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僕がこの世界で生きるワケ  作者: 京衛武百十
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何でもかんでも

『お前はもうお前の役目を果たしてくれたんだから、後は俺達に任せりゃいいってこった』


トランの従兄であるジェインにそう言ってもらえて、リセイは少し気が楽になった。


『そうだよね…何でもかんでも僕がやれるなんて、きっと思い上がりってやつなんだろうな』


リセイがそんな風に考えられること自体が<能力>によるものかもしれないけれど、どう作用するのかどうやって発動するのかも、完全には掴めないのかもしれない。


けれど少なくともリセイが<チート勇者>として活躍できる素地はこれで出来上がったのだろう。


その日はもう、トランは姿を現すことがなかった。宿舎の自室に閉じこもって出てこなかったそうだ。




「リセイ。明日はまた、うちの隊がマルムの森に哨戒に出る。アムギフ以来、魔獣は確認されていないから、後一ヶ月の間、魔獣が現れなければ、警戒レベルは下げられる見通しだ。


それでも子供がマルムの収穫に行けるようにはならないかもしれないだろうが、安全が第一だからな」


合同鍛錬を終え、家に帰ろうと用意をしていたリセイに、ライラがそう話しかけた。頬を染めて、他の隊員には決して見せない<女の子の表情(かお)>になっているけれど、リセイにはその違いはまだ伝わらないようだ。


「分かりました! それじゃ、また明日!」


大きく頭を下げて声を上げて、リセイは家路に着く。


「いや、それで…だな。今日は一緒に食事、でも……」


と、蚊の鳴くような声で続けて話しかけようとするライラには気付かず。


「隊長…そこでヘタれちゃダメでしょうが……」


宿舎の陰に隠れながら様子を窺っていたジェイン達が頭を抱える。


「この後、リセイと一緒にメシでも食ったらどうですか?」


と入れ知恵したというのにそれを活かせない詰めの甘さが歯痒い。


「オトィクで五本の指に入る騎士の名が泣きますぜ……」


とは言え、ライラは、女の子としてのそういう<気持ち>も振り切って剣の鍛錬に明け暮れたことで今の力を得たので、正直、この手の話には慣れていない。上手くできなくて当然だろう。


「はあ……」


リセイを食事に誘えなかったことに少し落ち込みながらも、宿舎の兵士用の風呂に入ってざっと汗を流す。一応、衝立は置かれているものの男性と同じ風呂だ。


まあ、これはこの地の元々の習慣なので、彼女も他の男性達も気にしない。そういう部分では色っぽい話にはならないとはいえ、それでも彼女の体はとても引き締まっていて、<女性らしさ>とは少し違う、猫科の肉食獣のような、しなやかなセクシーさを連想させる体をしていた。胸も、戦闘の邪魔にならないように控えめで、むしろ本人はそれを誇っているらしい。


そして脱衣所に戻り、さっさと私服に着替えた。女性用のは動きにくくて好きじゃないので、私服はすべて男性用のそれだった。


当然、化粧もしない。


けれど、風呂場から宿舎の私室に戻る彼女に、これから退庁するところだった役所の女性職員達が見惚れていたりもしたのだった。



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