第113話 タロウの誕生日に
◇◇◇
もう直ぐタロウの誕生日。
タロウから防御力アップ付きのペンダントをもらったから、私も何かプレゼントをしようとテオに魔道具屋に連れて行ってもらった。何か良い物と探したけど、ピンとくる物がなくて……作ろうかな。
次に連れて行ってもらったアクセサリーを売っている店で、白い石がついているネックレスを見つけた。
指輪やブレスレットでもいいんだけど、剣を振る時に邪魔になりそうで……利き手じゃない方にすればいいのか。でも、この白い石のネックレスに目が留まったんだよね。
デザインは何種類かあるんだけど、これは親指の先ほどの大きさの丸い石に穴が開いていて、黒の細い革紐が通してあるだけのシンプルなネックレス。これなら、男女関係なく付けやすいと思う。
白い石以外にも青や黄色の石もあって、銀貨数枚のお手頃な値段だったのでいくつか買った。黒い石もカッコイイな。
「アリス、そんなに買うのか?」
「うん。テオ、失敗するかも知れないから多めに買うね。テオ、タロウには内緒だよ」
「おう、分かった」
この白い石に『聖魔法』の付加をつけて、弱体異常を受けたら発動する魔法陣を描こう。
タロウの『回復魔法』もランクが上がって、殆どの弱体異常は治せるようになったけど、『呪い』や『病気』の弱体異常は『聖魔法』でしか治せないからね。
◇
タロウに見つからないように、夜寝る前に自分の部屋でネックレスを作る。
バッグからネックレスを取り出して、両手で包むようにして『聖魔法』を何度も掛けると、片手剣の時みたいにボワッと優しい光が膨らんで白い石に吸収していく……これでいいかな。
そして、魔法陣が目立たないように、白いインクに魔力を込めながら白い石全体に魔法陣を描いていくんだけど……うわぁ、小さい石に魔法陣描くのは大変だ……。
タロウのネックレスが出来たら、テオのネックレスも作ろう。
何時だったかな……テオの誕生日を聞いたら知らないって言われたの。私と同じだねって言ったらテオは笑っていた。
テオは赤ちゃんの頃に孤児院に預けられて、誕生日のお祝いは、テオだけじゃなく孤児院の子供みんな無かったんだって。
その話を聞いてから、私の誕生日の夜は、テオの誕生日を兼ねてじゃないけどテオの好きな料理を作っている。頑張って料理を作り始めたのはその頃からだったかな~。
タロウに誕生日プレゼントを渡したら、きっとテオも欲しがると思う。だから、テオのネックレスも作ろう……魔法陣が大変だけど。
◇◇◇
1の月の最初の火の曜日、今日はタロウの15歳の誕生日。朝、ご飯を食べにタロウが下りて来た。
「タロウ、誕生日おめでとう!」
「タロウ、おめでとう! 今日で成人だな!」
そう、昨日のタロウは子供で、今日から大人だよ……変な感じ。
「あっ、うん……。ありがとう」
タロウが照れくさそう。ふふ。
テオは去年と同じで、これからタロウを連れて誕生日のプレゼントを買いに行くんだって。私からのプレゼントは夜に渡すからね。
「夜はご馳走を作るから、楽しみにしてね!」
「おおっ! 今夜はご馳走かー!」
「はっ! もしかして……アリス!?」
声に出さないで返事を笑顔でかえすと、嬉しそうに2人の目が大きくなってキラキラしている。ふふふ。
テオ達が出掛けた後、あのステーキを焼きながら今夜のメニューを考える。
先ず、オークハムのサラダでしょ。シチューは、ヤギのミルクが手に入ったから具沢山の野菜とコカトリスの肉でシチューを作ろう。後、タロウに食べさせようと考えた新作のサンドパンも作って、メインは『ドラゴン肉のステーキ』!
ふふふ、これで十分だよね。年明けの火の曜日、今日はレオおじいちゃんが来ないから早めに店を閉めて準備しよう。
◇
夕方、テオ達が帰って来た。
「アリス、帰ったぞー」「ただいまー」
「お帰り~……!」
タロウは、出掛けた時と違う服に着替えていて……ふふ、私と同じで服屋で着替えたのね。
今朝もそうだったけど、いつも着ている服は、白っぽいシャツと茶色のズボンが多いの。だけど今は、襟と袖口に刺繍がしてあるキレイな青色のシャツと黒い細身のズボン。大人っぽいオシャレな服で、タロウが別人に見えるんだけど……。
「タロウ、大人みたい……カッコイイよ! 似合ってる!」
「えっ!? アリス……ありがとう……」
「ハハッ、そうだろう~。アリス、俺が! 選んだんだぞ!」
テオがドヤ顔で言うのが笑ってしまう。
◇
夕食を食べ始めて、今度は私がドヤ顔をする。ふふ、美味しいでしょ~?
「おっ! アリス、これは新作のサンドパンか? 旨いな!」
「う、旨い! アリス、このサンドパンは初めてだよね?」
「うん、新作のサンドパンだよ。美味しい? ふふ、良かった」
新作のサンドパンはね~、上質肉にたっぷりの香草と塩をすり込んで焼いて、焼き上がった肉に酸味のある爽やかな果物の汁を少し掛けてパンに挟んだの。
そして、今年もメイン料理に『ドラゴンのステーキ』を出した。
「おおおー! 待ってました!!」
「やったー! 幻の、ドラゴンの肉ー!!」
2人のテンションがおかしいけど、仕方ないよね。だって、ドラゴンのステーキだもん。ふふ。
去年からドラゴンの肉をケチって年に2回、私の誕生日とタロウの誕生日に出すって決めたんだけど、この前の私の誕生日は、エリオット様のお屋敷に招待されたから食べてないの。
だから、ドラゴンの肉を食べるのは1年ぶりかな。肉はまだ半分以上あるけど、ずっと食べたいからね。
ドラゴンの肉は、塩だけで美味しいんだけど、今日はニンニクと細かく切った野菜とお酒でソースを作った。
「アリス、ちょっと待ってくれ! 直ぐに酒を出すから!」
「は~い。テオの肉は最後に出すね」
嬉しそうなタロウの前にステーキ皿を置いて、次に私、テオの前にステーキ皿を置く時には、もうコップにお酒がなみなみと入っている。ふふ。
「去年より肉が分厚いんじゃ……いただきます! ガブッ、旨~い!」
「何! 去年より肉が分厚いだと!? タロウ、食べるのが早いな! 俺もいただきます! ガブッ、これはニンニクのソースか!? たまらんな!」
1年ぶりだから分厚くしました。2人は、叫んだり静かになったりと忙しいけど味わって食べてね。ふふ。
ステーキを食べ終わって、タロウにネックレスを渡した。
「タロウ、誕生日プレゼントに『聖魔法』を付加したネックレスを作ったの。これを付けていたら、攻撃や魔法で受けた弱体異常を治してくれるはずなんだけど……」
試していないから、魔法が発動しなかったら教えて欲しいとお願いした。
「アリス……凄いよ。このネックレスを付けていたら、デーモンでもソロで倒せそうだ!」
タロウ、デーモンを1人で倒すのは無理だよ。
「そうか……タロウ良いのを貰ったな! それを付けていたら、<リッヒダンジョン>でも怖いもんなしだな!」
ネックレスが上手く発動したら、デーモンの『呪い』も治せると思うけど……何度も言うけど、試してないからね。
「なあ、アリス。そのネックレス……俺にも作ってくれないか」
「うん、テオのも作ってあるよ」
「おっ、そうか!」
テオが嬉しそうに、にかっと笑った。ふふ、作っていて良かった。
テオにも白い石のネックレスを渡すと、えっ、私も同じネックレスを付けて3人お揃いにしようって? 別に良いけど……これ、魔法陣を描くのが大変なんだよ。




