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銀色の行く末

国軍の騎獣部隊と上級冒険者達とで、一足早く王都に帰還した。行きに集合した北門前で解散し、その足で冒険者達は協会へ向かう。


「ヴィルヘルム、必ず魔術師塔に顔出せよ⁉」

「分かった。一旦は街に戻るが、王都に来たら寄るから」


別れ際に再三、イェレミアスからダメ押しする様に釘を刺される。いい加減鬱陶しい。適当にあしらうも、ジトリとした視線を寄越された。


冒険者協会で今回の依頼分の精算を済ませると、仲間達と別れライの王都邸に帰った。管理人夫妻の出迎えを受け、一息入れる。騎獣は厩舎に直行だ。


「じゃあ、今日はゆっくり休んで、明日街に帰るとするか」

「インゲ女史に披露会の進捗を確認しておかないと」

「また仮縫いの試着三昧だー」

「……俺が、な」


街に帰る前に寄るインゲ女史の店で行われるであろう、怒涛の着せ替え作業を思うと、最早溜め息しか出ない。しかし、契約は守らねば。とっとと済ませて、街に帰ろう。


……と思っていたのだが。


「いらっしゃい、ヴィル、ステフ、ライ。あら? ウルちゃんは? これから迎えに行く? なら、早く帰って、連れて来て頂戴!」


こちらの顔を見るなり言い放ったインゲ女史の鶴の一声で、試着はすっ飛んだ。インゲ女史はウルリヒに会いたかっただけだろうが、有難い。


早々に店を辞し、王都を発つ。街まで騎獣三頭とルーイで、猛スピードを出し街道を走破した。


街道には行き交う旅人や馬車も多い。無闇に突っ走れば接触事故を起こしかねない。そこは、ヒューイに乗るステフが適宜飛翔して先を見計らい、早目に指示を出して接触を回避する。おかげで安心安全な道中だった。


街の外壁が見えると、帰って来たとしみじみ思う。最寄りの北門は通り越し、我が家に近い東門に回った。馴染みの門衛に挨拶し、顔パスで門を潜ると、外壁沿いの我が家は直ぐだ。


「あ、ウル! ただいま」

「ウルー会いたかったー」


我が家に着くなり、裏木戸からランディに連れられたウルリヒが駆け寄る。大勢の騎獣の気配に、双子が飛び起きたらしい。流石は獣人族の末、気配に敏い。


「皆さん、お帰りなさい。ウルが待ち兼ねてたよ」

「ランディ、何時もウルを預かってくれてありがとな」

「……何か騎獣がまた増えてないか?」


そう言いつつ、ランディの視線が銀色(ズィルバー)に固定されている。銀色(ズィルバー)の方も、ランディを見ていた。正確には、ランディの抱いている双子を。


「そう言えば、フェルは狼獣人の血を引いているんだったな。銀色(ズィルバー)が双子を気にするのは、その所為か」


その時、ふとひらめいた。狼獣人と銀狼の騎獣なら、相性抜群ではないだろうか。


ウチは只でさえ騎獣の多い処に、また銀色(ズィルバー)がテイムされてしまった。


一方、ランディの所は騎獣はいないし、これから双子を抱えて冒険者に復帰するランディは手の多い方が助かるだろう。樵夫(きこり)のフェルにしても、材木の搬入には都度、馬と荷馬車を借りていたのだから、騎獣がいれば役に立つ。


テイムした従魔は、本来なら定めた主を変える事はまず無いが、この銀狼はまだ仮の名しか与えていないので主が定まっていない。相性のいいフェルや双子達なら、仲介すれば直ぐ銀狼の主になれるだろう。


「ランディ、君達に折り入って相談があるんだが、フェルが帰ってから時間貰える?」

「フェルなら何時も通り日のある内に帰って来るだろうから、それからなら大丈夫だよ」


その日の夕方、フェルが帰宅してから隣家にお邪魔して、騎獣を持つ気はあるか打診してみた。


「今回の依頼で、また騎獣が増えてね。銀狼なんだが。もしフェルとランディが騎獣を持つ気があるなら、この銀狼はどうだ? 銀狼の方は、双子を気にしていたから、相性は悪くないと思うんだ」

「確かに、騎獣がいれば楽だなぁとは思っていたんだが、急な話で、まだ何とも言えん」

「取り敢えず、ウチの厩舎で一緒に世話するから、徐々に馴らしてみたら」


フェルは即答こそ避けたものの、満更でもない顔をしている。ランディはかなり前向きだ。双子達に至っては、既にウルと一緒に銀色(ズィルバー)の背に登って遊んでいる。


銀色(ズィルバー)の落ち着き先が決まりそうだ。





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