28 伝統文化の艶技がパンチラなのだよ
「トリックァトリートですぅ」
そう言って、森谷千秋が大きな犬歯の付け歯を付けて、オレを脅して来た。
「お菓子をくれないと、イタズラしちゃうぞ!」
オレもそう言って、森谷千秋に応じ返す。
オレがバイトして居る『Pメイド純喫茶』で、ハロウインのイベントがあるので、そのためのコスチュームを着て居るところだ。
森谷千秋は、黒いネコ耳のカチューシャを付け、黒いキャミソールを着てる、そしてそのキャミソールの背中にはコウモリの羽が縫い付けてあった。
下はパニエ風の黒いミニスカートで、お尻辺りに黒く長い猫尻尾が付けてある。
足と手には肉球の付いたもふもふの手袋と靴を履いている。
(ネコ耳にネコしっぽ、なのにコウモリの羽って、何のモンスターのコスプレだ?)
スカートの中は当然レースのヒモパンティだ、ただし色は白なのだ…。
コスチュームを黒で統一するなら、黒のヒモパンティだと思うのだが、それだと覗いた時に目立た無いから、スカートと同系色のヒモパンティは穿か無いそうだ。
オレはと言うと、長い銀髪のウイッグを被り、付け耳で尖ったエルフ耳にして、青いカラーコンタクトを入れ、薄い青のゆったりとしたドレープがあるチューブブラを着けている。
下もチューブブラと同じ薄い青のパニエ風ミニスカートだ。
足にはミュール風の編み上げ靴を履いている。
そして言うまでも無いが…スカートの中はピンクのレースのヒモパンティだ。
どうやらオレはエルフっ娘らしいが、エルフってモンスターか?
明里は、赤い幅広の翼をしたとんがり帽子に、赤いビスチェ、赤いパニエ風ミニスカートを着けて赤いブーツを穿いて居る。
明里は差し詰め魔女と云うところか…。
あえて付け加えるなら…スカートの中は水色のレースのヒモパンティだそうだ。
他の従業員…メイドの人達もそんな感じだ。
ショートヘアでカモシカの様な足をしてる速水早希さんは…鹿の角の様な物が付いたカチューシャを着けて、茶色いファー生地の様な物で出来たキャミソールを着てる。
そして鼻にピエロの様な赤く丸い付け鼻をしてる。
(ひょっとして赤鼻のトナカイか?クリスマスにはまだちょっと早いぞ)
下は…言うまでも無く、茶色いパニエのミニスカートで白いレースのヒモパンティだ。
万田都さんは、前の襟元が白で他は黒いビスチェで、首に蝶ネクタイをしてる。
そして森谷見たいな、大きな犬歯の付け歯をしてるから、ひょっとしてドラキュラか?
下は黒いパニエのミニスカートで真っ赤なレースのヒモパンティだ。
そしてご多分に漏れず彼女は、コスチュームに色々とフリルやレースをつけ足して、ゴスロリ風にして居ると云う最早カオスだった。
愛染京子さんは黒く長い髪を下ろして、薄い水色のミニスカ着物とその下に白いパニエのミニスカートも着てる。
メイクも白っぽくしてるので、どうやら雪女らしいが、着物にパニエミニスカと云うコーディネートはどうよと思わざるを得ない。
因みにピンクのレースヒモパンティだそうだ。
フロアマネージャーの安達原禊さんは、いつものメイド服なのだが、アチコチに血の汚しが有り所々が破けて居る。
メイクも青白く口から血を流してるところを見るとどうやらゾンビらしい。
オーナーは全身を被うローブを着て居る。
コレはコレはで…毒リンゴを売り付けに来た白雪姫の魔女だな。
こうして、ハロウインの一週間前から始める『Pメイド純喫茶』のハロウインイベントが開幕した。
と…言っても、普段と違うコスチュームをして居るだけで、業務事態は何時もと同じだ。
お客様の給仕をして…ピカピカに磨かれたフローリング床にミニスカの中を写して、パンチラを見せると云う仕事だ。
オレも最初は、スカートの中のパンティを床に写し出されて覗かれると云う事に、緊張したり恥ずかしく思ったりしたが…今やもう馴れたものだ。
店内を大股で歩き、注文を聞く時は、態と足を開いて堂々とパンティを床に写して客の男達に見せて居る。
男達の視線がオレのパンティに釘付けになった時…その時オレの中で、ゾクゾクっとするモノがある。
どうやらオレは、男に女の部分を見られる事に、優越感の様な物を感じる様だ。
オレは十三歳の時に性転換をして女子になった。
それ以来オレは女である事を受け入れ、女たろうとして来た、だけどオレは男として生まれ男として思春期まで生きた、記憶と経験がある。
それがオレの精神の根幹を成して居る事も事実だ、だから女の子としての自分を男として客観的に観る事があり、その時女の子としての容姿の良さや肢体の魅惑度を男目線で評価し、それを他の男達にあえて見せて…つまり何が言いたいかと言うと。
(へへーんどうよ、オレってカワイイだろ、美少女だろ、オレのパンティのチラ見せはどうだい、艶っぽいだろセクシーだろ、もっと見たければ見せてやるぜー!)
と…加様に自己顕示欲と自己肯定感が爆上がりしてる次第なのだ。
殆んどスーパーマンの衣装を着て、スーパーマンになったと思う子供見たいなものだ。
ただオレの場合はスーパーマンその者になってしまったと云う事だ…オレは女として男とSEXをして、子供も作れる様になったのだから。
だけど同時に危機感も持って居る…だってこのまま行くとオレは、素っ裸にコート一枚羽織り、暗い夜道で通行人にコートの前を開けて『キレイなオレの裸を見ろーっ』何て露出狂になるかも知れない。
(これじゃオレにトラウマを刻んだ変質者と同じになってしまう…)
等と、思いはするが、流石にそこまでは行かないだろうとオレは思う…行かないよな…多分。
兎に角オレはこの『Pメイド純喫茶』にバイトしてから、男の好奇心とちょっといやらしい目で見られる事に依って、自分が女の子であると云う事を新たに自覚し直した。
(オレは今は女だ、それもかなりカワイイ女の子だ、女の子だと云う事を誇りに思い、女の子だと云う事を謳歌しょう…そしてその喜びを、かつてオレと同類だった男達に、ちょっとだけお裾分けをしようかな)
そう云う博愛精神?も相まってオレは『Pメイド純喫茶』でメイドの格好をしてパンティを男達に見られる仕事を楽しんでやって居る。
********************
『Pメイド純喫茶』の店内は何時も通りの繁盛振りだ、今はハロウインイベント中だから何時もより混んでるくらいだ。
忙しく立ち回っていたオレが、フトあるボックス席のお客に目が行って、気になったのだが。
白髪をややざんばらにして、同じく白毛になった立派な口髭に顎髭を蓄えた老人で、品の良い絣の羽織りと着物を着流して居て、ドコかの美食家の陶芸家か公儀隠密を束ねる武家の頭領の様な雰囲気の人だった。
オレは最初(こんな人まで若い女の子のパンチラを見に来るのか)と思って感心?して居たが。
しかしその老人は、下卑た情欲で床に写るパンチラを、見て居る様には見え無かった。
むしろ鋭く観察して評価して居る様に見えたのだが。
オレは何と無く気になって、その老人を見ていたら、目が合ってしまった。
老人はニコやかに笑いオレを手招きする。
「ご注文は何でしょうか、ご主人様」
オレは老人の席に行き、何時も通りパンティが見え易い様に少し足を開いて立ち、定型文のセリフを言う。
「フム…物腰は良し、接客態度も上々だが…如何にもパンティを見せてやると言わんばかりに足を開くのはイカンな」
老人はそう言ってやや偉そうにオレを見る。
「えっ…あの、ご主人様?」
オレはちょっと戸惑って老人を見ると。
「先ず足は横に広げない、如何にも見せてやると言わんばかりの尊大な態度はイカンな、足は前後に開いて腰は半身にする、それから引いた足の鼠径部を内側に折り畳む様に捻る」
老人の明瞭な指示にオレは、無意識に従って言われた通りにした。
「うむ、そうじゃ、両足を横に開くより自然な感じでパンティが覗いている様に見えるじゃろう…その上、鼠径部から臀部に至るまで、パンティの股ぐり部分に斜めのシワが自然に出来るじゃろう、そのシワが男の目を惹きつけ想像を巡らせさせるのじゃよ」
老人はふおっふおっと笑い頷いた。
この妙な老人にオレがちょっと戸惑って居ると。
「お爺さま、今日は視察ですか?」
そう言ってフロアマネージャーの安達原禊さんがやって来た。
「うむ、たまには若い娘のパンティを拝みに来んと、耄碌してしまうからのう」
「お爺さま?」
オレが安達原禊さんに向いて聞くと。
「そうよ、わたしのお爺さまで、この『Pメイド純喫茶』の共同オーナーで、お店のコンセプトデザイナーでもあるのよ」
オレはそれを聞いて何故か納得した。
「処でお嬢ちゃん、お前さんは物怖じもせず衒いもせず、堂々とパンティを見せに来るとは、己が女子としての魅力を良く良く承知して居るようじゃな…」
老人がオレを見て、自分の顎髭を手で扱きながら言う。
老人のオレへの評に何と答えれば解らず、当たり障りの無い返事をした。
「あ…ありがとう御座います…」
「そこでじゃ、お前さん…パンチラ道を修めて見んかね?」
老人が身を乗り出してオレに言って来る。
「パ…パンチラ道ぉ?」
オレがさも胡散臭そうに言うと。
「パンチラ道とはな…江戸、元禄の頃に遊女や芸妓が男衆を魅惑するために態と襦袢や腰巻きうチラ見せした艶技が元でな、連綿と受け継がれてきた…伝統文化の艶技がパンチラなのだよ…」
「はいぃ〜?」
オレは困惑して素頓狂な声を出した。
********************
オレはその後、『Pメイド純喫茶』の共同オーナーの安達原覗右衛門氏に執拗に請われ、根負けして師事する事になり…一年余り後に下衣綾見せ艶術の十八代伝人としての免状を貰らう事は後の話だ。




