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中層へ7

遅くなってしまいすいませんでした!更新を再開します!


「流石にこのまま見つからずにというのは贅沢な話だったようだね」


大蜘蛛を見つけてから少し、距離は少しあるが大蜘蛛に補足されたようだ。紅く光る目がこちらを捉えて離さない。


「だから動けねぇうちにやっちまえば良かったのによぉ」


もう見つかったってしまったので伏せていた体制から立ち上がり刀を担ぎながらボヤく。


「僕はあの判断が間違っていたとは思わないよ。別の選択肢もあったことは認めるけどね」


「っけ、強情な野郎だ」


「長貴も猿吉だけには言われたくないだろうな」


「はっ、それこそ直家に言われたくねぇや」


猿吉が立ち上がったのを皮切りに長貴や直家か立ち上がる。後ろで休んでいた青海も立ち上がるが顔が青くてフラフラしている。なんとか、立ち上がったが体力も妖力も限界だろう。


「青海さん、大丈夫かい?」


「大丈夫、です」


これは聞き方が悪かった、大丈夫かい?と聞いて大丈夫じゃないですなんて、青海は言わない。


しかし、大丈夫じゃないとしても大蜘蛛が迫っている中逃げる事は出来ない。逃げる先にある朝井村の門が閉じてしまっているのだ。青海だけを逃がすことは出来ない。


「おい!青海!てめぇは下がっていろ。あの大蜘蛛は俺が倒す。妖術何て使わなくても倒せなきゃいけねぇ相手だ、俺がぶっ殺す。手出しすんじゃねぇぞ!」


これはいい、猿吉の発言に乗っかろう。無理をして死なれては困るのだ。限界を超えた妖術の使用は命に関わるのだから。


「なに1人で全部持っていこうとしてんだ?俺にもやらせろ。青海さんは手出ししないでよ。これは男と男の競走だから」


「……いいね。誰が先にトドメをさせるかの勝負か。面白そうだ僕も入れてもらおうかな?」


少し迷った様な顔をしたが猿吉の作った流れに乗ることにしたようだ。大蜘蛛相手に妖術無しはキツイが、無理して死んでしまっては困るのだ。そうなると、ただでさえ捕まえにくい妖術を使える人が、死なせた所として不評になり更に捕まえにくくなる。


それに、大蜘蛛とはいえ瀕死レベルの手負い。今動けているのだって、全力で体内の妖力を回復に回したからだろう。もはや、妖力はそれほど残っていないはずだ。妖術無しでも勝機は十分にある。


「……………そう、です、か。わ、分かりました。後ろに下がっていますね…」


流石にこの流れは露骨だったかなと、青海を見るが今にも倒れそうでそんな事に気をかけている程の力は残っていないようだ。計算上はもう1発打てるはずなんだが、慣れない環境で精神をすり減らすような中、元々気の強い方ではなかった為か消耗が激しいようだ。


ノロノロと、後ろに下がっていき隠れる様に木を背もたれにして座り込む。


「………かなり消耗が激しいようだね。なるほど、環境によって妖力の消費量も違うと。後、猿吉君助かったよ」


「戦えねぇ奴がいても邪魔なだけだ。それによ、妖術になんか頼らなくても大蜘蛛くらいは倒せるようにならねぇと先はねぇよ」


「それはもう少し先の話だろ。いまは、あんなバケモン倒せなくても別に悪いことじゃないだろうに」


「だからてめぇは直家なんだよ。甘々の甘ちゃんだ。強い奴らはな自分の限界を少し超えた所を常に進み続ける。だから強くなるのも早えんだよ。長貴の方針だから従っているけどよ、それに黙って従っているだけじゃいつまでたっても弱えままだ」


「死ぬよりはマシだとは思うんだけどな。つか、直家って悪口に使ってんの?喧嘩なら買うぞ?」


「はいはい、その怒りを大蜘蛛にぶつけてね。青海さんがああなった以上勝たなきゃ死ぬからね」


人の名前を悪口に使った猿吉に怒りたい気分だが、大蜘蛛が近づいてきているので一旦中断し大蜘蛛の方に槍を構える。


「ここに来る時は走って移動していたのに、随分とゆっくりこちらに移動して来るな」


「大蜘蛛も、脚が限界なんだろう。それに目があったけども僕らが逃げなかったからゆっくりと行っても大丈夫と判断したんじゃないかな?」


「いやに、頭の回る野郎だな…。こっちから行くか…」


「え、いや、時間稼ぎができ……あぁ!行っちゃた!」


猿吉の一言に、慌てて止めようとする。が、長貴が言い終わる前に猿吉が刀を担ぎながら全力で走っていく。1人で行かせる理由には行かないので、直家も長貴も猿吉に付いていく。


「おい!猿吉!1人で突っ走るな!」


「うるせぇ!嫌なら止めてみろや!」


結構差がついてしまったので今から追いつくのは無理だろう。それに最近は猿吉の方が脚が速い。


猿吉が走り出してから今度は大蜘蛛の脚が止まった。相手から迫ってくるのであればこちらから行くいつ必要は無い。体力の温存だろう。もっともそれほどの距離はないが。


「喰らえぇえええええ!」


猿吉が一足先に大蜘蛛に斬り掛かる。猿吉の突貫攻撃に大蜘蛛は前脚を上げて猿吉の攻撃を防ごうとする。


「ふっ!」


その動作を見て猿吉がニヤリと笑い、身体を屈ませて更に懐に入り刀を大蜘蛛の目に深々と突き刺す。大蜘蛛が暴れる前に刀を抜き急いで距離をとる。


目をやられて痛みに悶える大蜘蛛、そんなに中を上手く移動しながら死角から攻撃を加える猿吉。そこで、直家と長貴が合流。槍で突き刺し、猿吉と同様に攻撃を加えていく。


「はっ!あの大蜘蛛がやられ放題だ!いいねぇ!」


「かなり回復力が落ちてる!この機を逃さないで!」


「俺からするとまだ、暴れ回っているだけでも十分危険だけどな!」


俊敏な2人はいいかもしれないが、頑丈だが動きの鈍い直家は不意の一撃が一番怖い。


暴れる動きが少しずつ激しくなり、危険を感じた3人が距離をとる。目や脚から妖気を漂わせているところを見ると、傷を塞いだ様だ。妖気の残滓がまだ脚にまとわりついている。


「んな、妖力がまだ残っていたのかよ…」


「でも、これで最後だろうね」


「じゃなきゃ困るよ本当に…」


呆れたように呟く猿吉、結構飄々としている。あれだけ大言壮語して怯えられては困るが流石の胆力だ。と、直家は横目で猿吉を見て思うが、本当によく見ると額にかなり多量の汗をかいている。リーダーの長貴は今まで以上に真剣な顔つきで大蜘蛛の一挙一動、僅かな変化を見逃さないように注視している。


直家はそんな2人を見て狼狽える事だけはしないように必死に自らを保ち恐ろしい大蜘蛛と対峙していた。


一瞬、大蜘蛛の動きが止まる。睨み合う形となり、今度は大蜘蛛から仕掛けてきた。傷が少しとは言え癒えたので、動けるうちにということだろう。これには、集中していたとはいえ、思っていた以上に素早く、また距離が近かったことから猿吉と長貴は間一髪、避けることが出来たが直家は直撃だ。


「ぐぁぁ!!」


「ッ!直家!ちゃんと避けろ!」


「大丈夫かい!?直家君っ!」


もはや弱りに弱った大蜘蛛の突進攻撃とはいえ、人間に比べると圧倒的な重量を誇る大蜘蛛の高速体当たりだ、元の世界で言えばトラックに跳ねられたようなもので、直家もなんとか槍で防御して直撃を避けたが大きく身体が後方にはね飛ばされる。


「…………っつ、う。ぐっ!はぁはぁ。な、なんとか大丈夫!」


4、5mほど吹き飛ばされた直家だったが槍を支えになんとか立ち上がる。トラックに轢かれる程の衝撃だったが、直家もこの世界に来てからもはや身体の作りが違うのだ。元の世界の基準では人間を辞めている。そして、日に日に丈夫さが増している。


ヨロヨロと立ち上がった直家に大蜘蛛が動く度に血が吹き出す脚を動かしながら追撃してこようとする。


「させるかよ!」


大蜘蛛も動きが遅い。動き出すその一瞬前に猿吉が真横から突貫して深々と刀を腹に突き刺す。長貴もそれに連動して攻撃を加え、硬い脚を傷口から切り付けて、斬り飛ばす。脚が一本無くなった大蜘蛛は立ち上がれずにまた、地に沈む。


「はっ!ちょれぇなぁ!おい!直家も加われ!」


何度も何度も大蜘蛛を斬りつけ、返り血を浴びながら叫ぶ。


「んな無茶言うな!こっちは死に体なんだぞ!そんな簡単に動けるかよ!」


「知るかぁ!」


無茶苦茶だ。しかし、動けなくなった大蜘蛛にダメージを与えるチャンスではある。なんだかんだ死にそうな感じだが、全然死なない大蜘蛛を見るとまだまだ体力があるのかもしれない。次は無い最後のチャンスかもしれないと思うと動かざる負えない。


「く、くぁああ!!らぁ!」


雄叫びを上げて自分を鼓舞し槍を構えて走り出す。その勢いを持って、深々と突き刺す。そしてすぐに引き抜き何度も殴りつける。


「全然大丈夫じゃねぇか!甘えてぇんじゃねぇぞ!」


「身体中痛いわ!!ボケェ!」


必死こいて参戦したのに酷すぎる言い草。それに涙目で答えつつ手は緩めない。全員必死だ。大蜘蛛はまた動けるように脚で身体を庇い、暴れている。それが、最後の蝋燭の煌めきか、余力があり回復を待っているのか。区別がつかない。





時間にすると2分ほどか、攻撃を加え続け直家は何回かあばれる脚に当たったりもしたが、急に大蜘蛛の動きが止まった。


「死んだ、か?」


攻撃を止めて大蜘蛛を見る猿吉。それに釣られるように直家も攻撃を止める。動きは完全に止まった、身体中いたるところから血を垂れ流し刺し傷、斬り傷、ひしゃげた脚、切り飛ばされた脚、潰れかけた目、それが力なく地面に伏せている。


「………まだ、分からないよ。注意して。僕が確かめる」


大蜘蛛の眼の前に移動し、大蜘蛛が本当に死んだかどうかを確かめる。眼に光は無く、完全に力尽きていた。


「完全に死んでる。僕達の、勝利だ」


手にある刀を大きく掲げて勝利の報告をする。


「しゃあぁ!格上の大蜘蛛をぶっ殺してやったぜ!これで、村でデケェ顔できる」


「はぁはぁ、元気な野郎だな。はぁ、死ぬかと思った………」


猿吉は、刀を持ちながら両手を上げて喜び、直家は、槍を支えになんとか立っていて、喜びよりも死の恐怖から解放された安堵感が強かった。


喜び回る猿吉は調子に乗って大蜘蛛の死体に乗っかりそこでまた雄叫びを上げる。


「うぉぉおおお!」


「うるせぇ!静かにしろ!」


「まぁ、少しくらいは…。あんまりうるさいようだと僕がとめるからさ」


いくら何でも調子に乗りすぎだろう。大蜘蛛の攻撃を直でくらい、身体中の骨が軋む今、あいつの声一つで体に響く様な気がするのである。


「ん?おい!おめぇら、誰か近づいて来るぞ」


「なに?誰かってことは妖怪じゃない?」


「ああ、あー、もしかして朝井村の門が空いたんじゃねぇか?」


「なら早く帰ろうぜ…。俺はもう限界だ。青海さんだってあんな状態だったし」


「いや、まだだ。もう少し我慢してもらうぜ」


「何でだよ……」


「折角この大蜘蛛倒したのによ、素材とか、討伐証明だとか持ってかねぇと割に合わねぇだろ?なあ、いいよな長貴!」


「……悪いけど、直家君は青海さんの所に行ってもらえるかな。疲れてるのは分かるけど僕と猿吉が剥ぎ取りをするからその間」


「まぁ、そういうことなら」


考えてみれば当たり前のことだ。これだけ苦労したのにそのまま帰ってしまうと骨折り損というか、確かに勿体ない。


大人しく青海さんが休んでいるところに戻り、事情を伝えてそこで暫く休む事になった。


「…………倒した大蜘蛛っていくらくらい貰えるですかね…」


そんな中青海さんが話しかけてきた。確かにそれは直家も気になる所だ。


「どうだろうな?よく分からないけど、これだけ苦労したんだから沢山欲しいよ」


生き延びただけでも、贅沢なことなのかもしれないがそこは、生き延びてしまった人間の強欲さ、この位は望んでもいいだろう。


「ふふっ、そうですね。沢山欲しいですね」


何を買うか、そこまでは何も思いつかないが、生きに伸びたという実感が湧いてきて、こんな少し俗っぽい会話が心底心地よかった。


今まで、2日に一回更新をしてましたが、なかなか時間が取れなく更新出来ない時も出てきてしまいそうです。それに2日に1回も時間の都合上出来なくなるかもしれないので4日に1回にしたいと思います。それでも、投稿出来なくなる時もあるかもしれませんが辞めるつもりは無いので少ししたら開いてみてください。これからも読んでくださると嬉しいです。

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