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第26話 邂逅、筋肉は相対する

 戦場の奥。

 喧騒は、まだ遠い。

 だが確かに、地鳴りのように響いている。

 竹助内人は、歩いていた。

 一定の歩幅。

 乱れのない呼吸。

 だが、その歩みはわずかに速まっている。

(……押されている)

 振り返ることはない。

 それでも分かる。

 戦場全体の流れ。

 気配。

 圧。

 人間軍は、確実に押されている。

 一部では優勢。

 だが全体としては、劣勢。

 理由は明白だった。

(指揮がある)

 敵は、統制されている。

 動きに無駄がない。

 そして――

(時間をかければ、不利になる)

 だから。

 竹助は、歩みを早めた。

(ならば――)

(先に終わらせる)

 答えは単純だった。

 魔王を倒す。

 それだけで、この戦は終わる。

 筋肉は、迷わない。

 そして――

 足が、止まる。

 空気が変わる。

 戦場とは明らかに違う、静寂。

 そこに。

 一人の男が立っていた。

 魔王オーマ。

 視線が、交わる。

 言葉はない。

 だが、十分だった。

 互いに理解する。

 ここが、終点であると。

 先に口を開いたのは、魔王だった。

「……来たか」

 低く、静かな声。

 竹助は、わずかに頷く。

「いかにも」

 それだけ。

 だが、その瞬間。

 空気が、張り詰めた。

 筋肉と筋肉が、対話を始める。

 次の瞬間。

 その均衡が、崩れる。

「――待て」

 新たな気配。

 風を裂くように、影が降り立つ。

 ゼルアーク。

 長身。

 整いすぎた肉体。

 完成された均衡。

 魔王が、わずかに眉をひそめる。

「ゼルアーク……?」

「何をしている」

 一歩、踏み出す。

「ポウサンは、お前にメギストラと共に進軍するよう指示したはずだ」

 静かな叱責。

 ゼルアークは、膝をつく。

「魔王様」

 一拍。

「やはり私は、勇者が魔王様と戦うことを許せません」

 その言葉に、わずかな熱が宿る。

 魔王の目が、細くなる。

「……私と勇者との戦いに、横やりを入れるつもりか」

 ゼルアークは、頭を下げたまま言う。

「お許しを」

「魔王様のお気持ちも、ポウサンの指示も理解しております」

 一拍。

「しかし――」

 顔を上げる。

「どうしても、許せないのです」

 視線が、竹助へ向く。

「魔王様が求める“筋肉”というものを」

 その目には、明確な敵意があった。

「勇者よ」

 一歩、前へ。

「筋肉など――笑止」

 静寂。

 竹助は、わずかに首を傾ける。

「……まずは、お前が相手か」

 淡々とした声。

 ゼルアークの口角が上がる。

「俺は、魔王軍四天王」

 一拍。

「ゼルアーク」

 堂々と名乗る。

「ポウセンやダービルが世話になったようだな」

 竹助は、わずかに頷いた。

「通りすがりの筋肉だ」

 静かに言う。

「その二人の筋肉も素晴らしかったが――」

 一拍。

「お前もまた、良い筋肉をしている」

 ゼルアークの表情が、歪む。

「……ほざけ」

 ゆっくりと構える。

「四天王最強の力」

 一歩、踏み込む。

「見せてやる」

 空気が、震える。

 魔王は、静かにその場を見ていた。

 止めない。

 それが、この戦いの意味を理解しているからだ。

 勇者と、四天王最強。

 筋肉と、完成。

 その衝突が――

 今、始まる。

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