あいす
平日には、毎日のようにお見舞いに行っていた時がありました。
平日の約三十分、長くても一時間ほどのお見舞いの時間は、僕にとっての日々の生き甲斐にもなっていました。
お見舞いに行くと、Kさんは、テレビやDVDを見てるか、寝てるかというかんじでした。
痛みが出ると、痛み止めを飲んでいました。
午後六時前後にお母さんが来られるので、会社からすぐに病院へ向かうと、うまくいけば二人きりの時間が多く持てるときがありました。
その日は、まだお母さんは来られていませんでした。
「こんばんは。」
と言いながら部屋に入ると、Kさんはこっちを見て軽くうなづくように挨拶をしました。
まだ外は寒く、僕は急いで自分の冷えた手を温めます。温まったら彼の手を握り、手にキスをします。
そして、僕は好きな人としてみたかった、恋人握りという手の繋ぎ方をしたりしました。幸せでした。
えっちな気持ちが抑えられないとき、僕は、
「ねえKさん、Kさんてオナニー好き?」
などという、中学生のような質問もしたりしました。彼は、照れていました。
「今までに、こんな話ってしたことある?」
と聞くと、
『ないよ。』
と言っていました。
僕も、学生の頃はもちろん、今まで友人の間でもそういう会話は苦手で避けていました。
二人だけのそういう秘密の会話ができることが、本当に最高の気持ちでした。
お母さんが来られると、Kさんはアイスクリームが食べたいと言いました。そこで、お母さんは売店へアイスを買いに行かれました。
僕はお母さんが戻られたら帰ろうと思っていましたが、アイスを三つ買ってこられました。
Kさんとお母さんと僕、三人で食べるバニラのアイスクリーム。
食べながら、彼のつぶらな瞳と目が合います。僕は心の中で、「きゃ~。」と喜びを爆発させていました。
何気ない時間でしたが、僕には至福の時間でした。
彼も、美味しかったと言っていました。
食べた後、少し痛みが出た時、お母さんは彼の背中をさすりました。
僕も、彼の手をしっかりと握りながら、手や腕をさすりました。
それをいい機会に、僕はお母さんが見ている前で、その後もずっと彼と手を繋いでいました。
お母さんは優しくて、Kさんとの会話を聞いていても、Kさんとお父さんの間よりいい関係であると、僕は感じていました。
僕のKさんへの気持ち、お母さんに言ったらわかってもらえるかなあ?
僕はそう思いましたが、まだそれは心の中に留めておきました。




