聖女の条件
聖なる儀式で痛みは取り除かれるのである。
【マニブス・パルビスシリーズとは】
どのお話からでも読める一話完結掌編です。
令和日本に似た箱庭世界、幻想怪異発生特別区──通称「特区」。そこに出現するモンスターや怪異、怪人たちと、そこに住む住人たちとの奇妙な交流、共存──。
箱庭で起こる不思議なできごと、物騒で理不尽な事件、振り回される人間みたいなものの生活を書いています。
ファンタジーに近い少し不思議な表現があります。
R18に至らない成人向け表現、ゴア表現、欠損描写、グロテスクな内容を時折含みます。(成人向けではない商業小説程度の内容です)
創作家さんに100のお題よりお借りしています。
073. 絶対
南地区北側、魔術街の一角。あらゆる傷の痛みを癒すという聖女の閨がある。特区中から、様々な種類の人間や人間以外の存在が集まり、その聖女は――聖女と呼ばれる所以であるが――、それがどのような者であっても、決して門前払いせずに迎え入れ、治療を施すのだった。
それが反自治勢力に関係する脛に瑕を持つ男であっても、人間に扮した背中に口のついたモンスターであっても。
病めるものが来ると、まず聖女は話を聞く。どこがどのように痛いのか、いつから痛いのか、どうすれば苦痛が取り除かれるのか。そして、一人一人に合った対処をしていく。
聖女の治療は独特である。まず、その血肉を自ら削る。あるいは、病人の様子によっては髪の毛や手の爪を煎じる。場合によっては、唾液や愛液を用いることとなる。その聖女の分身を病人のそれと一緒に混ぜて食させるのである。
交わりだった。聖女との交合。聖なる儀式で痛みは取り除かれるのである。
ここで、期待に打ち震える狼藉者もいる。たいていは御簾の向こうにいる聖女の姿を垣間見した際に気持ちが萎えるのだが。
聖女の正体は絶対の醜女である。聖女と交わったなどという幻想は無に還るのだ。
聖女は自らの姿を見せない。治療の結果に関わるから。
なぜならば、治療の副作用は一番なりたくない姿に変化してしまうのだった。これもまた、絶対に。
***
顔を怪我した女が聖女の元に這うようにしてやってきた。顔には無数に膨れ上がるあばたがあり、痛みがあり、膿を噴出して痒い。黄色の体液で固まっててらてらと光り、顔のパーツは埋もれて見えなくなっていた。
女は施しを受け、女の涙と聖女の涙を混ぜたものを口に含んだ。
聖女は美しい声に美しい手をしていた。もとは同じように過ごしていたというのに、違う境遇の女はよせばいいものの、聖女の顔がどんなものか見てやろう垣間見た。
絶対にこの顔になりたくないと女は思った。
治療結果は先に示した通りになるだろう。すなわち、病は直り、女は絶対に聖女と同じ顔になるのである。
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