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おしかけ!メリーさん  作者: 隆頭


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十九話 転入

 まだまだ夏真っ盛りの今日から、本格的に学校が再開する。正直、最初の一週間は午前授業(ウォーミングアップ)にしてくれないかと思いながら、日の照らす道を終えて校舎へと入る。


 家が近いからという理由で今の学校を選んだ俺は、学校には余裕を持って到着するため、教室にはまだ三人ほどしかいない。

 その三人はいつもグループとなって行動している、男二人と女一人の連中だ。

 それなりに顔立ちも整っているため、クラスでは一軍ともいえる連中。ちなみに、彩斗は特殊な立ち位置で、一軍でも二軍でも三軍でもない男だ。

 そんな括りは誰もが認めない、独立してると言ってもいいだろう。


 教室に入ると、三人のグループがこちらを見るが、相手にしないとばかりにすぐに目を逸らした。お互いに挨拶をすることはない。

 窓際から一列中側に、そして一番後ろから一つ前にある俺の席、その椅子に座って鞄から教科書を取り出す。

 それを机にしまったら、スマホをズボンのポケットから出して、やるのはソシャゲだ。

 なんだかんだやめずにいる、ボールになったキャラクターたちを弾くゲームだ。高難易度のクエストが終わっていないので、それをプレイして時間を潰そう。



 一つクエストをクリア目前で失敗したところで、彩斗がやってきた。このクエストキツすぎるだろ、マジキャラゲーすぎて泣けてくる。


「おはよう」


「おっす更斗」


 彩斗の席は教室のど真ん中なので、荷物はすでに自分の席に置いているようだ。挨拶を交わすと、彼はニヤニヤと何か言いたげに前の席に腰を下ろした。


「そういや、あのメリーちゃんとはどうなん?」


「どうって、別に。仲良くやってるけど?」


「そうか。いやぁ更斗にも春が来たってのは、嬉しい話だな」


「悪かったなモテなくて」


 何を言いたいのか知らないが、彩斗は俺が芽凛衣に好かれていることを喜んでいるようだ。数々の女の子と一晩を共にしている彼とに言われると嫌味にも感じるが、彼は手をブンブンと振った。


「いやいやそんなんじゃねぇよ、素直な気持ちだって。それに、更斗は別にモテないって訳じゃないんだぜ?」


「へいへい」


「信じてねぇなぁ。言っとくけど、こないだ会った風夏(ふうか)っているだろ?アイツも更斗のこと、結構良いなって言ってたぜ?」


 なんの慰めなのか、彩斗がそう言った。たしか三陰(みかげ) 風夏と言ったか、彼女がねぇ……

 そう思ってジト目で彩斗を睨むが、彼はため息を吐いた。


「アイツだけじゃねぇぞ?ほかにも更斗のことをアリって言ってる子はちょくちょくいるんだよ。ぁ直接言われたわけじゃねぇし、すぐには信じられないだろうけど」


「あぁ、ハッキリ言って眉唾ものだな。俺のどこに好かれる要素があるんだよ」


「そりゃあ、色々だろうけど……パッと見で分かるのは身嗜みだよな。それに、鍛えてるから身体もガッチリしてるし、頼り甲斐がありそうに見える。それに、なんだかんだ言っても、ひねくれてないのも評価点だぞ」


「知らん」


 そりゃあ最低限の身嗜みはしてるし、トレーニングもしてるが、これは自分のためなんだよな。

 親から言われて始めたのがきっかけではあるが、自分磨きが楽しいと思うので、続けているのはそれが理由だ。


 つまり、好かれるためにやっていないんだ。だから好かれていると言われても、実感がわかない。


「まぁいいや。取り敢えず幸せにしろよ。二人でさ」


「カッコつけんなよイケメンが」


 たぶん、彩斗なりに応援してくれているのだろう。なんだか照れ臭くなり、素直に礼は言えなかった。

 そんな俺を察してか、彩斗がヘラヘラと笑う。


 そんなこんなで雑談をしていると、HRの時間というには五分ほど早く、女の先生が教室に入ってきた。


「はーいみんなおはよう。ちょっと早いけどHR始めるよ」


 先生がそう言うと、彩斗を含めて散らばっていた生徒たちが、自分の席に戻っていった。

 彼に軽く手を振ってスマホをポケットにしまい、教壇の方を見る。


「……よし。んじゃ始めるんだけど、どうして早く始めるかっていうと、なんと今日は転校生が来たからなんだ」


 全員が席に着いたことを確認した先生が、にこやかにそう言った。当然だが、誰もが予想していなかった転校生というワードに、みんながざわざわと喋りだす。

 夏休みが終わってすぐというのは、ずいぶんとタイミングが良く思える……そういえば、誰かさんがこれくらいのタイミングで転入するとか言ってたような……


 なんとなく心当たりを感じながら、先生の話を聞いた。


「はい、それじゃー入ってきてー」


『はい』


 先生が、その転校生とやらに向けて声をかけると、扉の向こうから可愛らしい声で返事が返ってきた。

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