僕も覚悟を
本当なら、<魔人の少女>に対してだけじゃなく、魔獣に対してもそう考えるべきなのかもしれない。
彼らだってただの獣だったものが魔素によって魔獣に変えられてしまっただけだったら、罪はないのかもしれない。
それで、魔人だけを特別扱いするのは、<エゴ>なのかもしれない。
でも、今ならリセイにも分かる。
『誰にだって、できることとできないことがある。あからさまに人間に対して敵意を向けてくる魔獣を気遣うだけの余裕なんて誰にもない。
だったら、生きるために、自分の大切な人を守るために……!』
それが自分を正当化するための<詭弁>でしかなくても、別に良かった。
どうせ自分にはすべてを救うなんてことはできない。
だったら自分にできる最大限のことをするだけだ。<魔人の少女>のことも含めて。
エゴはエゴとして、それが罪だと言うのなら、その罪そのものを受け止める。
そう思ったら体がとても軽い。心が軽くなったからかもしれない。
向こうの世界では決して感じることがなかったもの。誰も教えてくれなかったもの。
自身のエゴや罪を背負うことこそが、できることとできないことを知ることこそが、『人間として生きる』ということなのだと。
「かああああーかあっ……!!」
リセイは、自分の中に湧き上がってくるものを、強く意識して自身の体に漲らせた。
それは、目に見えない<圧>となって周囲に放たれる。
「っ!?」
瞬間、ベルフも、<魔人の少女>さえも、ビクッと体を竦ませた。リセイのそれが圧倒したのだ。
「向かってくるなら覚悟しろ!! 僕も覚悟を決めたぞ!!」
素直な<想い>が言葉となって迸る。
もちろんそれはベルフには理解できない。けれど、リセイの<覚悟>そのものは、彼が発する気配として届いただろう。
それでも、ベルフ達はリセイに対して牙を剥いた。
「グルルルルルルッッル!!」
これがベルフ達の覚悟ということか。
なら、全力をもって応えなくては。
「おおおおおおおおっっっ!!!」
雄叫びを上げつつ、リセイはベルフの群れへと飛び込んだ。向かってくるなら容赦はしない。
魔人の少女も、再度ベルフの首に喰らいついて引きずり倒し、自分の胴よりも太いそれに両手を、ベルフの胴に両足を、それぞれ絡みつかせて渾身の力で締め上げる。
と同時に、ベキベキと骨が砕ける音がする。そして、
「ゲ…ア……ァア……!」
ベルフは泡を吹きながら絶命した。
しかし、仲間にしがみついた少女を他のベルフが放っておくわけがない。それをリセイが迎え撃つ。
「かあっっ!!」
カマキリの鎌のように構えた手で、少女に牙を突き立てるために迫ったベルフの首を刈り取るように叩き伏せたのだった。




