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僕がこの世界で生きるワケ  作者: 京衛武百十
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今なら何でも

『不思議だ。体が軽い。今なら何でもできそうだ……』


馬車の荷台を蹴って宙に躍り出たリセイは、そんなことを感じていた。


力強いとか高揚しているとかいうのとはまた違う。むしろ気持ちが透き通っているような感覚。


ティコナもファミューレもライラも、それぞれがそれぞれにできることをして懸命にこの世界で生きていることが実感できたからかもしれない。


今まではどこか物語の中のような、物語として自分が何かの役割を演じさせられているような、何とも言えない非現実感が拭えなかったのが、ようやく自分の中で腑に落ちたのだろうか。


だとしたら、そのきっかけを与えてくれたあの<魔人の少女>についても、ただの<敵役>ではなく、何らかの理に則ってこの世界で生きているのかも知れない。


そもそも、魔素が獣を魔獣に変えるなら、魔人はどうやって生まれるのか? 魔人という種が存在するのか?


それとも……


『それとも、魔素によって変えられた人間……?』


何も分からない。今はまだ何も分かっていない。この世界で生きているライラですらよく知らない<魔人>という存在。


人間に戻す方法はないとしても、決して共存できない存在なのだとしても、それが確認できるまでは結論を急ぎたくはなかった。


もちろん、そのためにティコナ達を危険に曝したくはない。その辺りの優先順位は間違いたくない。けれどその上でできることはしたい。


だとしたら少なくとも今は、あの少女を失いたくはない。


もっとも、あの強さを思えば、


『僕が手を貸す必要はないかもだけど……』


とは思いつつ。


だが、今回、闇の中とはいえ実際に目の当たりにしたベルフは、


『……あの時の奴とは全然違う……!?』


リセイは直感的にそう悟った。大きさも、そこから感じる<圧>も、ティコナと出逢った時に遭遇したのとは桁違いだった。


『こいつら、強い……!』


瞬間、リセイの体に力が漲る。目の当たりにした脅威に対して負けないように。


「けああああーっっ!!」


自然と呼気が迸り、一直線に威力が奔り抜けた。軸足が地面を捉え、腰が鋭く回転し、脚が真っ直ぐに打ち出され、膝から先が鞭のようにしなり、ベルフを捉えた。


ガツン!という衝撃が打ち込まれるのが分かる。


それが、ベルフの中にあった憎悪や激情を粉砕するのが見えた気がした。


「ゲフッッ!?」


リセイの蹴りをまともに食らったベルフの意識が一撃で絶たれる。


犬や狼と言うよりはもはや熊に近い大きさのそれが地面を転がった。まったく力なく。


それを確認しつつ、リセイの視界は、自身の体より遥かに大きなベルフの首に猛前と喰らいつく少女の姿も捉えていたのだった。



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