二十四話 WSSされてた後輩
かくして付き合うこととなった俺と芽凛衣なのだが、彼女がやってきたことについてはもうしばらく待ってほしいとのこと。いつか話をしてくれるというのなら、喜んで待とうじゃないか。
それはそれとして翌朝、一糸纏わぬ姿で目を覚ました俺は、芽凛衣と抱き合っていることに気付いた。身体のあちこちから感じるふにふにとした彼女の感触が、妙に心地好く滾ってきてしまった。こりゃ困ったな。
こうなったらこっそりと発散するかと思ったところで、芽凛衣がパチッと目を開けた。どうやら起きてたようである。
「おはよう更斗くん♪」
「おはよ、芽凛衣」
ニッコリと挨拶をした芽凛衣が両手で、大きくなったナニをサワサワとしてきた。少しだけ、激しい朝になりそうだ。これから毎日、朝にやろうぜ。
どこぞのなにやらを焼こうとしている星人みたいなことを言ってないで、スッキリしたことだしさっさと学校に行く準備をしよう。
朝食をとり、弁当を鞄に入れて芽凛衣と共に学校へ向かう。
そんな折に、夏休み前に会って以来の人物と出会った。彼女もこちらに気付いて、ニマニマと近付いてくる。
「あれぇ?先輩じゃないですかぁ♪」
「おっす久しぶりだな、弥園」
俺より頭ひとつ分小さい彼女は、弥園 喜美という、一年下の中学生だ。俺が高校一年なので当たり前だな。
ふわふわの茶髪ボブカットを揺らした彼女は、まるで憎まれ口を叩く後輩のような口ぶりで、機嫌良くこちらにやってくる。
「先輩もしかしてぇ、また一人ですかぁ?いつもいつも人を寄せ付けないオーラ出してるから、みんな遠慮して距離置いてるんだと思いますよ」
「おう、そうか」
いまから通学するであろう弥園が、相変わらずニコニコと罵倒?してくる。罵倒というには言葉のトゲが全くないが。
ちなみに彼女から見て芽凛衣は、俺が影になっているため見えていないようだ。誰かと一緒にいることを知ったらどんな反応をするだろうか。
「そうですよ。いくらなんでも魅力の暴力に襲われたら、誰だって困っちゃいますって。先輩はもっと魅力を抑えないとダメですよ」
「そんなことはないと思うんだけどな」
ふふんとふんぞりながら弥園は言っているが、俺に魅力があるというのなら、昨日のようなことにはならないだろう。つまり、芽凛衣と俺がくっついたところで誰も文句は言わない。
喜美は俺のことを買いかぶりすぎだ。っていうか、魅力の暴力ってなんだ?
「あります!いったいどれだけの女の子たちが、汐丸先輩の魅力に撃ち抜かれたでしょうか!かくいう私もその──」
「そろそろ行かないと、遅刻しちゃうよ?」
興奮して語り始めそうになった弥園の言葉に、芽凛衣の言葉が被さった。突如として聞こえた声に、弥園が俺で見えなくなっていた芽凛衣に気が付いて、目をぱちくりさせながら俺を見た。
「……えっ、先輩もしかして、彼女さんですか?」
「まぁ、な」
弥園が震えた声で尋ね、俺の返事にピシリと音を立てて固まった。いったいどうしたというのだ。
「そっそんな……先輩はモテモテ硬派なのに相手を作らないことで定評があったのに……」
「始めて聞いたぞ。それに俺は硬派じゃねぇ」
モテモテというのも始めて聞いたぞ。今までそんな様子なんて、これっぽっちもなかったじゃないか。
ガチガチに固まってしまった弥園に、俺はなんと言えば良いのか。
「そりゃそうですよ。どうせフラれるの分かって近付くなんて、みんな耐えられないんです。私は近所だから話す機会もたくさんありましたけど、そうじゃなかったらずっと仲良くなれなかったと思います」
「嘘だろ?ドッキリって言われた方がまだ分かるんだが?」
「今の学校だと北島くんがいるからね。他にもそれなりに愛想が良い人もいるし、更斗くんには及ばなくても近いレベルの人がいるから、積極的なそっちの方に行っちゃうのかもね」
困惑する俺に、芽凛衣が解説を入れる。二人とも買い被りすぎるような気もするが、どうなのだろうか?
そんな彼女を弥園が見つめると、大きなため息 吐いてがっくりと項垂れた。
「かっ勝てません。お二人がお似合いすぎて、私じゃあ絶対に無理じゃないですかぁ!うわああぁぁん!久しぶりに会ったら先輩が汚されてたぁ!」
「人聞きの悪いこと言うな落ち着け」
なにやら勝手に絶望している。私じゃ無理って、そもそも気がなかったくせになに言ってんだ?
「無理もなにも、別に弥園と俺はそんな仲じゃないだろ」
「んぴー!私はずっと前から先輩が大好きだったんですぅ!でも先輩のことだから簡単には頷いてくれないの分かってたから、少しずつ攻略してホテルに連れ込もうと思ってたんですぅ!それなのに全然見かけないし、気が付けば夏休み終わっちゃうし!こんなことなら連絡先交換しとけばよかったぁ!」
衝撃的な真実を叫ぶ弥園に、俺は疑問符に溺れていた。襲いくる大量のハテナマークが、俺に言葉を発せないように。
そしてやっとこさ内容を理解したものの、かけれる言葉はそんなになかった。
「それなら、もっと早く言ってくれたら嬉しかったんだけどな。弥園にその気がないと思ってたから、全然期待してなかっただけなんだぞ。だから俺も遠慮してたのに」
「えぇ!それじゃあ私、完全におバカさんじゃないですかぁ!誰だ先輩が恋愛に興味ないとか言い出した奴ぅ!」
弥園が頭を両手で押さえながら、目覚ましにピッタリな声を張り上げて後悔していた。
なんかもう、ドンマイとしか言えん。




