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伝説の召喚士、禁断の召喚術を試す ・・・500匹のスライムどうする?  作者: てるるん
第4章 召喚士、剣士、魔術師……はちゃっけ冒険開始
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第1話 新しい仲間と出発!

 王都の冒険者ギルド。


 朝のギルドは、いつも通り冒険者たちの声で賑わっていた。


 その片隅で、フロウベルはテーブルに頬杖をつきながら、向かいに座るリンナを見つめていた。


「ねぇ、リンナ」


「なに?」


「文官さんが言ってた『街道の魔物』の件、あれ、私達への指名依頼なのかな?」


 リンナがキョトンとした目で、フロウベルを見て、


「そういえば、そうね? なにも言ってこないし」


「ま、まさか……もう他の人が受注してたりして。わ、私の冒険が!!」


 あ、慌てて騒ぎ出すフロウベル。


「落ち着きなさい。今、イリアさんに聞いてみるから。」


「う、うぅ……お願い……」


 リンナは席を離れ、受付のイリアのところに行き声をかける。


「イリアさん、この間王宮に行ったとき、文官さんから、街道に魔物が出たからギルドに依頼出すって聞いてたんですけど、もう出てます? 出来れば受けたいんですけど。特にうちの暴走娘がですが……」


 苦笑しながらイリアが受付伝票を見ている。


「街道の魔物の件ですね……あら、それなら既に、『無敵美少女ブルー&サファイア』で指名依頼で受領されてますが?」


「へ? いつ? 私たち聞いてないわよ!」


 さすがにリンナもイリアに食ってかかる。


「そ、そう言われましたも……」


「誰が、勝手に受領したのよ!」


 このまま依頼の存在を知らずに放置していれば、依頼は未達成となり、ギルドの信用にも関わる。場合によっては、受注した冒険者の評価にも影響しかねない。


「おいおい、俺たちも何か受領されてることになってないよな!?」


「マジかよ!?」


 そこにギルドマスターが現れた。


「お前らに何騒いでんだ? うっせぇぞ!」


「実は……」


 イリアが経緯を説明する。


「王宮からの指名依頼だったからな。断る理由もねえだろうと思って、俺が受領しといた。がはははは!」


「ありますよ!! 本人に確認したり必要でしょう!」


 リンナの声がギルドに響いた。


「いいじゃねぇか、俺の独断だが、どうせ断らんだろう?」


 笑いながら話すギルドマスター。全員、その言葉に固まっている。イリアに至っては般若の如く怒りをあらわにしている。低い声で、


「ギルドマスター……」


「何だ……よ……?」


 イリアが怒っているとわかり、言葉が尻すぼみになっていく。


「正座」


 床を指差し、ギルドマスターを威圧するイリア。


「な、なん……で……」 


「せ・い・ざ!!」


「は、はい」


 床に正座するギルドマスター。そこからイリアの小言が延々と続く。


 ギルドマスターがイリアに怒られている時、事情が分かったフロウベルとリンナは、


「もう、受領されてるなら行かないとな」


「よかったぁ。私の冒険!」


 フロウベルだけはギルドマスターにグッジョブと親指を立てる。


「はぁ、まぁ、受ける気だったからいいか。いつから行く?」


「そうですね。早めに行きたいですが……」


「あら、なにか心配事?」


 イリアが聞いてくる。


「戦闘面って主にリンナに任せてますけど、結構負担ですよね?」


「まぁね……フロウベル自身に戦闘少ないし、召喚獣だよりだと、過剰戦力になるし……」


「そうなんです、バランスが悪いですよね。なので、わたしはカーちゃんを主軸の支援回って、後方援護の方を連れていきません?」


「心当たりでもあるの?」


「ミルファを誘いましょう」


「ミルファ? あの子、ルーランのパーティに入ってるでしょ?」


 リンナは、手にしていた飲み物を置いた。


「ええ、だから、今回は臨時でお願いしようかと。」


「確かに昨日、これから一緒に冒険するなら、魔法使いがいたほうがいいって言ってたけど」


「そうです。前衛はリンナ、後衛の魔法はミルファ。私は召喚と回復です。完璧な布陣です!」


「自分で完璧って言うのはどうなのよ……」


 リンナは呆れたように息を吐いた。


 とはいえ、考えそのものには異論がない。


 自分が前衛を務め、ミルファが後方から魔法で援護する。フロウベルは召喚獣による支援や、必要に応じて回復を担当する。


 3人なら、それぞれの得意分野を生かせるはずだ。


「たぶん、これからも場合によっては、他の3人にも声かけることになると思うんですよ」


 たしかに、彼女たちはDランク冒険者だが、Cランクに近いDである。


 これからの付き合いを考えると、悪い話ではない。


「じゃあ、ミルファが今どこにいるか、聞いてみましょう」


「はい!」


 フロウベルは勢いよく立ち上がった。


 ……その足元では、青いスライムたちがぷるぷると揺れていた。


「みんな、今日はまだ、出番がないので、あそこでイリアさんに怒られているギルドマスターを訓練所に連れて行って、ボコってきてください」


 ぷるっ。


 ぷるぷるっ。


「よし、いい返事です!」


 その言葉に、一斉にスライムたちが動き出し、ギルドマスターを訓練所に運び去っていった。


 カーバンクルも一緒についていったようである。


「ギルドマスター、ご愁傷様」


 さすがにリンナもギルドマスターを擁護しないらしい。

 

 フロウベルはギルドの受付へ向かった。


 今まで怒っていた対象が、スライムたちに拉致られてぽかんとしていたイリアは、2人を見ると、いつもの柔らかな笑顔を浮かべた。


「なにか、御用ですか?」


「イリアさん、ミルファがどこにいるか、ご存じですか?」


「ミルファさんなら、午前中は魔法の研究所に顔を出すと言っていましたよ。そろそろ戻ってくる頃じゃないでしょうか」


「ありがとうございます!」


 フロウベルはぺこりと頭を下げた。


 その横で、リンナがふと受付の周囲を見回す。


「……今日は、イリア専用スライムがいないわね」


 イリア専用スライム。それは、いつの間にかイリアに手なずけられたスライム数匹。


 面白くないフロウベル。絶対に命令を聞かないわけではなさそうだが……


「あの、裏切り者たちなら、同じく訓練所です」


 ちょっと、つんけんに答えるフロウベル。イリアが苦笑する。


「ギルドの訓練場でお仕事中です」


「お仕事?」


「冒険者さんたちの訓練です!」


「……何をさせてるのよ」


「いえ、前回、ギルドマスターが訓練に使うと言ったんで、そのまま、任せてたら結構好評で。」


 フロウベルは笑いながら話続ける。


「死なない程度に、全力で戦ってもらっています!」


「訓練の意味、分かってる!?」


 リンナの声がギルドに響いた。


 受付の向こうで、イリアは困ったように笑っている。


「今のところ、大きな怪我はありませんよ。カーバンクルさんもいますから」


「そういう問題じゃない気がするんだけど……」


 リンナは額に手を当てた。


 フロウベルは、そんなリンナを不思議そうに見つめる。


「大丈夫ですよ。カーちゃんには、ほどほどに回復するようお願いしてありますから」


「ほどほどって何!? ほぼ全力でボコってるのに!?」


「あの冒険者たち、私のこと『顔はかわいいのにボリュームがなぁ……』とか、陰で言ってやがったんです。ほどほどで十分です。」


「あ、そりゃあ、あいつらが悪い……」


 そんなやり取りをしていると、ギルドの入口から一人の女性が入ってきた。


 淡いラベンダーシルバーのロングヘアを揺らし、魔法使いらしい装備を身につけたミルファだった。


「あれ? フロウベルさんにリンナさん。どうしたんですか?」


「ミルファ!」


 フロウベルは、待ってましたとばかりに近づいた。


「一緒に冒険しませんか?」


「……え?」


 あまりにも直球な誘いに、ミルファは目を丸くした。


 隣でリンナが、軽く肩をすくめる。


「ミルファ、私たちが受ける依頼で臨時でパーティーに加わってほしいのよ。前衛は私、後衛の魔法はあなた。フロウベルは召喚と回復で支援する。どうかな?」


「私が……お二人と?」


 ミルファは、少し驚いた様子でフロウベルとリンナを見比べた。


「はい! ミルファの魔法があれば、できることも増えます。もちろん、無理にとは言いませんけど」


 フロウベルは、いつになく真面目な顔で続けた。


「一緒に冒険できたら、心強いと思ったんです」


 ミルファは、しばらく黙っていた。


 ダンジョンで助けられたときのことを思い出す。


 フロウベルは突拍子もないことを言うし、リンナはそのたびに振り回されているように見える。


 けれど、2人とも仲間を見捨てない。


 そして、自分たちの力を誇示するためではなく、困っている人を助けるために使っていた。


 それに、自分がこの二人にどれだけついて行けるか試してみたい。


「……私でよければ、ぜひお願いします」


 ミルファは、笑顔で答えた。


「本当ですか!?」


「はい。私も、もっと魔法を使いこなせるようになりたいですし……お二人となら、いろいろな経験ができそうですから」


「やった!」


 フロウベルは両手を上げて喜んだ。


 リンナも、ほっとしたように笑う。


「これからよろしくね、ミルファ」


「こちらこそ、よろしくお願いします!」


 こうして、フロウベル、リンナ、ミルファの3人パーティーが結成された。


 ……もっとも。


「ところで、パーティー名はどうします?」


 フロウベルが、唐突に口を開いた。


「いらない!」


 リンナが即答した。


「えー。無敵美少女ブルー&サファイアに、魔法使いのミルファが加わるんですよ?」


「だから、その通り名をやめろって言ってるでしょうが!そもそも、パーティー名は変更できない。悔しいけど……」


「ええ……無敵美少女ブルー&サファイア+1にしたかったのに……」


「増やすな!! あと、あんたもその通り名を気に入ってなかったでしょ!」


 ギルドの中に、リンナの叫び声が響き渡った。


 ミルファは、ぽかんとした顔で2人を見つめていた。


「……えっと。その名前って、いったい……?」


「聞かないほうがいいわ」


 リンナは遠い目をした。


 フロウベルは、満足そうに頷いている。


「もうここまで広まってるなら、受け入れて、いい方に切り替えようかと」


「受け入れるな!」


 受付のイリアが笑顔で声をかけてきた。


「それでは、王都近郊の街道で魔物の情報及び討伐依頼にいかれるのですね」


 フロウベルの目が、きらりと輝いた。


「はい!」


「まだ詳しいことは分かっていませんので、情報集めからになりますが、十分に気を付けてください」


「了解したわ」


 リンナが答える。


「行きましょう!」


「まだ準備できていないでしょう。明日以降にするわよ」


 リンナが慌てて止める。


「そうですね、私も身支度などの準備をしないと」


 ミルファも真剣な表情になった。


 街道は、商人や旅人が行き交う場所だ。


 魔物が増えれば、被害が出る可能性もある。


「明日、朝一で街を出て、魔物が頻繁に出る街道を目指す」


 リンナの言葉に、フロウベルは勢いよく頷いた。


「はい!」


 3人は、出発の準備を整えることにした。


 必要な道具を確認し、食料を用意する。フロウベルは念のため、いつものお菓子も袋に詰めた。


「……それ、必要?」


「必要です!」


「フロウベルには必需品なんだね……」


 ミルファは苦笑した。


   ◇


 翌日。


 王都の門の前に集合した、フロウベル、リンナ、ミルファ。


 スライムたちも、集まっている。


 若干、不機嫌な顔のフロウベル。


「どうしたの、冒険を楽しみにしてたのに?」


 リンナが声をかける。


「490」


「???」


 謎の数字に、ハテナ顔のリンナ。


「あいつら、ホントに裏切ってイリアさんのところに残りやがった!!!」


 スライムが10匹ほど、イリアのお掃除手伝いで勝手に残ったらしい。


「あのスライムたち、勝手すぎないか?」


 リンナもあきれ顔である。ミルファも何と言っていいのかわからない。


「まぁ。いいです。とにかく行きましょう」


 そして、王都の門を抜ける。


 青空の下、街道が遠くまで続いていた。


 フロウベルは、その先を見つめて笑った。


「さあ、新しい冒険の始まりです!」


「切り替え早いわね……今度は、ちゃんと普通の冒険にしてよね……」


「普通ですよ?」


「その返事が一番信用できないのよ!」


 リンナの声と、ミルファの笑い声が街道に響く。


 こうして3人は、王都近郊で増えているという魔物の調査へ向かうのだった。

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