第4話
「して、陛下のご様子は?」
次に、スフォルツァ公は、侍従長のペーザロ伯に確認した。
「右腕は、断面に損傷が無く、すぐに聖女によって接合できましたが、宝剣の権能で切断された左足については……、
我が国から帯同してきた聖女達の権能では、回復には至っておりません。
伝承どおりであれば、宝剣で切られた部位の回復は、我が国の聖女では困難。
やはり、聖剣の”鞘”である、大聖女様のご加護が必要ではないかと……」
「その大聖女が奪われたのだ。
この教皇国には、他にも高位の聖女が多くおるではないか!
すぐに、教皇国に対して、派遣を命じよ!」
スフォルツァ公の指摘は当然であったが、外務卿のファルネーゼ宮中伯は、答えに窮した。
「それが……、
すでに派遣を要請しましたが、まだ、聖剣卿が暴れまわっており、
あの場で唯一難を逃れた大司教猊下には、のらりくらりと、はぐらかされ……」
「いったい何をしておるのだ!
大司教ごときに……。
そもそも、首席枢機卿はどこにいるのだ?
重要な婚礼を主導しておきながら、あの場にさえ、不在であったではないか!」
恐縮するファルネーゼ宮中伯に更なる指示をしようとしていたスフォルツァ公。
そこに、近衛卿のコロンナ宮中伯から衝撃の報告がもたらされた。
「閣下、緊急事態です。
帝国からバーデン辺境伯率いる軍勢が、教皇国に侵攻してきたとのこと。
その兵力、おおよそ5万とのこと」
「な、なんだと。
我が国の軍勢と対峙しているはずのバーデンが、なぜ、ここに……」
かつて大陸全土を支配していたアウグステンブルク帝国は、大陸北部の帝国本国が、大陸南部の多数の国々を属国としていた。
しかし、徐々に帝国の支配力に綻びが生じ、南部の大国・アドリア王国が、先王の時代に、周辺各国へ侵攻した。
その武力を背景に、南部有力諸王国と王国連合を形成し、南部の盟主に君臨。宮中伯らの暗躍で混乱していた帝国の支配下から離脱した。




