね…あることは沢山あるんだけど……決まらなくて。青海さんにも頑張って貰ったのに申し訳ない」


「いえ!全然大丈夫です。何年でも調べて見せます!!」


「いや…こっちが待てないよ…」


この様子をみると青海は長貴の役に立つために頑張ったのだろう。微妙に目の下に隈がある。


「でも、候補自体はあるんだろ?」


「一応ね。稲山村と西方村、後は遠山村かな?」


「あ、遠山村も入ってるんだ」


「なんだお前、知ってんのか?」


「いや、元開拓者の人が遠山村を勧めてたからさ」


「へぇ、僕としては少し早いかなって思ってたけど元開拓者の人がお勧めしてくれるんだったらいいかもしれない」


「ちなみに何級の人なんですか?」


「2級らしい」


「!?マジかよ!お前2級の開拓者と知り合いなのか!」


「直家くんって結構知り合い多いね…。昨日も凛丸様に屋敷に招待されたって聞いたし…」


青海が何気なく聞いた松五郎の級を喋ったらかなり驚かれた。やはりかなり高い級なのだろう。本人を知っている直家からするとあまり信じたくないが。


「でも、2級の元開拓者だから。長貴の調べてきた二つの村のことも教えてよ」


直家としてはどうにも松五郎の提案というのに嫌な予感が拭えない。ポロッとこぼした死にかけた情報が怖すぎる。


「えーとね。稲山村は朝井村の次によく使われる村なんだけど、僕達にはもう余裕かなって。深層に行けば話は別なんだけど、それだったら他の方がいい」


「うん」


「んで、西方村なんだけど悪くは無いんだけどここからどうも距離が遠くてね…。人があまりいないんだよ。そうなるとあまり商人も寄らなくなるから物も売ってないし」


「た、確かにそんな村に行きたくない…」


「で、遠山村なんだけど。さっきも言ったけど上級者になるための登竜門のような場所で、僕らには荷が重い気がするんだ。開拓者として一流扱いになる4級相当の妖怪が中層、深層にでる。7級の僕達じゃ逃げることすら出来ないかもしれないって考えるとかなり危険だ」


「元から開拓者なんてのは危険だろ。いまさらな感じがするがな。まぁ、避けるにこしたこたぁねぇけどよ」


今までも危険でない時なんて皆無といってよかった。確かに猿吉の言う通りなのだが、だからこそ避けなければならないという考えも間違ってない。そして、それは猿吉もわかっている。


「要はそれだけの危険に見合うものがあるかどうかなんだ。書籍やまた聞きのような情報じゃ、どうもしっくりこなくてね」


「そうだったんだ…」


「行って確かめてくるのも悪くは無いけど時間が無駄になるし。出来ればここで、決めてしまいたいと思ってたんだ。だから、直家くんの聞いた元開拓者のお話をもっと詳しく聞かせてくれるかな?」


ここで調べて手に入る情報だけでは満足出来なかったのだろう。そういうことならと、松五郎から聞いた遠山村がどんな場所かを伝えた。


「なるほどね。実力的には早いかもしれないけども長く開拓者をやっている人の話を聞けるというのは価値がある。それに、西方村と対称的に売っている物も豊富か」


「いこうぜ」


急に猿吉が遠山村行きに積極的になる。物が豊富ということは、娯楽もあるということ。つまり、女を買うことに困らないのだ。猿吉はそれで即断した。


「……正直な野郎だな」


「どっちにしても他の候補がパッとしねぇならここしかねぇだろ?なら、色々物が豊富の方がいいにきまってんだろ」


「……うん、そうだね。猿吉君の言う通りだ。もし本当にダメだったら他に帰ればいい。他の開拓者の話を聞けるだけで行く価値はある」


「よっしゃ。決まりだな」


「……………」


確かに他の候補はあまり良いものが無いが、松五郎に薦められた遠山村というのがどうしても不安が残る場所で素直にうんとは言えなかった。


もう決まってしまったので覚悟を決めるしかないが。














「へぇーここが遠山村か結構いい雰囲気だね」


「朝井村と比べて活気があるな」


「そりゃ人の数が違うんだからたりめぇだろ」


遠山村。初心者ばかりの朝井村とは違い中堅かそれ以上の力を持つ開拓者が集まる場所だ。それゆえに1番人数の多い中堅が集まるこの村は開拓者の村の中でも一二を争う程規模が大きい。


「とりあえず、宿屋の確保と村の探索だね。手分けして探そう」


流石に宿屋も決まらない状況で開拓地に出る事は出来ない。そういう事で、それぞれが手分けして何処に何があるかなどを調べることになった。猿吉は真っ先に一番賑わっている所に走って行ったが。目的のお店を探しに行ったのであろう。青海がいるなかそういう態度を堂々と出せるのは尊敬はしないが凄い。


「こっちも結構酒場とかあるな」


直家が担当した方には宿屋などはなかったが食堂や酒場などがそろう場所でもある年季の入った開拓者達が多く見られる。雰囲気的には美味い店がある穴場といった感じだ。


その時、近くでぐぅっとお腹が鳴る音が聞こえた。直家ではない。そちらの方を振り向いて見ると15〜16歳の見た目の身長が155cmくらいと低い、短く切りそろえられたピンクの髪が特徴的な可愛い感じの女が酒場の壁の横に座り込み腹を抱えている。


「腹減ったっす……マジやばいっす。でも、お金もう無いっすし…」


ぶつぶつと独り言を呟いている。最初、直家はお金が無くなった開拓者がついに金銭が尽きて野垂れ死ぬ所かな?っと思ったが、どうにも開拓者らしくない格好をしている。だからといって一般人ではない。動きやすい小袖に長いスパッツのようなものを履いている。目立った武器の類も持っていない。まるで、忍者のような出で立ちだ。というか、忍者なのだろう。この世界にはいるらしいことは知っていた。


「ふぅん、忍者でも野垂れ死ぬ事があるんだな」


すこし、立ち止まってジロジロと見てしまったが助ける気もしないのでそのまま先に進もうとする。


「……このまま野垂れ死ぬくらいなら…適当な開拓者を殺して……ご飯食べるっす……」


凄まじく物騒な言葉が耳に入った。ギョッとして背後に振り向くと血走った目と目が合う。


「やべ…」


「よく分からない開拓者!覚悟するっす!」


力なく壁に寄りかかっていたとは思えないような速度で直家に襲いかかる。手にはどこから取り出したのか分からないクナイが両手に握られていた。


まさか、急に襲いかかってくるとはという驚きで多少動きが遅くなったというのもあるがそれ以上に凄まじい速さの動きで槍を取り出す前に懐に入られた。


やられる。なんだか、よく分からないままクナイの刃が直家の首に


「あ、やっぱダメっす」


届く前に直家に垂れかかるように倒れた。クナイが両手から落ちてそのまま意識を失う。


「何なんだよ……」


未だに状況を飲み込めない直家は意識を失った女を落ちないように反射的に抱いたまま途方に暮れるしかなかった。













「悪かったっす!もうしないっす!」


手足を縛り、それでも忍者なので油断できずに、更に身体を簀巻きにして、木にくくりつけている。あの後放置するという選択肢もあったがふと、忍者について教えてもらおうと思い木にくくりつけて目がさめるのを待った。10分もしないで目はさめたので直家として助かる。


「別に俺の知らない所でいくらやってくれても構わないんだけど」


「そ、そうなんすか?じゃあ何で……はっ!この鬼畜!外道!カス野郎めっす!そんなことしてまで女に飢えてるんすか!」


…………このまま放置して置いていきたくなってきた。面倒臭いがここまでやって拘束した手間を考えると離れるのも惜しい。しかたない、奥の手だ。


「……ほれ。腹が減っているのだろ?」


懐から出したのは笹の葉に包まれたおにぎり達。さっき買って来たばかりで、直家も食べたがこれは美味しかった。


「くっ!馬鹿にしないで欲しいっす!そんなに安い女じゃないっすよ!」


「血走った目と溢れ出るヨダレが無ければ決まっていたな」


可愛い女ではあるが、別に嫌がる女を抱くほど飢えてはいない。ただ単に、知的好奇心が働いたためだ。


「別にお前の身体には興味はない。知っていることを聞かせてもらえば良いんだよ」


別に知ったら最後!貴様を抹殺する!なんてのは無いだろうし色々聞かせてもらおう。


「私は八杉家の忍者だった。任務中に武達家の忍者に妨害されて任務失敗。任務失敗した者は死刑なので八杉の忍者の里に帰りたくない。放浪の旅をしてたらお金が尽きて野垂れ死にしかけた。これでいいっすか!早く早く!おにぎりを!くれっす!」


可哀想なのか、馬鹿なのか分からない女の経歴だ。本当かどうかも分からないが、あまりにも哀れなのでおにぎりをくれてやる。


手は使えないので直家が口に直接運び食べるピンク頭。おおよそ女とは思えないほどの勢いで食べる。危うく直家の手も食べられる勢いであった。3つあったおにぎりはすぐに無くなり顔色は少し良くなったがまだまだ足りなそうだ。


「これだけっすか!こちとら、命かけて全部話ったす!もっとよこすのが礼儀ってやつっす!」


なんか、思ったより面倒臭い事になった気がする。たいした情報も聞けずに終わったし、本当にこのまま立ち去ろうかと思い始める。


「頼むっす…。襲った事は謝るっす。こんな所でしにたくねぇっす」


「はぁ…」


こう、急にシュンとなり 素直になられると見捨てることがしづらくなってしまった。












「直家さん!これめっちゃ美味いっす!」


「そうか、よかったな」


ここであったのも何かの縁だと思い込み、近くの食堂に拘束を外して食べさせる。あと、自己紹介はすませた。ピンク頭の名前は(ほたる)というらしい。


「ふぅ、めっちゃ美味しかったっす。直家さんは生命の恩人っす。本当にありがとうございましたっす」


「別にいいよ。俺もちょうど腹が減っていたし、ついでだ。んでだ、お前これからどうするんだ?ここは開拓者の村だぞ?ほかの所に行ったほうがいいんじゃないか?」


「私は世の中の事とかよく分からないっす。生まれた時からずっと忍者として育てられてきましたし、それしか出来ないっす。一応お金はもっていったんですけど、騙されたり何だりですぐ無くなっちゃいましたし…。でも、忍者として戦うことは出来るっす。なので、開拓者の村まで歩いたんですけど…」


「野垂れ死にかけたと」


「そういうことっす。なので、直家さんは本当に命の恩人っす。襲ったりして申し訳ないっす」


なるほどな、忍者も世間知らずで里から出るとなんにも出来ないのもいるのか…。抜け忍対策では効率的でいいな。どっちにしても里に帰るしかない状況にできるわけだ。


「ま、これ以上は俺はなんにも出来ないから頑張って生きてくれ。食べるものも食べたし開拓者として戦うことできるだろ?俺はそろそろ行く」


「え…もういくんすか?」


ニコニコと楽しそうな顔から急に寂しそうな顔に変わる。


「仲間が待ってるからな。安心しろ金はちゃんと払ってやる」


「仲間……そうっすか。じゃあ、仕方ないっすね。……いつか、この御恩は絶対にお返しします」


急にかしこまり、姿勢も正座をし三指をついて頭を下げる。


「気にしなくていいのに。ま、次会うことがあればな」


こうして、遠山村の直家の探索は穴場と変な忍者に絡まれたという結果におわったのであった。


気がつけば60話目です。読んでくださっている方に感謝。

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