社山城下町
感想よろしくお願いします。
そんなこんなで早3日目です。野宿にも慣れてきた頃で、順調に見た目がホームレスぽい見た目になって来ました。身体洗いたい…。
「開拓地の近くにある社山城下町に着くぞ」
との事、社山城下町とはこの国の5つある城の一つである。中心に立見城がありその西に湯地城、北に社山城がある。この、社山城下町は開拓者達の大きな拠点でもあるので良い武器などを買いに来る時などはここに来るらしい。また、妖怪の貴重な部位なども直ぐに周辺の開拓者達の拠点にされている村から集まって来るので、経済的にも潤っているという。
金のある開拓者達は、ここに自宅を持ち武士格の扱いを受けている人達もいるという。だがここに来る開拓者のほとんどは、村から出てきたばかりの開拓者になろうとしている人で、1回情報の集まる城下町によって自分に向いている拠点の情報を聞くらしい。というか、俺もその口だ。
「やっぱり大きい町なのか?」
「そりぁそうだよ。立見城下町の次に大きい町らしいからな。俺も初めて行くが。それでも湯地城下町も村からすれば遥かに大きい町だからなぁ、それ以上ってのは想像が着かんな」
「いい町だったらいいなぁ。開拓者が多い町だから血の気が多い人が多そうだからなぁ」
「あぁ、そうだ、なまじ腕力が強い連中が多い奴が沢山いるから治安の為の巡視とか武士格の強い人を使っているらしい。だから治安自体は他の城下町よりいいらしいぞ。逆に言えばなんか悪い事をすれば大変な事になるぞ、気を付けろよ」
後半は少し笑いながらこちらに言ってきた。そんな事を出来る人では無いことは分かっているはずで、しかも、そんな話を聞いたら心に刻んだ位だ。意地が悪いやつだ。
「とはいえ、暴力沙汰はご法度だが、商人たちの詐欺まがいの行為に関しては手を打てていないらしい。舌戦では商人たちには勝てないって事だろ。これは本当に気を付けろよ。各地の商人たちが集まる所だ、油断するも身ぐるみ剥がされるかもしれない」
「………なんか、疲れそうな町だな…」
「人が集まればそういうものなんだろ」
元の世界で人波には慣れているはずだが、そんな鼻っから騙してくるような輩が沢山いると思うと嫌なものだ。長く、暮らしていると疑心暗鬼に陥りそうだ。だから、新人開拓者達は早々に自分の行く拠点を決めてそこに流れるのだろう。
「お前は変に人間不信な所があるが、上手いやつにはコロッと騙されるかもしれんな。次に会うときに借金塗れは勘弁だからな。金は無いぞ」
「今から断って置かなくても……」
「ははは、冗談だ。さぁ、先を急ぐぞ」
長い長い登り坂を登りきり、下を見てみると大きい社山城下町が見える。城自体はあまり大きくなくてどちらかと言うと小ぶりだ。それに、あんまり防衛に力を入れていないように見える。どちらかと言うと対人用というか、対妖怪用と言った方が良さそうだ。その代わりに、城下町が大きい。これが初めて見る城下町なのだが凄く華やかで大きく、長屋が沢山あり色々な人が行ききして、ここから見ても活気があるのが分かる。町に近づくたびに大きな道に整備されていて、商人たちがよく来る町というのは本当なんだろう。
直家達が通っている道はどちらかと言うと町のメインストリートに繋がっている道ではなく、あまり商人が立ち寄ることが無い様な村々に繋がっている道なので商人たちとはあまりすれ違わないはずだが、それでも色々な人とすれ違っていた。昔の日本の行商人の様に天秤棒(長い棒の両端に荷物を吊るして担いでいるアレ)を担いでいる人や、手紙等を運んでいるのだろうか飛脚のような人、開拓者のような人、多種多様な人を見れていた。
「どうだ?町に行くのが楽しみになってきただろ?記憶が無いのだからあれだけの人混みは初体験のはずだ。驚くぞ」
前の世界では引きこもりとは言え、全く外に出なかった訳では無い。お祭りにも言った時あるから多分どんな人混みにも驚きはしないが。しかし、全部が全部新鮮なものばかりだ。昔の日本の感じに似ているが、そんなもの現代っ子の直家が知るはずがない。むしろ、ファンタジーもので西洋風の奴を見飽きている直家からしたらこの世界の町は見たこともないようなもので刺激に満ちている。なので、こう答えた。
「記憶が無い俺からすると人混みより、色んな種類の人がいることに驚きだよ。それより、伊吉はこういう町に何度か来たことあるの?」
「ん、ああ。村じゃ出来ない事が多いからな。それを依頼したり、物を買ったり。前に捕まった時もそれの為に町に行ってたんだよ。それで、帰りに近道を使おうと獣道歩いていたら山賊共と遭遇したんだがな」
「それもそうか。慣れてないと道案内なんて出来ないもんな」
「そういう事だ。おっ?見えたぞ」
話しているうちに色々な家屋が見えてきた。というか、妖怪とかが出るような世界なのにここには囲いとかないのだろうか?ない方が町がいくらでも拡張できるからなのかもしれないけど、危なく無いのかな?検問所とかも無いし、怪しい人とか入り放題じゃないのかな?という事を聞いたら。
「京楽なんかは土壁と堀が町を囲っているらしいけど、普通はそんなことしねぇよ。お城とかは自分の所だけで堀と土壁作るから町全体になんてそんなに金は無いんだろ?確かに怪しいやつも入り放題だけど、金持ち連中や武家の連中はちゃんと家を壁で囲っているし、番所もある。第1ここは開拓者のような奴らの多い町だ、こんな所でそんな事をやる勇気のあるやつはいねぇよ」
「なるほど、それもそうか」
「それに、戦乱が続いている中央とは違ってここはまだ平和だからな。そんなに他国の間者なんての疑う必要が無いんだよ。国境の要所には関所が置かれているしな」
「なるほど変な人は入れないようなシステム自体は出来てるんだら。勉強になるなぁ」
「まあ、常識に入るからな。覚えて置けよ?」
「わかった。町に着いたね」
話しているうちに町に着いて、裏道の様な所を歩いている。このまま、大通りに出て色んな物を見てみたいので、早足で人の声が沢山聞こえるところまで行く。それを見て軽く走りながら直家に付いてくる。若干苦笑いしているが。
「おお!賑わってるな!」
今まで歩いていたのはどちらかというと裏通りと言われるような道だったが、この町の一番大きい大通りに出たら全く雰囲気が違う。色々な物が売っていて、屋台や出店、天秤棒を持った行商人、それぞれが大声を出して宣伝していた。道を歩く人の顔も明るく着ている服も華やかで、美味しそうな食べ物の匂いが鼻腔をくすぐり、活気に満ち満ちているのが分かる。お昼時というのもあるのだろう、立ち食いの屋台に人が沢山群がって食べている。凄い美味しそう。というか、今すぐ参加したい。お腹減った。
「あれ?」
そういえば、村ではお昼は食べないがここでは食べるのだろうか?軽食だから違うのか?という事を聞いたら。
「ああ、金があるからだろ?俺の所は貧乏農民だからなぁ、そんなお金が無いだけだ。よく見てみろ、あいつら夏なのにけっこういい服着てるだろ?それか、開拓者だ。あいつら享楽主義な所あるから金貯めないんだよ。ほら、あいつなんか腰に刀差してる」
そういって、蕎麦のような物をチュルチュルと食べている濃いオレンジ色の髪色で、背のかなり低い160無いくらいの小さな若い男を指さす。言っては悪いとは思うが、背が低いのに刀が平均より長いのを使っていて腰に指していて、鞘の先端が地面スレスレの所にあり服もブカブカというのも相まって子供の仮装のような感じで不格好である。
「………色んな人がいるんだな」
「あれもお前と同じ初心者っぽいな、キョロキョロしながら食ってるお上りさん感全開だ。ああいうのは商人たちの餌食になるから気を付けろよ」
「…………」
人の事は言えずに黙り込む。お上りさん全開でここら辺を歩いていたのを間接的に注意してきたのだろう。あ、さっきの小さい男がニコニコとしている身なりのいい男に話しかけられている。
「ほらな」
「あ、でも、追い返した」
小さいのに凄い剣幕と大声で他の狙っていた商人たちも睨んで追い返す。小さいのに凄いなぁ。小さいのに。馬鹿にしてるわけじゃないよ?もう食べ終わったのか、腕を組んで偉そうにしているオレンジの小さい奴は屋台でもう一杯笑顔で頼んでいる。
「まぁ、色んな奴がいる。あいつは我が強そうで組む奴は苦労するだろうなぁ。お前はちゃんと相手を見て決めろよ。」
「そうだな。でも、どうやってそういった同じ開拓者に会えるんだろう?開拓者が集まるところでもあるのかな?」
「あぁ、あるぞ。というか、今からそこに向かう。どのような開拓地があるか、どのような状況か、どんな人がいるかとかそういった情報が集まっている所があるんだよ。初心者達は皆初めはそこに集まる」
「へー、結構便利だなぁ」
「柳川家が主導で色々と開拓者を支援しているらしいぞ」
考えてみればそうかもしれない。国からすれば黙っていれば妖怪達に農地が奪われていくのだ。それを抑えてくれる開拓者はありがたい存在なのだろう。それにもしもの時は心強い戦力にもなるし、開拓地の妖怪達から取れる素材は貴重なものばかりだ。特にこの社山城はその恩恵をもろに受けているのでスムーズに開拓者になれるように支援するのは大事な事なのだろう。
「さて、俺はそこまで案内したらお別れだな」
「え!?そうなの!?」
「当たり前だろ。これ以上は俺も知らない」
「それはそうだけど…。ていうか俺いま無一文で、このまま伊吉にいなくなられると今日何も食えないのだけど」
「大丈夫だ。直家用の資金は貰ってきた。それにお前が前に使っていた槍を売っぱらって金にして、それだけあればしばらく何とかなるだろ」
「預かってたんだ…」
「言ってなかったっけか?」
言ってない。初めて聞いた。だが、まぁいいや。まさか正勝様も無一文で放り出しはしないだろうから、あるだろうとは思ったけど。確信を持てなかったのは多分正勝様の人徳の性だろう。
それからそこそこ大きい開拓者達がよく使っているという武具屋があるらしいのでそこに行き、元々使っていた槍を売りはらい銀銭3を受けった。ついでにと預かっていた銀判も1枚貰った。というか、さっきから疑問に思っているけど伊吉ここら辺に詳し過ぎない?と聞いたら、松五郎に色々聞いてきたという。直家に言ってもよく分からんだろうからと、松五郎から色々聞いていたらしい。松五郎さん、本当に面倒見がいいな。たぶん開拓者時代もそんな感じでお世話になった人も沢山いるだろうな。
「さて、次は開拓者組合所に行くぞ。そこで、開拓者登録をするぞ」
「そんなことすんの?」
「するらしい」
当たり前だが、伊吉はやる事を教えてもらっただけで何故やるのかは分からない。多分、1人1人が高い妖力と戦闘技術を持っているある意味有用だが危険な奴らだ。不穏分子にもなりうる奴らなので、国がどれだけの人数がいるか、どのくらいの実力かを知っておきたいのだろう。
「それしないとなんかあるの?」
「なんか、妖怪達の素材とかを売れないらしい」
「あぁ、なるほど。ちゃんとしてんだなぁ」
なんか思ったより遥かに制度が整っていて感心する。この町も活気があるし、なんか平和そのものような感じだ。戦乱が近づいているらしいというのも、嘘のようだ。とはいえ実際の所は山賊がよく来るようになったことくらいしか実体験がないから、正勝様から聞いたことしか知らないのだが。
「さて、着いたな。ここだ」
松五郎から貰ったのであろうか、何か地図のような物と睨めっこしながら進み、顔を上げて指さした先に大きな木造の建物があった。目立つ建物で周りが黒く塗られた木の板で囲まれ真ん中に門が付いている。その奥に屋根が瓦で完全木組みの3階建て位の高さの大きな建物があった。今まで見てきた中で瓦葺きや土壁などは使わずに全て黒漆のようなものが塗られた木材で建てられている豪華な建物であった。
「本当は、ここの町の規模じゃこんなに大きくて豪華な素材を使って建てることは出来ないらしいけど、ここは妖怪達の素材を売って金を儲けているから出来るらしいぞ。松五郎が言っていた」
確かに凄い。元の世界でも残っていたら重要な文化財とかになっていたであろう。
「さて、俺の仕事は全部終わったな。俺はもう帰る。これで本当にしばらくお別れだな」
「なんか、いやにあっさりしているな」
「別に湿っぽくする必要は無いだろ。拗ねるなよ。どうせ来年の今頃に会えているんだ。楽しみにしているぞ」
「………そうだな。別に拗ねているわけじゃない。ただ、これからしばらく開拓者として頑張っていくのかと思うと、少し気が重いだけだ」
「まぁ…な。俺はお前が頑張っているのは知っているが、あんまりお前に向いている仕事だとは思わない。だけど、ここまで来たらもう腹を決めろ」
もしかしたら、伊吉が直家から早く別れようとしているのは直家のまだ決めきらない心を決めさせるためなのかもしれない。村ではあれだけ別れを惜しんだ優しい奴だ。確かにここまで来たら早く腹を決めた方がよい。
「……わかった。その通りだな。そんな事を言っている暇なんて俺には無いんだった」
その心遣いを無下にするわけにはいかない。まだ決めきらない所は多々あるが、伊吉前だけでもカッコをつけないと。
「一年後を楽しみにしていろよ!色々と成長して帰るぜ!」
さっき伊吉が言った湿っぽいのは直家も苦手だ。これでお別れなら笑顔で別れよう。男同志に涙の別れは似合わない。それは、伊吉もわかったのか、いい笑顔で
「あぁ!楽しみにしているよ!」
こうしてこの世界に来て始めて出来た親友と暫く別れる事になる。
これから村の庇護を離れて独り立ちだ。ほんの一年前まで部屋に引きこもっていた自分が今の自分を信じることが出来ないだろうか?こんな世界に飛ばされて、色々運がよく村で住ませてもらえていたが、毎日が地獄の様な稽古に耐える事が出来るとは自分でも思わなかった。結果的にやれば出来る、やりきれる人間だった。
こんな自分にもっと早く気付けていたらと思う時もあるがやっぱりこんな世界に飛ばされて追い詰められないとやれない、腹を決めることが出来ない人間なのだろう。
「まぁ、本当の自分うんぬんなんて考えている暇なんてないな。まずは、やるべき事をやらんと」
そう言い西の方に傾き始めた日の光に眩しそうに目を細めながら目の前の開拓者組合所を仰ぎみる。
自分が色々と考えながら行動出来るほど、器用な人間ではないことは直家は充分知っていたから。
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