表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/2

第1話

「セレーナ=ヴァルムント!君との婚約を破棄させてもらう!」


 華やかなティーカップのふちから口を離した瞬間、婚約者のルシウス=エルヴィンが立ち上がって放ったその言葉に、私の脳内に雷が落ちた。

 婚約者のルシウスに茶会の席で急にそう言い渡された私は思い出した。

 自分が前世で乙女ゲーにハマっていた社会人だったことを。

 会社の帰り道で車に轢かれて死んだことを。

 そして、この世界が前世で遊んでいた乙女ゲー「クリスタル・ワルツ」の世界であることを。

 ……転生か〜いや私転生もの読んでなかったし!

 悪役令嬢ものの乙女ゲーの解像度の低さを毛嫌いして読んでいなかったんだ私は。こんなことになるなら読んでたらよかった。他の設定の作品は読んでたけど。


 てか乙女ゲーに悪役令嬢ポジションって少ないのよね。そんな嫌な奴より攻略対象にリソースさきたいし。

 でもクリスタル・ワルツにおけるルシウスはプレイヤーの選択肢でメンヘラにも聖人にもなる扱いの難しいキャラ。

たしか彼が病んでいく闇堕ちルートに入る条件は、ヒロインのクレアが周囲から孤立し、過酷な状況に追い詰められることだったはず。

 待って。ヒロインを追い詰めるための「舞台装置」が必要ってことは……。

 この世界では悪役令嬢ポジがいる可能性ある!さあどっち!

 と思っていたら私がそのポジションでした。

 てへっ……いや笑えないし。

 私は気を落ち着かせるために紅茶をがぶ飲みした。うん、やっぱりうちの領地で取れた茶葉は最高ね。


「あの、セレーナ大丈夫かい?顔色が悪いよ?」


 ……はい?

 つい数秒前に婚約破棄を叩きつけてきたはずのルシウス様が、なぜか甘やかな声音で私の顔を覗き込んできた。ご丁寧に、白いレースのハンカチで私の額の冷や汗まで拭ってくれている。


「……大丈夫ですルシウス様。少し自分の人生について考えていただけですので」

「そうか。それならいいんだ。体を壊したら大変だからね」


 ……いや、情緒どうなってるの!? あなたさっきの自分のセリフ忘れたの!?

 本来ならここで「君のような悪逆非道な女は〜」と断罪イベントが始まるはずじゃないの?


「あの、ルシウス様婚約破棄とは一体どういうことで……」


 とりあえず理由を知りたい。私が恐る恐る尋ねると、ルシウス様は気まずそうにスッと視線を泳がせた。


「……えっと」

「ルシウス様?」

「違うだろ!ルシウス!そこは『君との婚約を破棄させてもらう、なぜなら〜』って続けるところだろ!」


 ドゴォッ!

 鈍い音とともに、ルシウス様が吹っ飛んだ。

 振り抜いた拳から湯気を立てているのは、お隣に座る侯爵家のライル=レイセン様だった。ゲーム内ではヒロインに対して常に飄々とした皮肉屋キャラのはずの彼が、なぜか青筋を立てて親友を叱咤している。


「い、いや、僕はライルがこのセリフを言えって言ったから……」


 床に転がったルシウス様が、涙目で抗議する。


「あ――! 何の話かなルシウス!?」


 ライル様は慌てて大声を出すと、ルシウス様の口を物理的に塞ごうと馬乗りになった。


 ……えっと、誰かこの状況を説明してくれませんか?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ