21 少女から女への通過儀礼?
「文化祭の出し物、何に決まった?」
明里が、放課後帰り支度をして居るオレに、聞いて来る。
「このクラスでは喫茶店をやる事になったよ」
オレがHRのクラス会で決まった事を伝えると。
「マコちゃんとこは喫茶店かぁ、私んとこはお化け屋敷だよ、来週辺りから皆んな居残りで文化祭の準備だね…」
「ああ、そうなるだろうね…でも遅くまで居残りはなるべくしないで明るい内に帰る様にしないと、特に女子はね!」
オレは、かつてのトラウマになった事件を思い出し、強く言う。
月は十月に入り、今月に重大イベントの文化祭がある事もあり、学校全体にちょっと浮ついた雰囲気が漂って居た。
「そう言えば、何時も付いて来るあのちっこい娘は?」
明里が周りを見回して言うと。
「森谷は文化祭委員に選ばれて、今ごろ全クラスと部活の文化祭準備委員会に出てるよ」
俊がオレ達の所に来て言う。
ソレからオレと俊と明里で、教室を出て校舎からも出ようとすると、千葉美波が申し訳無さそうに立って居た。
「師匠!申し訳ありません‼私は文化祭委員に選ばれてしまい…当分ご指導が受けられ無く成りました」
千葉美波は土下座せんばかりに頭を下げて言う。
「えっ、そうなんだ…まあ基本的な事はもう教えたから、自主練だけでも十分だよ、文化祭が終わってからまた見て上げるね」
オレがそう言うと、千葉は頭を下げながら文化祭準備委員会が行われて居る校舎に走って行った。
明里は自転車通学なので自転車置き場に自転車を取りに行き、オレと俊とで校門を出てバス停に向かう。
俊とオレは、同じ路線のバスに乗って、途中まで一緒に帰る事になってるのだ。
バス停でバスを待って居る間に、明里が自転車に乗ってオレ達に手を振りながら通り過ぎて行った。
何故かオレと俊の二人だけでバス停でバスを待つ事になって居た。
「そ、そう言えば、遊馬はどうしてんだ?」
オレが徐ろに思い出した様に言うと。
「水泳部は十月に入ったらプールが閉鎖されるので、県営の温水プールがある所で週一くらいで部活をするんだと、それで今日は居ないんだ」
俊もちょっと所在無気にして言う。
それからオレと俊の二人きりで互いに向き合う事も無くバス停に立ち、バスが来るまでの一時の時間が担々と静かに流れて居た。
何だかオレは俊に話し掛けるのが躊躇され、俊も何故か沈黙を守っていた。
そう言えばオレが男だった頃から、俊とはそんなに二人きりで話し合った事は無いと思う。
何時も遊馬が居たと言う事もあるが、俊は元々コミュ症気味だし、オレも普段そんなに騒がしいタイプでも無かったから。
「あ~何か俊と二人きりって…ひょっとしてかなり久しぶりかな?」
オレは黙って居るのに耐えきれ無くて、何となくそう言うと。
「その…真琴が女の子になってからは…初めてだと思う」
俊は顔を背けながら恥ずかしそうに言う。
「ああ、そっかぁ…」
そう言ながらオレも、ちょっと恥ずかしくなって来てそそくさと正面を向く。
ソレからまたしばらく二人の間に沈黙が続く。
オレはフト自分の頬辺りにチリチリとした感覚を覚え、振り向くと俊と目が合った。
俊は慌てた様にオレから目線を外し、顔を赤くする。
(なんだぁ~それは、好きな娘を見詰めて居て、目が合った時慌てて視線を外す中学男子、見たいなのはーっ)
俊のそのリアクションに、オレも隣に立つ俊を妙に意識仕出して、互いに固まってしまった。
やがてバスが来て、オレと俊が乗り込む。
バスの発車の時の揺れでオレはちょっとよろけて、俊の胸に飛び込む様な事になる。
(あっ…男子の匂いだ)
ちょっと汗と青ぽい様な野味のある匂い…俊のベッドでも嗅いだ匂い…異性の匂い…それは不快では無く何故か嗅いで居たい様な匂いだった。
何だかオレの頭の中に、痺れる様な感覚を呼び起こし…下腹の奥にもムズムズとした物を感じた。
「あっゴメン!」
オレはそう言って、慌てて俊から離れる。
(かーっなんで頬が火照って来るんだよ!)
オレは自分の頭と身体の変化に戸惑いと困惑を覚える。
ソレからオレと俊は、まるで意識仕出した中学生の男子女子見たいに、互いに距離を取って目を合わせ無い様にして、ガタゴタと揺れるバスの中で過ごし、俊がバスを降りる時も特に声も掛けずに見送った。
そしてオレは、マンションに帰るとすぐに、この火照った頭と身体を冷やすためシャワーを浴びる。
ソレから夕食を食べて恵美姉ぇと奈っちゃんと何時も通りに過ごし、何時も通りに九時後には自分の部屋に帰って教科書を開くが…。
何時までも下腹のムズムズは収まら無く、勉強に集中出来なかったので…オレはベッドに身体を投げ出した…。
オレは自分でも驚く様な艶っぽい溜息を吐き…ソロソロとスカートをたくし上げ…太腿の間に手を差し入れ…下着の上から股間に指を這わせて行った。
(生理前でも無いのに…何だかこう云う事する回数がこの所増えてる気がする…)
そう思いながらオレは自分の感覚に没頭して行った。
********************
文化祭が数日後に控え、放課後の学校内は準備で色々と騒がしくなって居た。
遊馬は水泳部の文化祭で発表するパフォーマンスのため、連日校舎裏で部員達と、ダンスの様な事の練習をして居る。
森谷も準備委員として忙しくしてるらしく、あまりオレの周りにウロチョロして居ない。
明里は自分のクラスのお化け屋敷の準備に、八面六臂の活躍をしてると聞く。
オレも一応はクラスの準備に手を貸して、細々とした雑用をこなして居たが…どうも準備が上手く行って居ない様だった。
「あーっもう!全然準備が進まないじゃないの‼」
準備担当の女生徒の一人がヒステリー気味に叫ぶ。
「喫茶店何てどうすれば出来るのよ、運営の手順が分からないわよーっ」
「お店何て私らやった事無いから、何を用意してどうすれば良いか何てのも分かん無いから、物資の調達も滞ってるわ」
「準備委員の森谷はどうしたの、その辺を管理監督するのが仕事でしょう」
あのちっこい森谷に丸投げするとは、ちょっと酷なんじゃないかとオレは思い、一言言おうかと思った時。
「みなさーん、喫茶店運営のアドバイザーに来てもらいましたーっ」
そう言って森谷千秋が教室に入って来る。
そして彼女の後から三途の河原で亡者の衣を奪い取る様な婆さんが入って来た。
その婆さんを見たクラスメイト達は一瞬怯え、森谷千秋に女生徒の一人が小声で聞いた。
「お化け屋敷のアドバイザーの間違いじゃ無いの?」
「違いますよ、この方は『Pメイド純喫茶』と言う喫茶店を経営されてる安達原清さんと言う方で、喫茶店運営のプロですぅ」
Pメイドのオーナーの安達原清さんは、クラス一同を見回し何やら含む様な笑みを浮かべた。
「それじゃどんな喫茶店にする積りか、どれだけ準備が進んでるのか、教えてもらおうかい」
それからは安達原清さんの指示でテキパキと準備が進んで行った。
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「あーっ角砂糖に紙ナプキンが全然足りない、誰か買い出しに行ってくれない」
物資担当の生徒が言うので。
「私が行きましょうか」
丁度他の仕事が一段落したオレが言うと、アチコチからついでにアレも買って来てコレも買って来て、と声が掛かる。
結局かなりの大荷物になる事になったので、クラスメイトの自転車を借りて買い出しに行く事になる。
オレが教室から出ると俊が追いかけて来た。
「ボクも手伝うよ」
何だかこの所、俊と二人になる事が多い様に思う。
オレと俊は自転車置き場に行き、借りたママチャリを出して来てソレから俊がサドルに跨り、後の荷台をポンポンと俊が叩いて、オレに乗る様に即して来た。
オレは一瞬躊躇したが、仕方無いので横座りに乗る。
俊は意外に力強い漕ぎ出しでママチャリを走らせ、駅前の商店街に向かう。
学校から駅前までには見渡す限りの田んぼが広がる田園地帯を通る事になる。
ママチャリに俊とオレとで二人乗りして、延々と続く刈り取りが終わった田んぼを見る。
人っ子一人居ない真っ直ぐに続く道路、両側に広がる田んぼにも人は見えず、規則正しく聞こえる俊のペダルを踏む音だけが聞こえる、爽やかな秋の風がオレの頬をかすめ、空は少し曇り気味だけど寒くは無かった。
何だかこの世界にオレと俊の二人だけしか居無い様な気がして来た。
オレは振り落とされ無い様に俊の腰に腕をまわし、俊の背中を見る…オレと俊とはかつては男友達だったが…今は男と女だ。
最初から俊とオレが男と女で幼なじみだったとしたら…オレ達はどんな関係になっていたんだろうな。
オレは何故かそんな事を取り止めも無く考えていた。
しばらくママチャリで走って駅前商店街に着くと、オレ達は買い出しリストに沿って買い物を始める。
買い物を終え、角砂糖や紙ナプキン等の備品類とカセットコンロ二台をママチャリの前カゴにゴムバンドで無理やり固定して走り出す。
学校への帰路、少ししてポツリと冷たい物がオレの頬に当たった。
「えっ、雨が降ってきた見たいだ、俊」
「ヤバイ、傘を持って来て無いから飛ばすぞ真琴」
そう言って俊はママチャリをダッシュさせオレは俊にしがみつく…だが田園地帯に差し掛かる頃には雨は本降りとなり、オレ達はびしょ濡れになった。
道路脇の田んぼの中に建っていた農具置き場と思しき小屋に、オレ達は雨宿りのため駆け込んだ。
屋根はトタン壁はベニヤ板で出来た小屋で、中には肥料か何かのビニール袋が積まれ、木材が何本か立てかけられて居て、他に猫車や農具と思しき道具類に青シートが置いてあった。
オレと俊は、積まれたビニール袋に腰掛けて、雨が止むか弱まるのを待つ事にする。
オレはずぶ濡れなうえ雨が降った事で気温が下がり、ちょっと肌寒くなって来た。
「クシュン!」
「真琴、寒いか?」
オレのくしゃみを聞き、俊が心配して聞いて来る。
「まあ、ちょっとね」
オレの返事を聞いた後俊はママチャリのカゴに積んだ荷物を漁り出す。
そしてガスカセットとカセットコンロ二台を持ち出して来た。
「お湯を沸かす用のコンロが足りないそうなので買い足したヤツだけど…コイツに着火したら濡れた服を乾かせないかな」
俊のその提案に、オレは寒さで些か震え出して来たので、一も二も無く同意した。
青シートで差して広くも無い小屋を二つに仕切り、それぞれでコンロに火をつけ、その上に有り合わせのヒモを張って濡れた服を吊るして、乾かす事になった。
オレは制服のジャンパースカートとカッターシャツを脱ぎ、出来るだけ絞ってからコンロの上に吊るした。
ブラジャーとキャミソールとパンツだけの姿になり、火の着いたコンロにあたる。
しかし下着類も濡れていたので、今一つ暖かく無い…オレはしばらく考え躊躇した後…思い切って下着類も脱いで干した。
オレは全裸だ…青シートの向こうに…俊が居る。
狭い小屋の中、裸の男女が薄いシート一枚で仕切って居る…それはマンガやアニメ…いや小説や映画等でも、何度でも使われ擦られた黄金のお約束パターンだ。
(ハハッ…最早陳腐なフラグだなぁ、その内女の子の方で何かアクシデントが有り、物音か悲鳴を聞いて男の子が仕切りを越えて来て、女の子の裸を見る…そしてキヤーッエッチとか言って女の子に男の子は叩き出されるんだ)
そんな事を連連と考えてコンロの火にあたって居ると、コンロの火で少しずつ小屋の中の温度が上り暖かくなって、眠気が襲って来た。
オレの意識はボヤけてウツラウツラして居ると、突然青シートの向こうから大きな物音と声がした。
「うわっ何だお前!何処から来た‼」
オレは寝ぼけた頭でそれを聞いて、反射的に俊の居る方に飛び込んだ。
そこにはパンツ一丁で大きな野良猫を捕まえてる俊が居て、彼はオレを見るなり顔を赤くして固まった。
濡れ細そった髪を首筋や肩口に貼り付け、小ぶりながら形の良い乳房を晒し、引き締まった腰周りと豊かな臀部、可愛いお臍から下腹に向けてなだらかな曲線を画いて薄い茂みに到達する。
そして茂みと太腿の間に窄まって行く奥に、女の子の秘密の洞穴を隠した渓谷までが覗き見えていた…そのオレの姿を見た俊は、頭に血を昇らせパンツの前もムクムクと盛り上がらせた。
野良猫は俊の手から逃げ出し、俊は顔を背けて慌てた様に言う。
「真琴!裸、裸だよ‼」
俊の声に自分が全裸だった事を思い出し、オレは今更ながらに胸と股間を手で隠そうとした。
その時オレは、慌てて足元の肥料袋に足を取られ、俊に向かって倒れ込む。
急速にオレと俊の顔が近づき、このままでは俊の額にオレが頭突きをかますと思った時…ムニュッっと柔らかい物がオレの唇を覆った。
普通ラッキースケベで男女が縺れ合った時…男が女の子の胸を掴むとか股間に頭を突っ込むとかのはずなのに…。
オレと俊は…キスをかましていた。
一瞬何が起きたのか分からず二人倒れて抱き合う様にして固まってしまった。
オレと俊は唇を交わし、オレの左程豊かでは無い乳房が俊の男の平らな胸板で潰されて、下腹の辺りに何か棒状の固い物が当たって居るのが感じられた。
オレは元男子で俊も男子だ、つまり男同士のキスとも思え無くはないが、オレにはそんな嫌悪感は無い、コレはボーイズラブでは無い。
今はオレは女子で俊は男子だ、だからコレは女子と男子の健全な接吻なのだ。
最初そんな思いがオレの中に渦巻いたが…すぐにそんな事はどうでも良くなった。
重ね合う唇からの刺激でオレの頭の奥がまた痺れて来て、唇を割ってオレの口内に舌を差し入れて欲しいとか、反対にオレの舌を忍び込ませ舌を絡ませたいとかの願望や欲望が湧いてくる。
オレの下腹の奥に火照りの火が灯り、何かムズムズする。
オレのボヤけた思考の中で、僅かに残った理性が貞操の危機を警告して来る。
だけどオレは止まりそうに無く、俊も目を虚ろにして成り行きに任せて居る様だ。
オレは我知らずに股間が開いていき、自身の身の内に男の物を受け入れ…少女から女への通過儀礼?……を迎えても良い様に…思えて来た…時。
「ニヤーッ!」
そう鳴いて、体重推定五キロはある野良猫が、オレの背中に乗って来た。
「ゲフッ」
オレは変な声を上げ、野良猫が乗って来たショックで理性が戻って来て、オレは俊を突き放す。
その後は、只々恥ずかしくて、お互い顔も見ずに生乾きの衣服を慌てて着た。
丁度その頃に雨も上り始めたので、オレと俊は微妙な距離を取りママチャリを押し歩いて学校に帰った。
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次の日…学校に来た俊は妙にやつれて居て、腰が定まらないかの様にフラフラして居た。
オレはそんな俊を見て、彼が家に帰ってからナニをどれだけしたのか察する。
かく言うオレも、昨夜の些か激しく自分を慰めた残滓で、アソコにちょっと違和感があるのだ。
俊とお互いに目があった時、再び猛烈な羞恥心が蘇りオレと俊は挙動不審になってしまった。
そしてそんなオレ達の事を遊馬が訝る様に見ていた。




