第16章 007 魔王になりたい少年
リーシェルのターンとなるが、次のカードを引かない。
大和は「どうした? カードを引かないのか?」と問うとゆっくり首を縦に振るった。
「僕の負けだ。降参する」
残りデッキのカードは大和の方が少ないが、場に高コストのニューセイントドッグガールというカードが存在しており、リーシェルの残りのデッキ枚数7枚ではそのカードを越えることができるカードを召喚することができない。もしくは排除するカードが入っていれば可能かもしれないが、そんなカードはデッキに入っていないのであろう。
即ち以上の理由で降参となる。
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リーシェルの父親の名前はラース・エンダー。母親の方は幼い頃に亡くなってしまった。ラースはかつて魔王の下でクライカードを作っていた過去があった。だが魔王は亡くなりクライカードの生産はストップし、セイントカードしか作られず、人々の生きる苦しみを発見することが目的で作られた物はなくなってしまった。
この世の中の構造に危機を覚えたラースはダークネスカードを作ることになった。このカードがあれば誰が生きる苦しみに苛まれているかが一目で分かる。そんな目的があった。
そしてそのカードを使って仲間を集めようとしたのがリーシェルであり、そしてその群れのリーダーが彼の言う魔王であった。
〇
馬車に揺られながらリーシェルの話を聞く大和一行。
タートルは彼に興味が移ったのか代弁するような発言をする。
「つまり、心が欠けた者たちの居場所を作るために魔王になりたいということなんだな」
リーシェルは自分のデッキをシャッフルしながら「その通り」と返す。
彼は以前先代の魔王に会ったことがあると言っていた。鎧に身を包み巨大な角が生えておりどっしりと重そうな体を玉座に預けているあの魔王に。
「僕は先代の魔王の活動は正しいことだと思っている。倒されるべき存在ではなかったとも思っている」
その言葉に大和の心が抉られる。魔王を倒してはいけなかったことを自分自身がよく分かっているからだ。自分が魔王になったのはその行いの償いと言っても過言ではない。
「だから、僕が魔王に代わる存在になるしかないと思った。ダークネスカードは心に闇がないと精神的な働きを及ぼすことはないから。クライカードは失敗だったんだろうけど、だからこそこのカードは本来必要な物だと思うんだ」




