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夢と現のクロスロード  作者: 佐月栄汰
創喚者編Ⅲ
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第二章・再来④



「…………? なんだ?」


 色々と物色していると、ふと外から薄ら寒いような温かいような、そんな自然を想像するような感覚が頬を撫でる。

 最近、〝そういうもの〟に近づきすぎたせいか、妙に第六感的なモノが敏感だ。

 しかしすぐにそれは消えたので、風でも流れてきたのかも、と結論付けてまた物色に戻る。


「――おっ?」


 そうして振り返る時、良さそうなものを発見。手に取って見てみる。


「……うん。これが良いな」

「兄貴ー、どう? なんか見つかったー?」

「あぁ。これなんだが、どうよ?」

「んー……良いと思うよ。僕からすれば少し微妙だけど、良いと思う」

「その言い方めっちゃ心配になるんだが……」

「まぁまぁ。兄貴がそれが良いって思ったならそれで良いんだよ。ほらほら、会計済ませてくる」

「お、おう」


 ほんの少し躊躇いながら、言われた通りレジへ向かう。

 ささっと買い物を済ませ、とりあえず拓海にとっての今日の本命を終えてほっと満足する。

(さっ、後はトキが満足出来るように今日一日付き合ってやりますか)

 改めて切り替えて今日を楽しもうと意気込んだその時、後ろから肩を叩かれる。


「あ、はいなんです――あれ、三笠?」


 振り向くとそこには、小さな色素の薄い髪をした少女が一人。額に汗を滲ませる藍の創喚者・三笠がいた。

 彼女は拓海の反応に頷くといった反応一つくれず、そのまま「来て」と強引に手を取って出口へ急ぎだす。


「兄貴ぃ、まだ会計終わらないの、って三笠先輩? 一体どうして――」

「良いから貴女も」


 と、後ろから困惑する時亜を急かしながら、自動ドアを通り――


 瞬間、目の前の一部一部が反転。パズルのブロックを切り替えるように、眼に見えるモノが現のものから夢のものへと換わり始めた。


「ッ―― 『亮ッ!』」「任せろ!」

「『美月!』」「了解ダー!」

「『刹那』」「あぁ」


 周囲にいた人々はその姿を消し、改編されていく中、三人は咄嗟に透化していた創喚書に触れ、騎士の名を喚ぶ。

 するとすぐに彼等は自身の創喚者の隣に現れ、抱えて後ろへ跳躍。この場の中央で着地する。

 腕が結界から外れていたので、壁に埋まる、なんて事もなく一安心。ほっと息を吐いてから、改めて周囲を見回すと、そこは薄暗い洞窟の中だった。


「正確に言うなら、恐らくだけど迷宮……ダンジョンってとこか。中々面倒なものを」

「薄暗い上に狭いし、それだけでなくこういう場所には大抵トラップが仕掛けられてる。慎重に行くべき」

「定石通りならモンスターとかも居そうだよねぇ。それらも従騎士扱いになってくれてると助かるけど」


 なんて会話しながら、あれ以降姿を見ていなかった三笠の騎士・刹那へ視線を移す。

 灰の髪に、他の騎士に比べても鋭い藍色に染まる獣の眼。装備という装備は殆どなく、唯一存在するのは両腕にあるガンドレットのみ。

 ジャンルは現代寄りのファンタジーと聞いている。戦い方は拓海と似たような感じなのだろうか?

 武闘会としての関係は曖昧故に、聞いても答えてくれないだろうが、だからこそ気になってしょうがない。


「……なにか用か、黒の創喚者」

「いいや、別に何も」


 そんな視線を不審に思った刹那に、拓海はあっけらかんと答えて逸らす。

 一瞬、眉間に皺を寄せつつ、別段興味のなかった刹那はすぐに目線を余所へ向けた。

 安堵しつつも罪悪感のようなものも湧いてくる。しかし、こんなところにいるのだから、仕方ないと自分を誤魔化す。


「……にしても、静かだ」


 亮の言葉に、一同は同意する。ここは、あまりにも静か過ぎた。

 そこらへんに火のついた松明が飾ってあるとはいえ、明るすぎていて、かと思えば、奥の方は暗くて全く見えなく、この見えるだけの空間に閉じ込められたよう。


 だからなのか、拓海の心まで冷め始めるような、そんな感覚に陥っていた。同時に、身体も少しずつ、少しずつ重くなっていっているような……。


(いや、違うこれは)


 しっかりと自覚したのが今なだけで、身体は朝からずっと不調を訴えていた。それに伴って、俺というもの(・・・・・・)が剥き出しになって――


『ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア⁉⁉』

「「ッ!」」


 悲鳴。

 拓海達以外に聞こえなかったこの空間に、一切聞き覚えのないつんざく声が、突如として入り込んでくる。それは、拓海からみて前の道。

 確実に罠。しかし彼等は誘われるように、導かれるように、無警戒にその先へ進む。

 先へ、先へ。変わらずサクサクと音を立てながら真っ暗な道の先へ進んでいくと、突如としてそれを終わり、開けた空間に到達する。


「やだ、やだ、嫌だぁああああ嗚呼アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア‼⁉」


 ――そこで待っていたのは、地獄のような光景だった。


 ニュースでやっていたような、老若男女問わず散らばった服装と、それを包み隠しそうな程大量の灰色の砂。それはこの空間の至る各所に、その塵山は存在していて……。


「助けてくれ、助けてくれぇぇぇえええっ!」


 その中心には、二人の男。そしてその前に這いつくばる誰かがいた。声からして、男だけれども、もはや姿形はどちらか区別がつかない。

 だってもう、半分くらい周囲に散らばるモノと、同じになっているから。


「あ、足が、手が、ぁははっ、す、なに、くふふ、砂になっちゃってるっ。痛くないのに、ひひ、身体がぁ、なくなっていってる……あは、あははははははははははは‼‼」


 懇願していた彼も、言葉にしている内に、いや言葉にすることで根底から理解したのだろう。してしまったのだろう。壊れてしまっている。

 身体が固まったみたいに動かない。あまりの光景に三笠ですら目を見開いてただ立ち惚ける。


「このままだと、ふふ、おれ死んじゃ……――ぁ、アアアアアア嫌だぁ‼ 死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない‼‼」


 死を思う言葉をひと度発すると、彼は再び発狂し出した。壊れたレコードのように、ただ死にたくないと生にしがみつく。

「っ、………!」

 ――いつかのように、心臓が大きく高鳴り、そして呼吸と共に一瞬止まる錯覚。

 反射的に胸を押さえながら、助けを求める人の元へと一歩先へ進み、


「死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくな」

「うるさい」


 それは無惨にも、たった一言で散らされた。

 ボーッと命乞いをする彼を隣で見ているだけだった二人の内一人が蹴飛ばすと、それはあっという間に〝彼だったもの〟は灰色の砂へと変わり果ててしまったのだ。


 ――あぁ、これで見て見ぬふりをしていたあの砂の正体を目の当たりにしてしまった。


 服は、そこにいたという証。

 ニュースに出ていた砂も、ここまで向かう途中で踏んだ砂も、この空間いっぱい広がる砂も全て、全て、全て。


 ――人間だったモノの、残骸だ。


「ぅ――、ッ――――」


 気付いてしまった時亜は口に手を当て蹲り、我慢できずその場で嘔吐する。美月も三笠も苦々しい表情を浮かべ、亮と刹那は苛立った表情を浮かべる。

 一方で、拓海は心が冷めていくのを自覚しつつ、睨むように目を細め、傍らに一人連れるその蹴り飛ばした男を見ていた。


「……やぁ君たち。久しぶりというべきかな。創喚者だったとは気付かなかったよ。――あの時、殺しておくべきだったかな?」


 そういう男はニタリと歪んだ笑みを浮かべる。

 男は見た目からして異常だった。

 爽やかそうな顔立ちからは想像も出来ない濁った目。身の丈に合わない少し汚れた服装。その割には、髪は艶があり、定期的に風呂に入っていたと見受けられる。

 特に目を惹くのは、捻じれ長く、灰色に染まった右腕。灰色に染まる部分と密接にある肌には赤いヒビが浮き出ていて、まるで血管のように時々蠢動している。

 人からかけ離れた〝それ〟は、悪魔の方が可愛げがあるのではないかと思うほど醜悪だ。


「ねぇ? 葵時亜。陵三笠。そして……ふふ、あはは!」


 彼は拓海を目にした途端、嬉しそうに、狂ったように笑い、嗤う。その眼は憎悪と嫌悪に満ちていた。

 どうもお呼びらしい。恐怖やら何やら感情入り混じって逆に身動きが取れずにいる彼女らを庇うように、亮へと目線を送りつつ買い物袋を足元に置いて、一歩前へ出る。


「……何故お前がここにいるかは聞かない。察しがついてるからな」

「会いたかった! 会いたかったよォ!」

「だが、俺は言った筈だな。次はお前の事なんか誰も保証しないと」


 会話は成り立たない。しかしそれで十分。会話などする気はないし、単に言いたい事を言っているに過ぎないのだから。

 冷め切ったいつもの拓海が沈んでいき、剥き出しになっていく。隣に立った亮が剣を引き抜くと同時に、無詠唱で出した球体の身体強化・汎用型を握り潰す。


 ――お前は真里華に仇なす害悪だ。そんなお前が俺の前に立つという事は、覚悟が出来ているという事で良いんだよな? なぁ、


「――吸値すうねかい

「紫苑、拓海ィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ‼‼‼‼」

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