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転生したら覚恕なんだけどヤかれるのは御免です  作者: 咲原魁里@覚恕転生


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五十四、和議

 歴史の戦いの教科書を見ると、和議と和睦の二つの言葉が出てくる。何が違うのか。

 ざっくり言うと和議が仲直りのための会議で、和睦はその結果である。


 つまり和議がなくても和睦は出来る。

 細川六郎がよくやるのがまさにコレで、その何が問題かと言えば満足な話し合いなく仲直りしてしまう事だ。

 そして結局話が違うと、懲りずに再戦する。


 つまり根本的な争いをなくしたいのであれば、和議こそ入念に行なわなければいけない。

 そしてこの後史実で起きる予定なのが、本願寺との和議。

 六郎との対応を複数の勢力、六角は当然だが、足利幕府、そして天皇も交えての話し合いになる筈である。


 ふむ、予言が欲しいと言うならコレを与えておくか。

 実際、拙僧も松本もその通りに動いて欲しいという意見で一致しているはずだ。

 時期こそざっくりぼかしたが、拙僧が和議について六角に入れ知恵すると。


「そうなのですね。それはまた貴重な予言を」

 と満足そうに返答してきた。

 

 しかし六郎にも正直困ったものだ。

 何が困ったかというと、史実通りならこんな不規則な行動をしつつも結構、彼はあと三十年ほど生存してしまう筈なのだ。



 式は拙僧が仕切った山科事継の時と同じく、夜行われた。

 故に火が心配だったが、以前渡しておいたマニュアル通り火元は全て囲いがされており、直接炎を見ずに済んだ。

 此処は聖護院コンビの八橋と門跡を素直にほめたい。

 

 そして式は幹の舞も含めて、トラブルなく無事に終わった。

 何やら松本が六角と密談していたのは気になるが。


 そう言えば本願寺の証如との文通は続いているが、彼も仏前結婚式には興味津々らしい。

 史実での長男の生まれ年は知っているので、多分その前には結婚するのだろう。

 もし式を行うにしても蓮淳が嫌がりそうなので出席出来ないが、お祝いの品くらいは送ろうと思う。

 


 さて、細川家周りでは元管領の細川道永の弟である細川晴国と、裏切り者細川コオロギの子で道永の養子である細川次郎(後の氏綱)の関係が相変わらず悪い。

 それも史実とはやや外れた動きであるのが気になる。


 史実通りなら本来、次郎はこの時代、しばらくは和泉国(今の大阪府和泉市とその周辺)にいた筈である。

 この世界線では道永引退に伴い、今では将軍足利義晴を補佐する立場である。

 一方、ライバルの晴国は現在石川本願寺の味方に付いて細川六郎と交戦中である。

 史実と同じ歴史になるとすれば、冬ごろに法華衆が晴元側に加担して、晴国は負ける。

 そして本願寺和議以降は裏切りに遭い、晴国は自害する最後を遂げる筈である。

 のだが、どうも次郎への対抗意識が原動力になっているのか現在晴元側が大幅に劣勢で、法華衆の投入前に和議が始まってしまうまである。

 この辺は、法華衆側と思われ歴史改変を嫌がる松本次第か。

 

 ちなみに後の三好長慶こと結婚式でも顔を合わせた、聡明少年の千熊丸。

 史実では本願寺と分離した一向一揆と戦ったり、本願寺に味方して六郎と戦ったり、傾国のチャラ男こと木沢長政の仲介で後に和解して六郎の配下になったりしているらしい。

 果たして、この世界線ではどんな人生を歩むやら。


 さて拙僧はこれから始まる、ある大きな流れに備えて準備をする必要がある。

 二年程後に、天文法華の乱の前哨戦となる松本問答が始まる。

 法華衆と天台宗山門派が中心になって起こるこの騒動。これに備えるためにはまず第一に、まだ行った事のない周辺の天台宗の寺を知る事から始めなければいけない。

 

 まずは大原・坂本間の街道も商人が行き交う程に整備されたということで、坂本にある天台宗の寺院、西教寺(さいきょうじ)を尋ねたのだが。


「♪ようこ、そー」


——シャリーン!

——カラカラ……


 うん、何だろう。

 今まで会った坊官の中でも、飛び抜けてクセが強いかもしれない。


「♪お会いできるの、をー

 楽しみにしてまし、たー」


——シャリーン!

——カラカラ……


 まず彼の見た目は成人男性だが、数え十三歳の拙僧と同じくらいの身長、つまり小柄である。

 そして髪ボッサボサで、上半身ほぼむき出し。

 と言っても僧衣は申し訳程度に着用していて、服の前を大きくはだけている感じ。

 むき出しの素肌を隠すように、申し訳程度の黒の革製のベルトのようなものを胸部に巻いていた。


 そして彼が歌うような口調で話すたびに、風が吹いて、周囲に設置された風鈴と紙製のかざぐるまを揺らして音を出す。

 ちなみに二つとも中国から伝来しており、この時代では一般家庭でも稀に見かける。

 ガラスはこの時代まだ普及していないので、風鈴は金属もしくは陶製だけど。


「拙僧は、そんなに有名ですかな」

 と拙僧は苦笑して尋ねる。

 

「♪六角様のからみ、でー

 愛宕権現を知らない方はおりま、せんー」


 ああ、そう言う事か。


——シャリーン!

——カラカラ……


 しかし、どういう原理で動いてるんだコレ。

 かなり大きな音量で話してるから、風圧?


「♪ワタクシ、はー

 坊官の川貴(せんき)と申しま、すー」


 ほうほうカワキ……え、川に貴?

 ええと寺の名前が西教で法名が川貴、って西(川貴)教か!

 どおりで既視感があると思った、ヘソ出しマーメイドかよ!

 


 

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