1 みんな久しぶり!
「みんな久しぶり!」
オレは三年ぶりに会う親友2人を驚かそうと後ろから忍び寄り声を掛けた。
すると前を歩いて居た県立高校の夏の制服を着た男子2人は同時に振り向きオレを見て、固まる。
何ったてオレはスンゴーイ美少女なのだからな!
オレは背中まである漆黒の髪を一房のお下げにして垂らし、細面な輪郭の顔にはとても印象的なトパーズ色の瞳を浮かべた、瞬きすればローソクの火でも消せそうな程のバッサバサのまつ毛に縁取られたアーモンド形の大きな目があり、鼻筋は通り鼻梁は可愛く唇はツヤツヤのプルンプルンと云う完璧さ、それに身体もボン(と言うには少し寂しい辛うじてCカップ)キュッボンだ。
そんなオレの居出立ちは、胸元を大きく開いた淡い水色でノースリーブのワンピースで同色のミュールを履いている。
オレはまさに思春期DT男子の憧憬と妄想を具現化した様なスンゴォ〜〜イ美少女なのだから。
「は…はい…」
短髪で凡庸な目鼻立ちだが、見様に依っては精悍とも言えなくも無い容姿で細マッチョな体格の男子が、咥えて居た棒アイスを口から出しながら“一ノ谷遊馬”は返事をする。
(遊馬…久しぶり、まだ河原でお宝探しをやってんのか?)オレは心の中で呟く。
「えっ…と…」
この夏日の暑い中、眉毛の辺りまでボサボサの頭髪を伸ばし、顔は寝不足気味の目に黒い縁取りのメガネを掛けた、少々痩せぎすな輪郭ながらソコソコ鼻筋の通ったまあまあイケメンと言え無くも無い容姿の少し背の低目の男子“雨宮俊”が今にも溶け落ちそうな棒アイスを手に持って言う。
(俊…お前とも久しぶりな、お前まだオタクか?また徹夜でゲームでもしてたのか)これも心の中で呟く。
オレの耳に五月蝿く蝉の声が近くの街路樹から聞こえてくる。
ここは山々に囲まれた盆地の県で、有名なある宗派の総本山の寺院を頂く山と県中央に大きな湖がある。
その県中央の湖の東側にあるソコソコ大きな地方都市の県道沿いの歩道の上でオレと男子2人は見合って立ち尽くして居た。
「オレだよオレ!真だよ小鳥遊真だよ!!」
オレはニッと笑って破顔して言うと。
男子2人、俊と遊馬は困惑の表情をしてオレを見る。
「え…と?マコトさん…だっけ、ボクたち貴女と何処かでお会いしてましたっけ」
俊が訝しげにオレを見て言うと。
「た…確かに」
遊馬が追従する様に言う。
「何だよオレの事が分からないのかよ、友達甲斐の無い奴らだなぁ」
オレは拗ねた様に膨れっ面をして両手を胸の前で組む、するとムニュッと圧迫された胸がワンピースの開いた襟元に、細やかながらも膨らみの谷間が出来てそれを覗かせる。
その膨らみの谷間を見てDT男子2人は少し鼻の下を伸ばす。
(ハイハイ…2人ともDT丸出しだぜ)とオレはそんな2人を見て心の中で呟く。
それから2人の顔の前にオレの顔をグイッと近づけて言う。
「オレの顔を良く見ろよ、確かに三年前とは格段に可愛くなっていささか面変りしてるけど、それでも友達の顔を見忘れンなよなぁ、俊に遊馬よぉ」
オレがちょっと怒った顔で2人の名前を言うと。
「「えっ何で、ボク、ワイ、の名前を?!」」
2人同時に困惑した様に言う。
それから2人はまじまじとオレの顔を見て、やがて更なる驚きと困惑の表情になる。
「えっと、確かにワイ等に三年前に真と言う男友達が居たが…そう言えば何処となく真の様な面差しが…」
遊馬が不思議そうに言うと。
「確かに真は男にして置くのが勿体ない様な可愛い女顔だったけど…でも真はボク達と同じ男子だったハズだ!」
俊も困った様に言う。
「そうだよ僕ら3人で良く用水路に立ちションしてその時にはアイツにもチン(ピー)が付いてたし、何よりお互いのチン(ピー)も“秘密基地”で見せ合いっこもしたよなぁ」
遊馬が迷う様に言って。
「確かに貴女はまるで真がかなり女子ぽくなった様な容姿に見えるけど…でも本当に真だと言うのか…まさかいま流行のトラベルジェンガーとか云うヤツで外国で性転換手術でもしたと言うのかなぁ?!」
俊が困乱の表情で言う。
「ちがーう!オレはトランスジェンダーとか性同一性障害だとかじゃぁ無くて、三年前に正真正銘の女の子に成っちまったンだよ!!」
オレは自分が三年前に離れ離れになった真だと中々信じてくれない親友2人に焦れて言うと。
遊馬と俊は更に訝しさと困惑が綯い交ぜになった表情になり呆ける、そして2人の手に持つ棒アイスが溶けて足元に落ちた。
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兎に角夏の炎天下の往来の真ん中で話し合うのも何なので、今居る場所から一番近い俊の家に行こうとオレが提案すると。
「ボクの家を知ってるの⁉」と俊は驚く。
「当然じゃあ無いか、三年前まではよくお前ん家に集まってマンガやDVDを見たりゲームをしたりしてたよな」
オレがそう言うと、俊は訝しさと困惑がない混ぜになった変な表情になる。
そしてオレが2人を先導する様に俊の家の方向に歩き出すと、2人ともオレの後を慌てて付いて来た。
俊の家に向かう間オレの背中に2人の視線を感じる。
俊からは擽ったい様なフワッとした視線を、遊馬からは年頃の男の子らしい少しムズムズする視線を感じた。
「おじゃましまーす」
そう言ってオレは新興住宅街にある築二十年位経つ建て売り住宅の俊の家に入る。
ひと頻り懐かしい玄関を見渡した後で三和土でミュールを脱いで上がると、遊馬と俊も玄関に入って来た。
「貴女が本当に真だと言うのなら、ボクの部屋が何処に在るのか知ってるよね」
俊がオレを試す様に聞いて来る。
「モチロン、三年前と変わって無ければね」
そう言ってオレは勝手を知ってる様に廊下の右側に在る階段をトントンと上がりだす。
階段を上がるオレを見てまだ訝しげな表情の2人も階段を上がろうとする。
その時オレはちよっとしたイタズラを思い付く。
今着て居る膝丈のワンピースは普通なら階段の下からでもそうそう奥は見えたりしない。
だけどオレはワザとやや前屈みになりながら少しお尻を突き出す様に階段を上がると、スカートの奥が裾から覗ける様になり、今日穿いて居るワンピと同系色のショーツがチラリと見えるハズだ。
オレの後ろから階段を上がって居た男子2人の内、俊はハッとして気不味そうに視線を逸らす、そして遊馬の方は少し惚けて視線は外さずガン見して来た。
(フフン、俊は相変わらず紳士だね+5点、遊馬は欲望に忠実過ぎて−1点と言った処だね)オレは2人を肩越しに観察して心の中で呟く。
2階に在る俊の部屋は、6畳位の広さの畳敷きの部屋で壁一面にマンガとアニメDVDそれとフイギュアが飾られている棚が有り、それと机と壁にピッタリくっ付けられたベッドでほぼギュウギュウだ。
オレは部屋に入るなり、かつてそうしていた様に俊のベッドに飛び込んで寝っ転がった。
俊のベッドからは青臭くソレでいてどこか野味のある匂いがして来る。
(あゝ男の子の匂いだ…)
オレが女の子になって暫くしてから男の子には独特の匂いがある事に気付く。
それが男の子或いは男の匂いなんだと後で知った。
オレはその男の匂を嗅ぐと、嫌悪感を感じる奴も居れば全く気にならない人も居るのだが…もっとも大体においてオレは好きに慣れなかったのだが…俊の匂いは特にオレには不快感を感じさせ無くて大丈夫だった。
オレは嘗ての親友の男の匂いに嫌悪を感じ無かった事に安堵する…今回この地に帰って来たオレの思惑が上手く行く様な気がしてちょっと嬉しくなる。
嬉しくなったオレは寝っ転がったままつい足をパタパタと振る。
するとスカートが託し上がってショーツがもう少しで見えてしまいそうな位に露わになる。
すると案の定、俊はバツが悪そうに視線を外し遊馬はここぞばかりに覗いて来る。
そんな2人の反応がオレは少し面白くなって来た。
そこでオレは上体を起こし座ったまま背伸びをする。
「ん~~っ、やっぱりこの部屋は昔と変わって無くて安心するわ」
背伸びをする事でノースリーブのワンピースの袖からオレの脇の下とブラジャーの一部が見える様にして、DT男子2人にサービスする。
新たなオカズに遊馬はニヤつき俊はアタフタとする。
ソレを見てますます楽しくなって来たオレは、ベッドと壁の間に手を突っ込んで隠して有るある物を探り当てる。
ソレは三年前から隠し場所が変わって無い俊の秘蔵のお宝の薄い本だった。
「おーっやっぱりココに隠してたか!」
そう言って数冊の薄い本をベッドの上に並べる。
「どれどれ「幼馴染のあの娘はエルフでセフレ」あ~コイツは三年前にも見た事有るヤツだな、でもコッチのは「ウサミミの彼女はバックが好き」それと「儚げな妖精の女の子に欲望処理の仕方を教えた」かぁ、コイツ等は見た事無い新作かな?」
などと言って薄い本を並べてオレが吟味して居ると。
「ワーッダメだよ!」と叫んで必死の形相で俊が薄い本の上に覆い被さる様にして隠して、取り上げて行く。
「へぇ~俊のエロ同人誌の隠し場所を知ってるんだ」
遊馬は感心した様に言い。
「そ…ソレより、貴女が何故自分を真だと言うのかの説明をするんだろう!」
俊が少し焦る様に言う。
それから俊と遊馬は空いた畳の床に並んで座って胡散臭そうにオレに向き合う。
オレはかつて親友だったDT男子2人で遊ぶのを止めて、本題に入ろうと居住まいを正した。
オレは膝を揃え背筋を伸ばして少し微笑みながら俊と遊馬を見ると、今さっきと違うその如何にも清楚なお嬢ぽいオレの風情に男子2人はやや挙動不審な身動ぎをする。
(あはぁ…きっと2人のビジョンには今のオレの周りにアニメの背景効果の様なキラキラしたモノが見えてるんだろうなぁ)と2人の心情をオレは慮った。
しばらくオレを見てモジモジしていた2人は徐ろに聞いて来る。
「ボクはまだ貴女が以前親友だった真だとは思え無いんだ、何か自分は真だと証明する証拠は在るのですか」
俊が真剣な顔で言って来ると。
「証拠か……ぁ」
オレは暫し考えて、それからオレと俊と遊馬の3人しか知らないはずの黒歴史やオレ達しか知らない恥ずかしい個人情報をスラスラと話して披露する。
俊と遊馬の2人はオレの暴露話に羞恥と後悔に悶え苦しんで七転八倒した。
「わ…わかった、そんな事知ってるのは確かに真…なのかな?…しかしそれでも真だと言うのなら、何で今は女の子なんだよ、訳わかんねぇよ」
悶絶して居た遊馬が真面目な感じに聞いて来る。
それでオレは短いため息を付いて、虚空を眺めながらあの日の事を話した。




